
農業を始めたいけど、経営が安定するまでの生活費が心配…。
新規就農を考えている方にとって、最初の数年間の収入が読めないことは最大の不安のひとつではないでしょうか。農地の確保、トラクターなどの農機具購入、種苗・資材費…。就農1年目はお金が出ていく一方で、売上はなかなか安定しません。
この記事ではTACHIFARM代表で農業歴4年の私が経営開始資金についてわかりやすく解説します。
- 経営開始資金の交付額・期間と就農準備資金との違い
- 対象者(認定新規就農者)の要件と取得手順
- 自己負担割合とお金の受け取り方
- ステップ別の申請手順
- 返還が必要になる具体的なケース
補助金申請には青色申告書・決算書が必要です。記帳は申請前から始めておくのが正解。
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太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
経営開始資金と併用できる青年等就農資金の必要書類と申請手順はこちら
経営開始資金とは
経営開始資金は、新たに農業経営を始める人のために、経営が安定するまでの生活・経営を支える国の支援制度です。新規就農者に対して、最長3年間、月12.5万円(年150万円)を交付します。
この制度は、就農直後は収入が安定しにくい期間の所得を補い、農業経営の立ち上がりを支援するためのものです。
経営開始資金の補助額の上限・補助率
交付額と期間
経営開始資金は、独立・自営就農した認定新規就農者に対して、農業経営が安定するまでの間の生活費を国が直接支援する給付金制度です。


月13.75万円というのは、農業の経営が軌道に乗るまでの生活費・運転資金の一部を補う水準です。この交付金があることで、農機具のリース料(クボタ管理機で月1.5万円程度)や種苗費(1作あたり3〜5万円)を賄いながら経営に集中できます。
就農準備資金との違い
よく混同される「就農準備資金」との違いを整理します。


両方の支援を連続して受けることも可能で、研修2年+経営開始3年で最大825万円(330万円+495万円)の支援を受けられるケースもあります。
経営開始資金の対象者とは
「認定新規就農者って聞いたことあるけど、自分でも取れるの?どんな条件が必要なの?」
取得条件|認定新規就農者とは?
認定新規就農者とは、新たに農業経営を始めるにあたって、自分の農業経営の目標や将来計画を記した「青年等就農計画」を作成し、市町村長からその計画の認定を受けた農業者のことです。農林水産省が制度の根拠を定めており、全国の市町村が窓口となっています。
青年等就農計画に記載する主な内容は以下のとおりです。
- 就農する農地の場所・面積・品目
- 使用する農業機械・施設(例:トラクター、ビニールハウス等)
- 就農5年後の売上目標・所得目標
- 技術習得の計画
- 農地の確保方法(所有・借地等)
計画の認定を受けると「認定新規就農者」となり、経営開始資金をはじめとした各種支援制度の対象になります。
- 市町村の農業担当窓口(農林水産課・農業委員会等)に相談
- 農業普及指導センターや先輩農家のアドバイスをもとに青年等就農計画を作成
- 市町村へ「青年等就農計画認定申請書」を提出
- 審査・認定(目安:申請から1〜2か月程度)
- 認定通知書の受領



認定後も毎年、営農状況報告の提出が求められます。
年齢要件|49歳以下が対象
経営開始資金を受給するには、独立・自営就農時の年齢が49歳以下(50歳未満) であることが必要です。
就農した時点で50歳以上の方は対象外となります。ただし、青年等就農計画の認定申請時点で49歳以下であれば、交付期間中に50歳を迎えても継続して受給できます。
独立・自営就農とは
経営開始資金の対象となる「独立・自営就農」とは、以下の4条件をすべて満たす就農形態を指します。
- 農地の権利を有している ── 農地の所有権または利用権(賃借など)を自分の名義で持っていること
- 主要な農機具・施設を自ら所有または借りている ── トラクターなどの主要農機具を自分で準備していること
- 生産物・生産資材等を自らの名義で出荷・取引している ── JAや直売所への出荷が自分の名前で行われていること
- 経営収支を自らの名義の通帳・帳簿で管理している ── 売上や経費を自分名義の口座や帳簿で管理していること
つまり、親の農業を手伝っているだけや、農業法人に就職した状態は対象外です。



「自分が経営者として農業を営んでいる」ことが前提です!
経営開始資金のNG条件
以下に該当する場合は経営開始資金の対象外となります。
| NG条件 | 理由 |
|---|---|
| 就農時に50歳以上 | 年齢要件を満たさないため |
| 雇用就農(農業法人・農家への就職) | 独立・自営就農ではないため |
| 前年の世帯所得が600万円超 | 所得要件を満たさないため |
| 他の国の給付金と併給 | 重複受給禁止のため |
| 農業経営を行っていない | 営農実態が認められないため |
| 認定新規就農者の認定を受けていない | 資格要件を満たさないため |
親が農家だけど、親の農地を引き継いで独立する場合はどうなるの?
親の農地を賃借して自分名義で農業を始め、上記4条件を満たせば独立・自営就農とみなされます。ただし、同一世帯の場合は世帯所得の計算に親の所得も含まれる場合があるため、市町村窓口に事前確認することをお勧めします。
経営開始資金の自己負担割合とは
補助金って自己負担があるイメージだけど、経営開始資金もお金を出す必要があるの?
経営開始資金は自己負担ゼロです。設備補助金のように「補助率2分の1」「上限〇〇万円」という形ではなく、要件を満たす認定新規就農者に対して国が全額を交付する給付金(生活支援型の交付金)です。
ただし、以下の点には注意が必要です。
- 交付金は農業所得として確定申告が必要です(雑収入に計上)
- 交付金を受け取った後に返還が発生するケースがあります(詳細は後述)
農業経営の実態として、就農1〜2年目は経費が先行します。例えば、ビニールハウス1棟(100坪規模)の新設では資材費だけで50〜80万円、トラクター(20〜30馬力)の中古購入で100〜200万円かかることも珍しくありません。
経営を守るために就農初年度から確認したい農業保険・共済の選び方はこちら
誰でもできる!経営開始資金の申し込み手順5ステップ


💬「実際にどうやって申請するの?難しそうで不安…」
申請は市町村が窓口になるため、手続きの細部は自治体によって異なりますが、大まかな流れは全国共通です。
STEP1|市町村の農業担当窓口に相談する
まず、就農予定地の市町村農業担当課(農林水産課・農政課・農業委員会など)に相談します。
- 自分の状況が認定新規就農者の要件を満たすか
- 申請書類の提出期限と必要書類の一覧
- 農業普及指導センターへの相談手配
STEP2|青年等就農計画を作成する
市町村や農業普及指導センターのサポートを受けながら、5か年の経営計画「青年等就農計画」を作成します。
- 農業経営の目標(5年後の売上・所得の数値目標)
- 作付け品目・面積・単収の見込み(例:トマト 20a、単収4t/10a、売上160万円)
- 使用農機具リスト
- 農地の確保計画
- 技術・知識の習得計画
数値目標は現実的かつ具体的に記載することがポイントです。農業普及指導センターの指導員に数字の妥当性を確認してもらいましょう。
STEP3|認定新規就農者の認定を申請する
青年等就農計画が完成したら、市町村長へ「青年等就農計画認定申請書」を提出します。
- 青年等就農計画認定申請書
- 農地の利用権証明書類(賃貸借契約書等)
- 農機具の所有・賃借を確認できる書類
- 住民票・戸籍謄本
- 前年の確定申告書(世帯所得確認のため)
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STEP4|経営開始資金の交付申請を行う
認定新規就農者の認定を受けた後、市町村窓口で経営開始資金の交付申請を行います。
- 経営開始資金交付申請書
- 認定新規就農者認定書(写し)
- 世帯所得を証明する書類
- 他の給付金を受けていないことの誓約書
STEP5|毎年の就農状況報告を提出する
交付を受けている間は、毎年、市町村へ「就農状況報告書」を提出する義務があります。
- 農業従事日数・時間(年間150日かつ1,200時間以上が目安)
- 農業売上・所得
- 世帯所得
- 農地の利用状況
農業日誌や帳簿を日常的につけておくことが重要です。スマホアプリ(アグリノート等)を使うと記録管理が効率的になります。
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返還が必要になるケースに要注意
もしうまくいかなくて農業を辞めることになったら、お金を返さないといけないの?
経営開始資金には返還義務があります。次のいずれかに該当した場合、受給した金額の全部または一部の返還が求められます。
| 返還が発生するケース | 詳細 |
|---|---|
| 交付期間終了後に短期で農業を廃業した場合 | 交付期間の1.5倍(最低2年間)未満の就農継続で返還が発生 |
| 農業従事の実態がないと判断された場合 | 年間農業従事日数・時間が基準未満 |
| 就農状況報告を未提出の場合 | 虚偽報告も対象 |
| 世帯所得が600万円を超えた場合 | 超えた翌年度から交付停止 |
| 独立・自営就農の要件を満たさなくなった場合 | 農地を失った等 |
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 経営開始資金(新規就農者育成総合対策) |
| 交付額 | 月13.75万円(年間最大165万円) |
| 交付期間 | 最長3年間 |
| 最大総受給額 | 最大495万円 |
| 対象者 | 認定新規就農者(独立・自営就農、50歳未満) |
| 年齢要件 | 就農時49歳以下(50歳未満) |
| 所得要件 | 前年の世帯所得が原則600万円以下 |
| 自己負担 | なし(全額交付金) |
| 申請窓口 | 市町村 |
| 返還義務 | 交付期間の1.5倍未満の期間内に廃業した場合等 |
経営開始資金は、農業経営のスタートアップ期を支える強力な制度です。申請のカギは早めに市町村窓口へ相談することと青年等就農計画を具体的な数値で作ることの2点です。
申請書類・要項へのダイレクトリンク
申請に必要な書類・要項は下記リンクから直接入手できます。申請書類は年度ごとに更新されるため、必ず最新版をご使用ください。
| 書類・情報の種類 | 入手先 |
|---|---|
| 農林水産省|農業次世代人材投資資金(要綱・申請様式) | 農林水産省公式ページ |
| 農林水産省|認定就農者制度(認定申請手続き) | 農林水産省公式ページ |
| 農林水産省|就農準備資金 交付要綱(PDF) | 農林水産省公式ページ |
| eMAFF(農林水産省電子申請) | 農林水産省公式ページ |
関連リンク・参考資料
- 就農準備資金・経営開始資金:農林水産省
- 認定新規就農者制度について:農林水産省
- 農業をはじめる.JP(全国新規就農相談センター)
- 新規就農者育成総合対策のうち就農準備資金・経営開始資金(農林水産省PDF)
- 令和8年度(2026年度)の制度は年度途中で変更・更新される場合があります。申請前に必ず最新情報を農林水産省または最寄りの市町村窓口でご確認ください。










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