「農業法人のガソリン代って、全部経費にできる?」——個人事業主のときはざっくり帳簿に入れていた燃料費も、法人になれば「税務調査で否認されないか」が気になりますよね。さらに、2026年4月1日に軽油引取税の暫定税率が廃止され、節税額や手続きにも変化が出ています。
この記事では農業法人代表の私が、最新の制度に沿って、農業法人のガソリン代の経費計上を実務レベルで解説します。読み終えるころには「何を、いくらで、どう記録すればよいか」が明確になり、その日から仕組みづくりに着手できます。
最も伝えたいことを先にお伝えすると、
- 法人車両でも私的利用分は経費にならない
- 免税軽油は今でも使える
- ガソリンカード+会計ソフトで月30分の管理のみ
- 農業法人のガソリン代を経費にする条件と、私的利用時の正しい処理
- 農業専用車両と兼用車両の経費処理の違い
- 2026年4月1日改正後の軽油引取税と免税軽油制度の最新ルール
- ガソリンカード×会計ソフト連携による帳簿管理の効率化

太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
高速情報協同組合のガソリンカードは農家でも使いやすいガソリンカードです。
ガソリン代は業務利用が前提?全額経費にはならない場合について
法人名義の車両でも、業務専用の実態がない場合は全額経費にできません。 私的利用があるとき、その部分は役員に対する経済的利益とみなされ、給与課税の対象になる場合があります。
💬「法人にしたら、車のガソリン代は全部経費にしていいって聞いたけど…?」
——その情報は、業務専用車両に限った話です。代表者の通勤や私用に使っている車両は、按分または給与課税が必要になります。
経費として認められる燃料費の範囲
農業法人で燃料費として計上できる主な支出は次のとおりです。
- トラクターやコンバインなどの農業機械の燃料費
- 農産物の運搬専用車・農業専用軽トラックの燃料費
- 農地の管理・見回りに使う車両の燃料費
一方、次のものは経費になりません。
- 代表者や役員が私用で使った分の燃料費
- 通勤専用車両のうち、通勤手当の非課税限度額を超える部分
- 家族の送迎・買い物など、業務外の走行に対応する燃料費
私的利用がある場合の正しい処理
法人車両に私的利用がある場合は、次のいずれかで対応します。
- 走行記録に基づき業務使用割合で按分し、業務分のみを経費計上する
- 私的利用に相当する金額を役員給与(経済的利益)として給与課税する
- 役員から実費相当額を法人へ支払い、私的利用分を精算する
国税庁No.5202では、役員に継続的に供与される経済的利益のうち、毎月おおむね一定のものは定期同額給与に該当し損金算入できますが、それ以外は損金不算入となります。「法人にしたから全部経費」ではなく、利用実態に応じた処理が必要です。
農業専用車両と兼用車両|経費処理の違いを表で整理
「専用」か「兼用」かを車両ごとに区分することが、税務調査対応の出発点です。
| 区分 | 対象車両の例 | 経費処理 | 必要な証拠 |
|---|---|---|---|
| 農業専用車両 | トラクター、コンバイン、田植え機、農産物運搬専用トラック | 燃料費は全額経費として計上 | 車両管理規定での「農業専用」明記、農業作業日誌 |
| 兼用車両 | 軽トラック(私用も併用)、乗用車(営業移動と私用) | 走行記録に基づき業務使用割合で按分 | 走行記録簿、農業作業日誌、目的別走行明細 |
兼用車両の按分方法
業務使用割合は、原則として走行距離ベースで算出します。
- 月初・月末の走行距離計を記録する
- 業務走行(農地往復、農協出荷、資材購入など)を日誌に記録する
- 業務走行距離 ÷ 総走行距離 で業務使用割合を算出する
- その月の燃料費に業務使用割合を掛けて経費額を確定する
「毎月走行距離を計算するのが面倒…」
——スマホのメモアプリやスプレッドシートで3分あれば記録できます。手間より、税務調査で否認されたときの追徴税のほうがはるかに大きいと考えれば、月数分の記録は安いコストです。
軽トラックを兼用してる場合の実例
例えば、軽トラックを兼用車両として運用しています。月次で走行記録をつけ、農地往復・農協出荷・資材購入の走行を「業務分」として集計する方法があります。記録は会計ソフトの摘要欄にも残し、決算時に資料化できる形にします。
【2026年改正対応】軽油引取税と免税軽油制度の最新ルール
軽油引取税は2026年4月1日から本則税率15円/Lに改正。免税軽油制度は令和9年3月31日まで延長されています。
軽油引取税の税率(2026年4月1日改正)
| 期間 | 税率(1Lあたり) | 備考 |
|---|---|---|
| 〜2026年3月31日 | 32.1円 | 当分の間税率(旧暫定税率) |
| 2026年4月1日〜 | 15円 | 本則税率(暫定税率廃止) |
出典:東京都主税局「軽油引取税の当分の間税率(旧暫定税率)の廃止について」、総務省「地方税制度|軽油引取税」
農業法人での免税軽油の年間節税効果(改正後)
軽油引取税は地方税(道府県税)で、農林漁業者が農業用機械に使う軽油には課税免除が認められています。改正後の節税額は次のとおりです。
| 年間軽油使用量 | 改正前(〜2026年3月) | 改正後(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 3,000L | 96,300円 | 45,000円 |
| 5,000L | 160,500円 | 75,000円 |
| 10,000L | 321,000円 | 150,000円 |
「改正で節税額が減ったのか…」
——たしかに節税額は半減以下になりました。とはいえ年間数万円〜十数万円の節税は依然として大きく、申請手続きは一度きりで複数年使えます。費用対効果は十分に残っています。
免税軽油制度の存続期限と申請の流れ
免税軽油制度は地方税法附則により、令和9年(2027年)3月31日まで延長されています。それ以降の制度は現時点で未確定のため、最新の都道府県情報を継続確認してください。
APPLICATION FLOW
免税軽油 申請の流れ|4ステップ
使用者証の
交付申請
都道府県の県税事務所に「免税軽油使用者証」の交付を申請します。
免税証の
交付を受ける
使用見込数量・引取販売事業者を記載した申請書を提出し、免税証を受け取ります。
購入と
使用実績の報告
免税軽油を購入し、使用実績を「免税軽油の引取り等に係る報告書」で都道府県に報告します。
3年以内に
更新
使用者証は3年以内で有効期限が定められているため、期限前に更新手続きを行います。
📋 主な提出書類(都道府県により異なります)
(耕作証明書・農地台帳の写しなど)
※提出様式・必要書類は都道府県により異なります。最新の手続きは所管の県税事務所にてご確認ください。
「県によって書類が違うの?」
——はい、所管は都道府県の県税事務所で、提出書類や様式が異なります。必ずお住まいの都道府県の公式ページを確認してください。
出典:北海道庁「軽油引取税の課税免除」、大阪府「軽油引取税 免税軽油使用者証の交付申請」、農林水産省「農業に使用する軽油引取税の免税」
ガソリンカード×会計ソフトで帳簿管理を月30分に!
ガソリンカード×会計ソフト連携で、農繁期でも記帳遅れを防げます。
ガソリンカードを使うメリット
法人ガソリンカードを導入すると、次の効果が得られます。
- 給油時のレシート整理が不要になり、毎月の利用明細が自動記録される
- カード明細データを会計ソフトに取り込み、燃料費の仕訳を自動化できる
- カード明細は税務調査での証憑としても有効
- 利用明細で車両別・農機別の燃料消費を把握しやすい
高速情報協同組合のカードなら年会費・発行手数料無料
クレジット会社の与信審査が不要なため、設立直後の農業法人や個人事業主でも申し込みやすいカードとして、高速情報協同組合の法人ガソリンカードがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利用可能SS | 全国6400店舗のアポロステーション、出光、昭和シェルSSで利用可能 |
| 年会費・発行手数料 | 無料 |
| 出資金 | 1法人あたり10,000円(脱退時返金) |
| 与信審査 | クレジット会社の審査不要(協同組合の独自審査) |
| 用途 | 給油専用(洗車・オイル交換等は不可) |
法人で使える会計ソフトとの連携
税務調査で否認されないための証拠の残し方
「業務利用の証拠」と「按分根拠」の2点を残せば、税務調査は怖くありません。
残しておくべき4つの証拠
| 証拠 | 内容 | 保管期間 |
|---|---|---|
| 走行記録簿 | 車両番号・日付・走行目的・走行距離 | 法人税法上7年(欠損金がある事業年度は最大10年) |
| 農業作業日誌 | 日付・作業内容・使用農機・使用車両 | 同上 |
| 車両管理規定 | 車両ごとの「専用/兼用」区分、私的利用の取扱い | 規程として継続保管 |
| 燃料費明細(カード明細) | 給油日・SS・金額・車両 | 同上(7年) |
走行記録簿の作り方
スマホのメモアプリや、無料テンプレートで十分です。最低限、次の項目を記録します。
- 日付
- 車両番号(複数台ある場合)
- 走行目的(農地往復、農協出荷、資材購入など)
- 出発時走行距離・到着時走行距離
「毎日記録するのは続かなさそう…」
——業務用途のみ記録する方法でも十分です。月末に「総走行距離 − 業務走行距離合計=私用走行距離」と逆算できるため、私用の記録は不要になり負担が減ります。
農業作業日誌との整合性
燃料費の使途を証明するには、農業作業日誌と整合性を取ることが重要です。たとえば「代かきをした日にトラクター用軽油の購入記録がある」「出荷した日にトラックの燃料費がある」という具合に、両方の記録が連動していれば、業務利用の証拠として強力です。
まとめ|農業法人のガソリン代は「仕組み」で管理する
農業法人のガソリン代経費処理について、とくに押さえるべきポイントを3つ整理します。
- 法人車両でも業務専用の実態がない限り全額経費にはならない
- 法人会計にはマネーフォワードクラウド会計を使う
- ガソリンカードと会計ソフト連携で燃料費管理
仕組みを整えれば、農繁期でも経理が滞ることはありません。まずは燃料費の見える化として、ガソリンカードの導入から着手しましょう。
出典・参考(一次情報)
- 国税庁 タックスアンサー No.5202「役員等に対する経済的利益」
- 総務省「地方税制度|軽油引取税」
- 東京都主税局「軽油引取税の当分の間税率(旧暫定税率)の廃止について」
- 北海道庁「令和8年4月1日から軽油引取税の税率が変わります」
- 北海道庁「軽油引取税の課税免除」
- 大阪府「軽油引取税 免税軽油使用者証の交付申請」
- 大阪府「軽油引取税 免税軽油の引取り等に係る報告」
- 秋田県「農業用免税軽油の申請手続きについて」
- 農林水産省「農業に使用する軽油引取税の免税」
- 弥生株式会社「やよいの青色申告 オンライン」
- 高速情報協同組合「法人ガソリンカード」
記事内の制度・税率は2026年5月24日時点の情報に基づきます。最新情報は各都道府県・公的機関の公式ページで必ずご確認ください。


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