田植えや稲刈りの繁忙期に、短期のアルバイトや手伝いを雇う農家は多いもの。このとき意外と知られていないのが、雇い主には給与から所得税を天引きする“源泉徴収”の義務があるということです。
「短期の日雇いだから関係ない」と思いがちですが、金額によっては源泉徴収が必要。一方で、ルールを知っていれば日額9,800円未満は源泉ゼロで処理できるなど、手続きはシンプルにできます。正しく処理しないと、後から追徴やトラブルになることも。繁忙期の雇用前に押さえておきましょう。
この記事では、現役の米農家(農業法人代表)の視点で、農家のアルバイト給与と源泉徴収のやり方を整理します。
| 📌 この記事でわかること ・農家も源泉徴収義務者になること ・短期アルバイトに使う「日額表 丙欄」(日額9,800円未満は源泉0) ・天引きした所得税の納め方(納期の特例で年2回) ・専従者・通常の従業員との違い |
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太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
農家も「源泉徴収義務者」になる
人を雇って給与を支払う事業者は、給与から所得税を天引き(源泉徴収)して、本人の代わりに国へ納める義務があります。これは法人だけでなく、従業員を雇う個人の農家も同じです。
繁忙期の短期アルバイトでも対象になり得ます。「少額だから」「短期だから」と処理を怠ると、後で追徴の対象になることがあるため、正しく扱いましょう。
短期アルバイトは「日額表 丙欄」を使う
源泉徴収の税額は、国税庁の「源泉徴収税額表」で決まります。短期のアルバイトには日額表の「丙欄(へいらん)」を使います。
| 欄 | 主な対象 |
| 甲欄 | 扶養控除等申告書を提出した常用の従業員 |
| 乙欄 | 申告書を出さない(他に主たる給与がある)従業員 |
| 丙欄 | 雇用が2か月以内と決まっている日雇い・短期バイト |
| 💡 丙欄なら日額9,800円未満は源泉ゼロ 丙欄では、1日あたりの給与が9,800円未満なら源泉徴収税額は0円。それ以上になると、税額表に沿って源泉徴収します。短時間・少額の手伝いなら、源泉ゼロで済むケースが多いということです。 |
なお、丙欄で源泉徴収税額が0円になる金額は税制改正で変わります。令和7年度税制改正による基礎控除の引き上げを受けて源泉徴収税額表が改正され、令和8年分(2026年1月以降に支払う給与)では「日額9,800円未満」が0円ラインです(令和7年分以前は9,300円未満)。最新の基準は国税庁「源泉徴収税額表(日額表・丙欄)」でご確認ください。
天引きした所得税の納め方
源泉徴収した所得税は、原則として翌月10日までに国へ納めます。ただし、給与の支給人員が常時10人未満なら「納期の特例」を使え、年2回(7月10日・翌年1月20日)にまとめて納付できます。
- 原則:源泉徴収した月の翌月10日までに納付
- 納期の特例(常時10人未満):1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日に納付
- 特例を使うには「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出
専従者・通常の従業員との違い

雇う相手によって扱いが変わります。混同しないよう整理しておきましょう。
- 短期アルバイト(2か月以内):日額表の丙欄。日額9,800円未満は源泉ゼロ。
- 常用の従業員:扶養控除等申告書を提出してもらい、甲欄で源泉徴収。年末調整も必要。
- 青色事業専従者(家族):専従者給与として扱い、要件・届出がある(アルバイトとは別物)。
よくある2つの質問(Q&A)
繁忙期の給与・源泉徴収は、ソフトで自動計算

丙欄・甲欄の判定や源泉税額の計算、納付額の集計を手作業でやると、ミスや手間が増えます。クラウド会計(給与)ソフトを使えば、区分に応じた源泉税額を自動計算し、給与明細や納付額の集計まで対応。繁忙期に人を雇う農家ほど、給与処理を仕組み化しておくと安心です。日々の記帳ともつながり、確定申告もスムーズになります。
まとめ
繁忙期に短期アルバイト(2か月以内)を雇う農家は、源泉徴収義務者として日額表の丙欄を使いましょう。また、日額9,800円未満であれば源泉徴収税額は0円となり、天引きした所得税は原則翌月10日までに納付します。常時10人未満の事業所なら、納期の特例を使って年2回にまとめることも可能です。
専従者や常用従業員とは扱いが異なる点に注意し、支払った給与は経費としてきちんと記帳しましょう。給与計算や源泉徴収の管理はクラウド会計ソフトで自動化すれば、ミスを防ぎながら効率よく進められます。
出典・参考
・国税庁 No.2511「税額表の種類と使い方」、源泉徴収税額表(日額表・丙欄)
・国税庁「源泉所得税の納期の特例」
・国税庁 No.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」(2026年6月閲覧)
※本記事は一般的な情報提供であり、特定の金融商品・制度への加入を推奨するものではありません。掛金上限・税制・各制度の要件は改正される場合があります。最新の内容は各公式サイトでご確認のうえ、ご自身の状況に応じて専門家にご相談ください。


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