軽トラ、トラック、トラクター、コンバイン——農家が動かす車両は、一般の家庭とはまるで違います。
shoei保険は「なんとなく昔から同じ会社」のまま、という方が多いのではないでしょうか。
農業の車両保険は、押さえるべき論点が3つあります。ひとつは、トラクターなどの農耕作業用の小型特殊自動車が自賠責の対象外だということ。ふたつめは、農作業中の事故は自動車保険では守れないこと。そして3つめが、保有台数が10台を超えると保険の仕組みそのものが変わる(フリート契約)ということです。
この記事では、農業法人代表である私が、農家の車両保険の全体像と、保険料を下げる具体的な手順を解説します。


太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
農家の車両は、法律上どう扱われるのか


まず、自分の持っている車両がどの区分に入るかを確認します。ここを取り違えると、必要な保険が抜けたり、逆に不要な保険料を払い続けたりします。
| 車両 | 法律上の区分 | 自賠責 | 車検 | 任意保険 |
| 軽トラ・トラック・乗用車 | 軽自動車・普通自動車 | 必要 | 必要 | 加入できる |
| トラクター・コンバイン・田植機(最高速度35km/h未満) | 小型特殊自動車(農耕作業用) | 対象外 | 不要 | 加入できる場合がある |
| 同上(最高速度35km/h以上) | 大型特殊自動車 | 必要 | 必要(原則2年ごと) | 加入できる |
| フォークリフト等 | 小型特殊/大型特殊 | 区分による | 区分による | 区分による |
農耕作業用の車両は、最高速度35km/h未満であれば、大きさに関係なく「小型特殊自動車」になります。ここが一般の小型特殊(長さ4.7m以下・幅1.7m以下・高さ2.8m以下・最高速度15km/h以下)と違うところです。大型トラクターでも、速度が35km/h未満なら小型特殊。市区町村でナンバーを取得し、軽自動車税を納めます。
税金・登録のルール(道路運送車両法)と、免許のルール(道路交通法)は別物です。登録上は小型特殊でも、道路交通法で小型特殊免許・普通免許で運転できるのは「長さ4.7m以下・幅1.7m以下・高さ2.0m以下(安全キャブ・安全フレーム付きは2.8m以下)・最高速度15km/h以下」の範囲だけ。これを超えるトラクターで公道を走るには、大型特殊免許(農耕車限定を含む)が必要になる場合があります。



「ナンバーは付けたから大丈夫」と思っていたら無免許運転だった、というのは実際に起きています。
農作業中の事故は、自動車保険では守れません


ここは誤解が非常に多い部分です。自動車保険が補償するのは、あくまで自動車の「運行」に起因する事故です。
つまり、公道をトラクターで走行中に起こした事故は補償の対象になり得ますが、圃場でロータリーを回している最中の事故、作業機に巻き込まれた事故、傾斜地での転落——こうした「農作業中」の事故は自動車保険の対象外となるのが原則です。
- 農機具そのものの損害 → 農機具共済(JA共済)や動産総合保険
- 作業中のケガ → 労災保険の特別加入、または傷害保険
- 収入そのものの減少 → 収入保険
自動車保険で「農作業中もカバーされている」と思い込んでいると、いざというとき何も出ません。



補償範囲は保険会社・商品によって異なるので、必ず約款と担当者に確認してください。
【農作業のケガに備える】農業者の労災保険「特別加入」の仕組みと加入法
保険料を下げる方法は、保有台数で変わります
ここからが本題です。農家の自動車保険は、保有台数が9台以下か10台以上かで、保険料の決まり方そのものが変わります。
| ノンフリート契約(1〜9台) | フリート契約(10台以上) | |
| 対象 | 個人農家・小規模農業法人の大半 | 車両の多い農業法人・大規模農家 |
| 保険料の決まり方 | ノンフリート等級制度(1〜20等級)。事故の有無で等級が上下する | 損害率(払った保険料に対する保険金の割合)で決まる |
| 割引の上限 | 最大63%(20等級・無事故) | 保険会社により異なるが70〜80%程度まで |
| 契約の単位 | 車1台ごとに契約 | 全車をまとめて1契約。満期日も統一 |
| 弱点 | 会社ごとの保険料差が大きく、比較しないと損をしやすい | 大きな事故が1件あると、翌年の保険料が全車まとめて上がる |
台数のカウントは「所有・使用する自動車の総付保台数」です。軽トラ、トラック、乗用車に加え、フォークリフトや農耕車も対象になり得ますが、扱いは保険会社によって異なります。



9台前後の方は、一度自分の台数を数え直してみてください。10台に届けば、割引の上限が一段上がります。
【9台以下の農家】まず「比較」だけで保険料は下がる
ノンフリート契約の落とし穴は、同じ補償内容でも保険会社によって保険料がまるで違うことです。等級は他社に引き継ぐことができるため、乗り換えても等級はそのまま。それなのに「昔からの付き合い」で一社を使い続け、比較したことすらない——これが農家にいちばん多いパターンです。
自動車保険の一括見積もりを使えば、複数社の保険料を一度に取り寄せて並べて比べられます。
- 現在の保険証券(等級・満期日・補償内容が書いてあります)
- 車検証(車台番号・初度登録年月)
- 免許証(免許の色で保険料が変わります)
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今の契約が適正かどうかを知るだけでも価値があります。
【10台以上の農業法人】フリート契約の見直しで大きく変わる
車両が10台以上になると、フリート契約になります。フリートの保険料は「損害率」で決まります。過去に大きな事故がなく、損害率が低く抑えられていれば、ノンフリートの上限(63%)を超える割引が期待できます。
フリート契約のメリット
- 全車をまとめて1契約にできる。満期日が統一され、更新忘れがなくなる
- 車両を入れ替えるたびの手続きが簡素になる(保険会社によります)
- 損害率が低ければ、割引率がノンフリートの上限を超えることがある
フリート契約のデメリット
- 1件の大きな事故で保険金が多く出ると、翌年の保険料が全車まとめて大幅に上がる
- 年齢条件による割引や、ファミリーバイク特約などが使えない
- 9台に減ると自動的にノンフリートへ戻る(等級の扱いに注意が必要)



私たちはフリート契約を結んでおり、トラクターとコンバインも車両として含めてます。
すでにフリート契約を結んでいる農業法人こそ、見直しの余地が大きいところです。保険会社によって得意・不得意な車種があり、同じ台数・同じ補償でも保険料が変わります。台数が多い分、率が少し動くだけで金額の差は大きくなります。「今の契約が適正なのか」を知るだけでも、見積もりを取る価値があります。
- 現在の保険証券
- 保険会社から取り寄せる照会票(現在の契約内容がわかる書類)
- 全車両の車検証
この3点がそろっていないと見積もりが出せません。逆に、そろえてから申し込めば話が早く進みます。車検証は台数分あるので、先にまとめてコピーしておくとスムーズです。
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フリート契約の見積もりへ ≫自動車保険料は農業経費になります


農業に使う車両の保険料は、損害保険料として農業経費に計上できます。軽トラの任意保険、トラックの自賠責、農機具共済の掛金——いずれも対象です。
注意点は、自家用と農業用を兼ねている車です。この場合は、走行距離や使用日数など合理的な基準で按分し、農業使用分だけを経費にします。しかし全額を経費にしてしまうと、税務調査で否認される可能性があります。
【軽トラの経費】按分のやり方と帳簿のつけ方を現役米農家が解説
まとめ|自動車保険は定期的に比較しよう
農家の車両保険で押さえるべき点を整理します。
- 農耕作業用の車両(最高速度35km/h未満)は小型特殊自動車。自賠責の対象外だが、ナンバー登録は必要
- 登録が小型特殊でも、大型特殊免許が必要な場合がある。免許のルールは別物
- 農作業中の事故は自動車保険の対象外。農機具共済・労災特別加入・収入保険で備える
- 9台以下はノンフリート(最大63%割引)。比較しないと損をしやすい
- 10台以上はフリート契約(70〜80%程度まで)。見直しの余地が大きい
- 保険料は農業経費。自家用と兼用なら按分する
「今の保険料が高いのか安いのか」は、比べてみないとわかりません



保険は、見直さないかぎり毎年そのまま自動更新されていきます。何年も比較していないなら、一度だけ見積もりを取ってみてください。
出典(一次情報)
- 日本損害保険協会「フリート契約とは?自動車保険のポイントを解説」
- 自動車損害賠償保障法 第2条(農耕作業用小型特殊自動車の適用除外)
- SBIの保険比較インズウェブ「自動車保険一括見積もり」
- 「インズウェブとは」
- 農林水産省「作業機付きトラクターの公道走行について」
- 道路運送車両法施行規則 第2条 別表第1(小型特殊自動車の定義)
本記事は一般的な情報提供であり、特定の保険商品を推奨するものではありません。補償内容・割引率・保険料は保険会社および商品によって異なります。契約前には必ず各社の公式サイト・重要事項説明書・約款をご確認ください。車両の区分・免許・登録の要件は、お住まいの自治体および運輸支局にご確認ください。税務上の取扱いは所轄の税務署または税理士にご相談ください。










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