「中山間地域でも活用できる交付金ってあるの?」——傾斜のある農地で米や野菜を作っている皆様にとっては大切な地域を守るため、気になる話ではないでしょうか。
結論として、中山間地域の農家を対象とした交付金はあります。
高齢化や担い手不足が進み、条件の悪い農地ほど手をかけにくいのが現実。だからこそ、この交付金は農地を守る大きな支えになります。私は千葉で米農家を営みながら農業の補助金や税務の情報を発信しており、本制度も交付要綱・自治体資料などの一次情報まで確認して整理しました。
この記事では、交付金の要件・交付単価・申請の流れ・税金の扱いまでを、はじめての方にも分かるようにまとめます。読み終えるころには「自分の農地が対象になりそうか」「次に誰へ相談すればいいか」がはっきりするはずです。
| 📌 この記事でわかる5つのこと ・対象になる「地域」と「農地」の条件 ・10aあたりの交付単価(地目・傾斜別の早見表) ・集落協定と「5年間の継続」という大事な要件 ・第6期対策(2025〜2029)で変わったポイント ・5つの申請ステップと、見落としがちな税金の注意点 |
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太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
中山間地域等直接支払交付金とは?

中山間地域等直接支払交付金とは、条件の不利な中山間地域で農業生産活動を続ける集落などに、農地の面積に応じてお金を交付する国の制度です。耕作放棄を防ぎ、水源かん養や洪水防止といった農地・農村の多面的機能を守ることが目的です。交付金の費用は、国2分の1・都道府県4分の1・市町村4分の1で負担します(知事特認地域は国・都道府県・市町村が3分の1ずつ)。
中山間地域等直接支払交付金のほかにも、農家が使える補助金は数多くあります。目的別の一覧で全体像をつかんでおくと、自分に合う制度を見つけやすくなります。
【要件①】対象になる「地域」かを確認する
まず確認したいのが、自分の農地が対象地域に入っているかです。次のいずれかに該当する地域が対象になります。
- 9法指定地域:特定農山村法・山村振興法・過疎法・半島振興法・離島振興法・棚田地域振興法・沖縄振興特別措置法・奄美群島振興開発特別措置法・小笠原諸島振興開発特別措置法
- 知事特認地域:地域の実情に応じて都道府県知事が指定する地域
該当するかどうかは市町村ごとに決まっています。まずはお住まいの市町村の農政担当へ確認するのが確実です。
【要件②】対象になる「農地」かを確認する
地域が対象でも、農地そのものの条件も満たす必要があります。基本は、農業振興地域の農用地区域内かつ地域計画区域内にある、1ヘクタール以上の一団の農地です(集落協定で保全活動を行う場合は、1ヘクタール未満の飛び地等もまとめて扱えます)。
傾斜の度合いで「急傾斜」「緩傾斜」に分かれ、これが交付単価に直結します。
- 急傾斜:田は1/20以上、畑・草地・採草放牧地は15度以上
- 緩傾斜(市町村長の裁量):田は1/100以上1/20未満、畑等は8度以上15度未満
・このほか、小区画・不整形な水田や、高齢化率40%以上かつ耕作放棄率が高い農地などの裁量基準もあります。
| 💡 ここがポイント 傾斜が急なほど、交付金の単価も高く設定されています。自分の田んぼが急傾斜か緩傾斜かで金額が大きく変わるので、まずは傾斜区分を市町村に確認しましょう。 |
交付単価はいくら?地目・傾斜別の早見表
交付単価の上限(10アールあたり)は、地目と傾斜で次のように決まっています。
| 区分 | 急傾斜 | 緩傾斜等 |
| 田 | 21,000円 | 8,000円 |
| 畑 | 11,500円 | 3,500円 |
| 草地 | 10,500円 | 3,000円 |
| 採草放牧地 | 1,000円 | 300円 |
※10アール=1反あたりの上限単価です(草地には寒冷地区分などの例外あり)
注意したいのは、集落協定で取り組むべき体制整備を行わない場合は、上記単価の0.8倍(基礎単価)になる点。第6期対策では、満額(10割単価)を受けるために「ネットワーク化活動計画」の作成が必要になりました。
さらに、要件を満たせば棚田地域振興活動加算・超急傾斜農地保全管理加算・ネットワーク化加算・スマート農業加算などの加算単価が上乗せされる場合もあります。
【要件③】交付の条件|集落協定と「5年間の継続」
交付金を受けるには、集落協定(または個別協定)を結び、5年間以上継続して農業生産活動等を行うことが条件です。協定には、農地の保全や水路・農道の管理といった共同取組の内容を盛り込みます。
交付金は個人への配分だけでなく、農道・水路の維持管理、共同利用機械の購入、鳥獣害対策、耕作放棄地の解消など、集落の創意工夫による共同活動の経費にも使えます。
| ⚠️ 注意 5年間の継続が前提です。途中で対象農地の管理をやめてしまうと、交付金の返還を求められることがあります。「5年続けられる体制か」を、協定を結ぶ前にしっかり話し合っておきましょう。 |
第6期対策(2025〜2029)で変わったポイント
令和7年度からの第6期対策では、主に次の点が見直されました。
- 対象農用地を限定:農振農用地区域内かつ地域計画区域内の農地が対象に
- 体制整備単価(10割)の要件を変更:満額を受けるには「ネットワーク化活動計画」の作成が必要に
- みどりチェック:環境負荷低減のクロスコンプライアンス(チェックシート)への対応
第5期から自動で継続されるわけではなく、改めて協定の作成・申請が必要な点に注意してください。
交付金の申請の流れ|5つのステップ
自分の地域・農地が対象になるか、傾斜区分や単価を確認する。
対象農地や共同取組の内容を決め、集落協定を作成する。
市町村へ協定を提出し、事業計画の認定を受ける。
農業生産活動と共同取組を5年以上継続して行う。
活動実績を報告し、交付金を受け取る。
実務の窓口は市町村、制度に関する問い合わせは最寄りの地方農政局です。手続きは集落での合意形成が肝なので、早めの相談がおすすめです。
【見落とし注意】交付金は課税対象|確定申告での扱い
意外と見落とされがちですが、受け取った交付金は雑収入として課税対象です。個人へ配分された分は所得になり、確定申告が必要になります。「もらって終わり」ではない点に注意しましょう。
特に、交付金や他の補助金で機械・施設などの固定資産を買った場合は、何も対策をしないとその年の税負担が重くなります。補助金が固定資産の取得・改良を目的として交付された場合に限り、個人は総収入金額不算入(所得税法42条)、法人は圧縮記帳(法人税法42条)といった特例の対象になり得ます
あわせて読みたい|併用も検討したい交付制度
米農家であれば、水田を対象にした交付金とあわせて考えたいところです。下の記事では、要件や申請手順を解説しています。制度が別なので、条件を満たせば併用できる場合もあります。自分の田んぼで何が使えるか、セットで確認してみてください。
よくある4つの質問(Q&A)
確定申告の手間を減らすなら、会計ソフトが近道

交付金や補助金を受け取ると、雑収入の計上や固定資産の処理など、帳簿づけは一気に複雑になります。手作業で正確にこなすのは大変で、計上ミスは余計な税負担やトラブルのもとです。クラウド会計ソフトを使えば、画面の案内に沿って入力するだけで、雑収入の記帳から確定申告書の作成まで自動で進められます。
私も日々の記帳はクラウド会計に任せ、米づくりの時間を優先しています。はじめての方は、まず無料から試せる対応ソフトで仕組みを整えておくと安心です。
まとめ:まずは「対象かどうか」を市町村に確認しよう
中山間地域等直接支払交付金は、条件の不利な農地を守りながら活動を続ける集落を支える、心強い制度です。最後に3つの要点を整理します。
| 🌾 押さえるべき3つのポイント ① 対象は「地域」と「農地」の両方の要件を満たすことが必要 ② 単価は地目・傾斜別。集落協定+5年間の継続が交付の条件 ③ 受けた交付金は課税対象。確定申告での処理を忘れずに |
まずは自分の農地が対象になりそうかを市町村に相談するところから。制度をうまく活用して、大切な農地を次の世代へつないでいきましょう。
出典(一次情報)
農林水産省「中山間地域等直接支払制度」(第6期対策パンフレット/交付要綱・実施要領 令和7年4月1日改正)
京都府「中山間地域等直接支払制度の基本的仕組み」(対象要件・交付上限単価の参考)


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