黒字なのに、口座にお金が足りない。農業ほど、この「黒字倒産」のリスクが身近な仕事はありません。収入は秋の収穫期に集中する一方、苗や肥料、燃料の出費は春に重なるからです。
このタイミングのズレを乗り越える道具が、資金繰り表です。利益とは別に「お金の出入り」を管理することで、資金ショートを防げます。この記事では、現役の米農家として、融資返済にも強い資金繰り表の作り方を解説します。
- 資金繰り表と損益計算書の違い
- 資金繰り表の基本の項目
- 資金繰り表の作り方の5ステップ
- 農業ならではの注意点
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太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
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資金繰り表とは?「利益」と「残高」は別物

資金繰り表とは、毎月のお金の出入りを記録し、将来の残高を予測する表です。「いくら儲かったか」を見る損益計算書とは目的が違います。別の管理が必要な理由は、利益が出ていても手元にお金があるとは限らないからです。
たとえば、米を出荷しても入金は数か月後、ということがあります。帳簿上は売上が立っていても、現金はまだ入っていない。この「ズレ」を見えるようにするのが資金繰り表の役割です。
なぜ「黒字」なのに資金が足りなくなるのか?
逆に機械をローンで買った場合、減価償却費は経費として少しずつ計上されますが、ローンの返済というお金の流出は、利益の計算には直接表れません。こうした利益とお金のすれ違いが積み重なると、黒字なのに資金が足りないという事態が起こります。
資金繰り表は、この見えにくいお金の流れを、月単位で映し出してくれます。経営の数字を見つめ直す大切さは、農家の法人化のメリット・デメリットと判断基準でも触れています。
資金繰り表の5つの基本の項目
資金繰り表は、難しく考える必要はありません。大きく分けて、次の項目で構成されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 月初の現預金残高 | その月のはじめに手元にあるお金 |
| 経常収入 | 米や野菜の売上、補助金など入ってくるお金 |
| 経常支出 | 資材費、人件費、燃料費など出ていくお金 |
| 財務収支 | 借入や返済など、資金調達に関わるお金 |
| 月末の現預金残高 | 月初残高に収支を足し引きした結果 |
資金繰り表の作り方【5ステップ】
実際の作り方を順番に見ていきます。
まず、いま手元にいくらあるかを確認します。普通預金や現金を合計し、これがスタート地点になります。
米の出荷代金、概算金、補助金、その他の収入を、実際に入金される月に書き込みます。売上が立つ月ではなく、お金が入る月に書くのがポイントです。
種苗・肥料・農薬・燃料・人件費などの支出を、支払う月に記入します。農業は春先に支出が集中しやすいので、その山を見える化します。
融資を受ける予定や毎月の返済額を財務収支に書き込みます。返済を織り込むことで、返済しながら経営が回るかどうかが見えてきます。
各月で「月初残高+収入ー支出±財務収支」を計算し、月末残高を出します。これを並べると、どの月に資金が薄くなるかが一目で分かります。残高がマイナスになりそうな月があれば、それは資金ショートの危険信号です。その月の数か月前から、入金を早める・支出を遅らせる・つなぎ融資を準備するといった対策を考えておきましょう。先が見えていれば、慌てずに手を打てます。
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▼資金繰り表は融資の強い味方
資金繰り表は、自分のためだけでなく、融資を受けるときの説得材料にもなります。金融機関は、「貸したお金がきちんと返ってくるか」を重視します。返済を織り込んだ資金繰り表を示せれば、返済能力を具体的に説明できます。融資制度の全体像は、農家が使える15大融資制度を目的別に徹底比較で解説しています。
季節変動に注意!米農家の資金の流れとは
農業の資金繰りで、もっとも大切なのが季節変動です。一般の事業以上に、収入と支出の時期が偏ります。
米農家の場合、収入は秋の出荷後に集中し、それまでは入金が少ない一方、支出は春の作付け前後に大きく出ます。この「収入の前に支出が来る」構造が、資金繰りを苦しくする原因です。
だからこそ、過去の実績をもとに、月ごとの収入・支出をできるだけ現実に近づけて入力することが大切です。資金が薄くなる時期が分かれば、早めに融資を準備したり、支出の時期をずらしたりと、手が打てます。
▼【実体験】米農家の1年・資金の流れのイメージ
| 時期 | 主な入金 | 主な支出 | 資金の傾向 |
|---|---|---|---|
| 春(4〜5月) | 少ない | 苗・肥料・燃料・農薬 | 減りやすい |
| 夏(6〜8月) | 少ない | 水管理・防除の経費 | もっとも薄い時期 |
| 秋(9〜11月) | 出荷代金が入る | 収穫・乾燥の経費 | 回復する |
| 冬(12〜3月) | 概算金の精算など | 機械整備・翌年の準備 | 比較的安定 |
このように、米農家は夏に資金が底をつきやすい構造です。この谷を事前に把握しておけば、慌てずに備えられます。資金繰り表は、その谷の深さと時期を教えてくれる地図のような存在です。
資金が苦しくなりそうなときの4つの対策
資金繰り表で「この月は厳しい」と分かったら、早めに手を打ちましょう。代表的な対策は次のとおりです。
- 入金を早める:出荷先と支払いサイトを相談する、概算金の活用を検討する
- 支出を遅らせる・分散する:資材の購入時期を見直す、リースや分割を活用する
- 運転資金を借りる:農業近代化資金やセーフティネット資金など、つなぎの融資を検討する
- 固定費を見直す:燃料費や保険料など、毎月の支出を点検する
大切なのは、資金が尽きてから動くのではなく、尽きる前に動くことです。資金繰り表があれば、谷が来る数か月前に気づけます。金融機関も、余裕をもって相談に来る経営者を高く評価します。先を読んで動けることこそ、資金繰り表を作る最大のメリットです。
続けるコツは会計ソフトと連動させる

資金繰り表は、作って終わりではなく、毎月更新してこそ価値があります。とはいえ、手作業で残高を追い続けるのは大変で、入力ミスも起きがちです。
マネーフォワードクラウド確定申告で日々の会計業務を自動化し、銀行口座やカードと連携して入出金が自動で記録され、資金繰りの把握がぐっと楽になります。安心充実のサポート体制もあり、始めての方でも使うことができます。
資金繰り表のよくある3つの質問
資金計画の次は「法人化」も検討しよう

資金計画を固める段階で、法人化の損得も気になります。法人化が自分にとって得かは、売上・所得・家族構成で変わります。経営サポートプラスアルファの60分無料相談で「自分の場合」の法人化メリットを試算すると、社会保険まで含めた損得を数字で確認できます。設立代行費用は実質0円、最短1営業日での設立にも対応。
まとめ:資金繰り表で「倒産」を防ぐ
農業の資金繰り表で押さえるべきは、次の3点です。
- 資金繰り表は利益ではなく「お金の出入り」を管理する表
- 収入は入金月、支出は支払月に書き、借入・返済も織り込む
- 農業特有の季節変動を反映し、資金が薄くなる時期に備える
利益が出ていても、お金が回らなければ経営は続きません。資金繰り表は、その命綱です。まずは過去1年の入出金から、ざっくり作ってみてください。完璧を目指さず、続けるうちに精度を上げていけば十分です。一度作れば、来年からは数字を入れ替えるだけで使えます。
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