家族に払う給料を、まるごと経費にできる。
青色申告の大きな武器が「青色事業専従者給与」で、家族で農業をする人にとって、納める税金が大きく変わります。ただし、ただ給料を払えばいいわけではなく、専従者として認められる要件を満たし、事前に届出を出しておく必要があります。
この記事では、現役の米農家として、家族を青色事業専従者にするための条件と手続きを整理します。
- 青色事業専従者給与の仕組み
- 専従者と認められる要件
- 届出の書き方と提出期限
- 注意すべき落とし穴
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太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
青色事業専従者給与とは?

通常、生計を一にする家族への給料は原則として経費にできません。これは、家族内でお金を動かすだけで所得を分散し、税金を不当に減らすことを防ぐためです。
ところが青色申告には特例があり、一定の要件を満たせば、家族に払う給料を全額経費にできます(国税庁)。経費が増えれば、その分だけ事業の所得は下がり、所得税や住民税が軽くなります。家族で田んぼを回している農家にとって、これは見逃せない節税策です。
家族に払う給料での節税効果は、農家の専従者給与で節税する方法でも解説しています。
専従者と認められる4つの要件
誰でも専従者にできるわけではありません。次の要件をすべて満たす必要があります(国税庁)。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者やその他の親族であること
- その年の12月31日時点で15歳以上であること
- その年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事していること
- 青色事業専従者給与に関する届出書を提出していること
ポイントは、3つ目で、たとえば別の会社に勤めながら手伝う家族や、学校に通う子どもは、原則として専従者にはなれません。あくまで、その農業を主な仕事として担っている家族が対象です。
「専ら従事」とは?6か月超えのルール
「専ら従事」とは、その年のうち6か月を超える期間、その事業に携わっていることを指します。他に主たる職業があると、この要件を満たせません。
ただし、農業は季節性の強い仕事です。年の途中で就農した場合など、事業を行っていた期間が1年に満たないときは、「その期間の半分を超えて従事していればよい」とされるケースもあります。自分の状況が当てはまるか分からないときは、税務署に確認すると確実です。
届出の書き方と提出期限
専従者給与を経費にするには、事前の届出が欠かせません。まずは、青色事業専従者給与に関する届出書を税務署に提出します。
提出期限は3月15日まで
期限は、専従者給与を経費にしたい年の3月15日までです。その年の1月16日以降に開業した場合や、新たに専従者ができた場合は、その日から2か月以内が期限になります(国税庁)。
書く内容はシンプル
届出書には、専従者の氏名・続柄・仕事の内容のほか、給与の金額や支給時期を記載します。ここで届け出た金額の範囲内でしか経費にできないため、少し余裕を持った金額で届け出ておくのが実務的なコツ。提出方法は、税務署の窓口・郵送のほか、e-Taxでも可能です。
給与はいくらにすべき?「相当性」のルール
「経費になるなら高くすればいい」と思うかもしれませんが、そうはいきません。専従者給与は、仕事の内容や働いた時間に見合った金額でなければなりません。
実際にはほとんど働いていない家族に高額の給与を払うと、税務署から「労務の対価として不相当」と否認されるおそれがあります。逆に、しっかり農作業を担っている家族には、その働きに見合った給与を設定できます。世間の相場や仕事量を踏まえ、説明できる金額にしておくことが大切です。
【注意点】配偶者控除・扶養控除は使えなくなる

家族を専従者にして給与を払うと、その家族は配偶者控除や扶養控除の対象から外れます。
専従者給与で経費にした効果と、控除がなくなる影響を比べて、トータルで得かどうかを考える必要があります。一般的には、ある程度の給与を払えるなら専従者給与のほうが有利になりやすいものの、給与が少額なら控除を使ったほうが得な場合もあります。両方で試算してみるのがおすすめです。
白色申告の「専従者控除」とのちがい
実は、白色申告にも家族の労働を考慮するしくみがあります。両者の違いを整理します。
| 項目 | 青色事業専従者給与 | 白色の専従者控除 |
|---|---|---|
| 経費にできる額 | 相当な範囲で実際に払った額 | 配偶者86万円・その他50万円が上限 |
| 事前の届出 | 必要 | 不要 |
| 金額の柔軟さ | 高い | 上限が決まっている |
青色のほうが、実際に払った給与を上限なく経費にできるぶん、節税の幅が大きいのが分かります。これも、青色申告を選ぶ大きな理由のひとつです。
専従者給与でやりがちな4つの失敗
便利な制度ですが、つまずきやすい点もあります。次のようなケースは、税務署から否認されるおそれがあるので注意してください。
- 届出を出さずに給与を払う:事前の届出がなければ、そもそも経費にできません
- 届け出た金額を超えて払う:超えた分は経費に認められません
- 働いていないのに高額を払う:労務の対価として不相当とされ、否認のリスクがあります
- 他に本業がある家族を専従者にする:「専ら従事」の要件を満たさず、認められません
いずれも、「実態に合った給与を、届出どおりに払う」という基本を外したときに起こります。家族だからと曖昧にせず、勤務実態を記録しておくことが、いざというときの裏づけになります。
専従者を雇うときに必要な手続き

専従者に給与を払う立場になると、事業主としていくつかの手続きが必要になります。
まず、給与の支払いを始めるときは「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出します。そして、給与から所得税を天引きして国に納める「源泉徴収」も必要です。源泉徴収した税金は、原則として翌月10日までに納めますが、人数が少ない場合は年2回にまとめられる特例もあります。
これらは難しく感じるかもしれませんが、会計ソフトを使えば計算や書類づくりの多くを自動化できます。仕組みを一度整えれば、毎月同じ流れで回せます。
家族への給料は会計ソフトで管理すべき
専従者給与を正しく経費にするには、毎月の給与をきちんと記帳し、源泉徴収などの手続きも行う必要があります。給与計算や帳簿づけを手作業でこなすのは、農作業と並行するとかなりの負担です。
そこで役立つのが会計ソフトで、やよいの青色申告オンライン(初年度無料)で専従者給与の記帳と申告をまとめて行うと、給与の経費計上から所得の確定申告書づくりまで対応できます。最大65万円の青色申告特別控除とあわせて、家族経営の節税を最大限に活用できます。
確定申告全体の流れは、農家の確定申告のやり方|青色申告で得する完全ガイドで、会計ソフトの選び方は、農家の青色申告とクラウド会計ソフトの選び方でも解説してるのでご覧ください。
青色事業専従者のよくある3つの質問
まとめ:家族への給料は正確に管理しよう
家族を青色事業専従者にするときの要点は、次の4つです。
- 生計を一にし、6か月超もっぱら従事する15歳以上の家族が対象
- 3月15日まで(または専従者ができてから2か月以内)に届出を出す
- 給与は仕事に見合った相当な金額にし、配偶者控除との損得も確認する
- 会計ソフトを活用し、家族への給与をただしく管理する
家族の働きをきちんと給与として認め、経費にする。これは節税であると同時に、家族の貢献を見える化することでもあります。日々一緒に汗を流す家族の労働を、正当に評価する仕組みでもあるのです。手続きは一度整えてしまえば、翌年からは同じ流れで続けられます。


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