確定申告の時期になるたびに「農家の申告って何を準備すればいいの?」「白色と青色、どっちが得なの?」と悩んでいませんか。農業は収穫や補助金など、ほかの仕事にはない収入・経費があり、申告の準備が複雑に感じられます。しかし、ポイントさえ押さえれば農家の確定申告は決して難しくありません。
この記事では、農業経営をする私が確定申告のやり方と青色申告のメリットを、国税庁の情報にもとづいてわかりやすく解説。読み終えるころには、青色申告で最大65万円を所得から差し引く具体的な手順がわかり、迷わず申告準備を始められます。
- 農家の確定申告の基本(白色・青色の違い)
- 農業収入と経費の正しい計上方法
- 農家特有の注意点(補助金・棚卸・減価償却)
- 確定申告書の作成と提出の手順
- 会計ソフトで申告準備を楽にする方法

太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
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あなたは専業?副業?|確定申告の判断基準

専業農家は、収入の大きさにかかわらず毎年の確定申告が必要です。一方、会社員が副業として農業を行う場合は、判定の基準が少し変わります。
会社員が副業で農業をする場合は、給与・退職以外の「所得(収入から必要経費を引いた金額)」の合計が年間20万円を超えるときに確定申告が必要です。判定するのは売上(収入)ではなく、もうけ(所得)という点です。
ただし、所得税が不要でも住民税の申告は必要です。「20万円以下は申告不要」というルールは住民税にはありません。お住まいの市区町村で確認しましょう。
どちらがお得?|青色申告と白色申告の最大の違い
確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類がありますが、節税したいなら青色申告一択です。 理由は、青色申告には「青色申告特別控除」という大きな節税のしくみがあるからです。
| 項目 | 白色申告 | 青色申告 |
|---|---|---|
| 記帳の方法 | 簡易な記録 | 複式簿記(または簡易簿記) |
| 特別控除 | なし | 最大65万円 |
| 家族への給与 | 一部のみ経費化 | 全額を経費にできる(要件あり) |
| 赤字の繰越 | 不可 | 3年間繰り越せる |
| 手間 | 少ない | やや多い(ソフトで軽減可) |
最大65万円を所得から引けるしくみ
青色申告の最大のメリットが「青色申告特別控除」です。控除とは、税金の計算のもとになる所得から一定額を差し引けるしくみで、差し引いた分だけ税負担が軽くなります。控除額は記帳と提出の方法で3段階に分かれます。
- 65万円控除:複式簿記で記帳し、「e-Taxで電子申告」または「優良な電子帳簿の保存」を行った場合
- 55万円控除:複式簿記で記帳し、紙(郵送・窓口)で提出した場合
- 10万円控除:簡易簿記(簡単な収支記録)の場合
💬 「65万円控除はe-Taxじゃないと無理なの?」
いいえ。65万円控除を受ける方法は2つあります。e-Taxでの電子申告だけでなく、一定の要件を満たした電子帳簿の保存でも65万円控除が可能です。どちらか片方を満たせば大丈夫です。
その他の青色申告の4つのメリット
特別控除のほかにも、青色申告には次のような特典があります。
- 青色事業専従者給与:一緒に働く家族への給与を必要経費にできる
- 純損失の繰越控除:赤字を翌年以後3年間繰り越して、黒字と相殺できる
- 少額減価償却資産の特例:30万円未満の備品を一括で経費にできる(年間合計300万円まで)
- 税額控除:中小企業投資促進税制など、設備投資に応じた控除が使える場合がある
少額減価償却資産の特例は、令和8年(2026年)4月1日以後の取得分から「40万円未満」へ引き上げが予定されています(出典:中小企業庁・財務省)。
提出期限に注意?|青色申告の申請手続きについて
青色申告をするには、税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。期限を1日でも過ぎると、その年は青色申告ができないので注意してください。
| ケース | 提出期限 |
|---|---|
| 新規就農(1月16日以後に開業) | 開業日から2か月以内 |
| 1月1日〜1月15日に開業 | その年の3月15日まで |
| 白色から青色へ切り替え | 青色にしたい年の3月15日まで |
家族へ給与を支払って経費にする場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」も提出します。こちらも原則として、経費にしたい年の3月15日まで(その年1月16日以後に開業・専従者を持った場合はその日から2か月以内)が期限です。
農家特有の収入と経費の処理方法

農業には、ほかの業種にはない収入・経費の処理ルールがあります。とくにお米の収入を計上するタイミングは、米農家がもっとも間違えやすいポイントです。
お米農家の収入の計上タイミング
「お米の収入は、売れた時に計上すればいいんじゃないの?」
米・麦などの穀物は「収穫基準」というルールが適用されます。収穫した時点で、その時の生産者販売価額(庭先価格)により、収穫した年の収入として計上するしくみです。まだ出荷も販売もしていなくても、12月末までに収穫したお米は、その年の収入に含める必要があります。
JAや市場への出荷代金が翌年の入金になっても、お米なら収穫した年の収入として扱います。ここを誤ると、収入の計上年がずれてしまうので気をつけましょう。
野菜や果樹などは収穫基準を使わず、出荷・販売したときに収入計上します。作物によってルールが違う点に注意してください。
補助金・助成金の計上タイミング
補助金・助成金は、原則として支給決定通知書を受け取った日の属する年の収入として計上します。
ただし、機械や施設などの固定資産の取得に充てる国庫補助金等には、「国庫補助金等の総収入金額不算入(圧縮記帳)の特例」があり、処理方法が変わる場合があります。該当しそうなときは、税務署や税理士に確認すると安心です。
農業の経費項目10選
農業の経費として計上できる主な項目は次のとおりです。
- 種苗費:稲の種籾・野菜の種・苗の購入費
- 肥料費:化学肥料・有機肥料の購入費
- 農薬費:殺虫剤・除草剤・殺菌剤などの購入費
- 農機具費:農業機械の修繕費・消耗部品代
- 燃料費:トラクター・コンバインなどの軽油・ガソリン代
- 水利費:農業用水の利用料
- 農地賃借料:借りている農地の賃借料
- 農業共済掛金:NOSAI(農業共済)の掛金
- 通信費:農業に使うスマホ・インターネット代(按分)
- 車両費:農業用の軽トラックなどの維持費(按分)
💬 「自分の車を農業にも使っている場合は?」
その場合は、農業で使った分だけを按分(あんぶん)して経費にします。按分とは、使った割合に応じて費用を分けることです。走行距離の記録などで、業務に使った割合を残しておきましょう。
棚卸資産(作物)の処理|売れ残りも資産に計上する
農家の確定申告で見落としがちなのが、期末(12月31日)時点で倉庫に残っている農産物の評価です。
収穫済みで未出荷の農産物は「棚卸資産」として評価し、青色申告決算書の棚卸資産欄に記載します。評価方法は、原価法(生産にかかった費用で評価)または低価法で計算します。
筆者の場合は、毎年12月末に倉庫内の玄米の残量を計量し、1kgあたりの生産原価(種苗・農薬・肥料・機械費などの合計÷生産量)を掛けて棚卸額を算出しています。
⚠️ この処理をしないと、売れていない農産物分のコストまで経費に入ってしまい、利益が実際より少なく計算されてしまいます。正確な損益のためにも忘れずに行いましょう。
確定申告書の提出手順と6つの必要書類
ここからは、実際の申告書の作り方と提出の流れを説明します。**結論は「必要書類をそろえ、e-Taxで提出する」**のが、控除も手間も最適になる方法です。
必要書類の準備
確定申告に必要な主な書類は次のとおりです。
- 青色申告決算書(農業所得用)または収支内訳書(白色の場合)
- 確定申告書(農業所得を記載)
- 収入を証明する書類(農協精算書・農産物出荷証明など)
- 経費の領収書・請求書
- 固定資産台帳(農機具の減価償却計算用)
- 農業共済金・補助金の支給決定通知書
⚠️ かつての「確定申告書A・B」という区分は、令和4年分(2022年分)から廃止され、現在は「確定申告書」に一本化されています(出典:国税庁)。古い様式名で探さないようにしましょう。
e-Taxで65万円控除を確実に受ける
青色申告の65万円控除は、複式簿記での記帳に加えて「e-Taxでの電子申告」または「優良な電子帳簿の保存」が必要です。手軽さでは、多くの農家にとってe-Taxが現実的な選択肢になります。
e-Taxを使うには、マイナンバーカードと、読み取り用のスマートフォン(またはICカードリーダー)が必要です。
💬 「設定が難しそうで不安……」
最初の設定だけは少し手間がかかりますが、一度終えれば翌年以降はスムーズです。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」は画面の案内に沿って入力でき、初めてでも進めやすくなっています。
会計ソフトで農家の申告準備を楽にする

日々の記帳を自動化すれば、確定申告の負担は大きく減ります。
会計ソフトを使えば、収入・経費の入力から、青色申告決算書・確定申告書の作成までを進められます。また、銀行口座やクレジットカードと連携すると、燃料費や資材費などの入力が自動で取り込まれます。さらに領収書も写真を撮るだけでデータ化でき、紙の管理を減らせます。
私はTACHIFARMを設立後、マネーフォワードクラウドを使い始め、農繁期でも記帳が追いつくようになりました。手書きで年末にまとめて入力する負担を避けたい方には、早めの導入をおすすめします。
まとめ|農家の確定申告は「青色申告+会計ソフト」が近道
最後に、この記事の4つの要点を振り返ります。
- 青色申告なら最大65万円を所得から控除できる
- 副業農家の申告判定は「所得(収入−経費)」が年20万円超かどうかで見る
- 青色の65万円控除は「e-Tax」または「優良な電子帳簿の保存」で受けられる
- 会計ソフトで、日々の記帳を大きく自動化できる
農家の確定申告は、最初の仕組みづくりさえ終われば、翌年以降はぐっと楽になります。期限を過ぎると青色申告ができない年も出てしまうので、申請書の提出期限だけは早めに確認しておきましょう。今年こそ青色申告に切り替えて、節税と経理の効率化を両方手に入れてください。
▼出典(一次情報)
- 国税庁 No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
- 国税庁 No.2072「青色申告特別控除」
- 所得税法 第41条/国税庁 法令解釈通達(農産物の収穫基準)
- 国税庁 A1-8「所得税の青色申告承認申請手続」
- 国税庁「確定申告書等の様式・手引き等」
- 国税庁 No.5408・中小企業庁「少額減価償却資産の特例」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は、最寄りの税務署または税理士にご相談ください。


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