「役員報酬は、社長の自分が好きなときに好きな額を取れる」と少しでも思っているなら、要注意です。実は役員報酬には細かいルールがあり、決め方を間違えると余計な税金がかかることすらあります。
この記事では、法人代表の私が役員報酬の決め方と節税の考え方を解説します。
- 役員報酬が給料と違う理由
- 損金にするための「定期同額給与」
- 賞与を出すなら「事前確定届出給与」
- 報酬額を決めるときのバランス
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太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
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役員報酬は従業員の給料とは別物
まず大前提として、役員報酬は従業員の給料とは扱いが異なります。従業員の給料は働いた分だけ柔軟に払えますが、役員報酬は原則として毎月同じ額でなければ経費に認められません。
もし自由に増減できると、利益が出た月に報酬を上げて法人税を不当に減らすといった操作ができてしまうからです。これを防ぐため、税法は損金(経費)にできる役員報酬の払い方を限定しています。
代表的な方法が、次に見る「定期同額給与」と「事前確定届出給与」です。裏を返せば、ルールどおりに払えばきちんと経費にできるということ。仕組みを一度理解すれば、毎年同じ流れで運用できるので法人化したばかりの段階では、まずこの2つの方法を押さえておけば十分です。
毎月の報酬は「定期同額給与」で決める
役員への毎月の報酬は、定期同額給与にするのが基本。これは、1か月以下の一定期間ごとに同じ額を支払う方法を指します。
金額を変えられるのは「期首から3か月以内」
定期同額給与の金額を見直せるのは、事業年度の開始(期首)から3か月以内に年1回が原則です。期の途中で「今年は利益が出そうだから報酬を上げよう」と増額しても、増えた分は損金に認められないおそれがあります。
そのため、農業法人では1年間の売上と利益をある程度見通したうえで、期首に報酬額を決めることが重要になります。なお、定期同額給与につき税務署への届出は不要です。
期の途中での変更が認められる例外もあります。役員の昇格・降格といった地位の変更や、経営状況の著しい悪化による減額などです。ただし「利益が出たから上げる」「節税のために下げる」といった理由は認められません。
決算の見通しとセットで考える
役員報酬は1年間固定されるため、設定額が高すぎると資金繰りを圧迫し、低すぎると個人の生活が苦しくなります。年間の収支計画とセットで考える必要があります。
法人の数字の見える化については農業法人の経理|設立直後に整える7つの基本も参考にしてください。
賞与を出すなら「事前確定届出給与」
「決算賞与のように、役員にもボーナスを出したい」。そんなときに使うのが事前確定届出給与です。あらかじめ支給日と金額を決めて税務署に届け出ておけば、役員賞与も損金にできます。ただし条件は厳格です。
- 届出の期限は「株主総会などの決議日から1か月以内」または「事業年度開始日から4か月以内」のいずれか早い方
- 届け出た支給日・金額どおりに支払うこと(1円でも違うと全額が損金不算入になり得る)
「思ったより利益が出なかったから減額する」が効かない点が、事前確定届出給与の難しさです。使う場合は、計画的な資金繰りが欠かせません。届け出た以上は支払う義務が生じるため、無理のない金額にとどめておくのが安全です。
報酬額は「会社」と「個人」のバランスで決める

役員報酬をいくらにするかは、節税の観点からも重要です。ポイントは、会社の税金と個人の税金・社会保険のバランスにあります。
| 役員報酬を上げると | 役員報酬を下げると |
|---|---|
| 会社の利益が減り法人税は軽くなる | 会社に利益が残り法人税は増える |
| 個人の所得税・住民税・社会保険料は増える | 個人の負担は軽くなる |
報酬を上げれば会社は得でも、個人の手取りはそれほど増えないこともあります。逆に下げすぎると生活が苦しくなります。「会社と個人、合わせていちばん負担が軽くなる水準」を探すのがコツです。
個人事業時代に家族へ払っていた給与との違いは、農家の専従者給与で節税する方法とあわせて読むと理解が深まります。
役員報酬を決めるための3ステップ
では、実際にどう金額を決めればよいのでしょうか。私が意識している手順を紹介します。
- 年間の利益を見通す:その年の売上・経費・補助金収入を見積もり、おおよその利益を把握する
- 生活に必要な額を確認する:個人として毎月いくら必要かを洗い出す
- 会社に残す利益とのバランスをとる:設備投資や納税資金として会社に残す分を考え、報酬額を調整する
この3つを、期首から3か月以内に決めきるのがポイントです。農業は天候や米価に収入が左右されるため、保守的に見積もっておくと、期中で資金繰りに困りにくくなります。
なお、役員報酬は社会保険料にも直結します。報酬を高くすれば、その分だけ健康保険・厚生年金の保険料も上がります。保険料は会社と本人で折半するため、報酬を上げると会社の保険料負担も増える点は見落とせません。
報酬額のシミュレーション例
イメージをつかむために、簡単な例で考えてみます。年間の利益(役員報酬を引く前)が600万円見込めるとします。
| 役員報酬(年) | 会社に残る利益 | 傾向 |
|---|---|---|
| 200万円 | 約400万円 | 会社に利益が残り法人税は増。投資余力は確保 |
| 400万円 | 約200万円 | 会社と個人でバランスをとる。標準的な設定 |
| 550万円 | 約50万円 | 個人の所得税・社会保険は増。会社の納税は最小 |
どれが正解という決まりはありません。設備投資を控えているなら会社に利益を残す、生活を安定させたいなら報酬を厚めにすると経営計画に合わせて選ぶのが現実的です。実際の最適額は税率や社会保険料率で変わるため税理士に試算してもらうと確実です。
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役員報酬は法人税の節税策の中心です。会社に残った利益には法人税がかかりますが、役員報酬として支払えば損金になり、その分だけ会社の課税対象は小さくなります。とはいえ払いすぎれば個人の負担が増えるため、結局は「会社と個人の合計でいくら残るか」を見て調整するのが最適解になります。農業のように年によって収入が大きく変わる業種ほど、毎年の見通しに合わせた設定が効いてきます。
役員報酬でやりがちな3つの失敗例
最後に、法人化したばかりの農家が陥りやすい失敗を3つ挙げておきます。
- 期の途中で安易に増額する:増えた分が損金に認められず、法人税が想定より重くなる
- 高く設定しすぎる:個人の社会保険料・所得税がふくらみ、手取りが思ったほど増えない
- 利益予測をせずに決める:天候や米価で収入が振れ、資金繰りが苦しくなる
どれも、年間の数字を見通さずに決めてしまうことが原因です。逆に言えば、利益の見通しさえ立てられれば、役員報酬は怖くありません。日々の数字を整える土台づくりは、会計ソフトの選び方を解説したガチで農家におすすめの会計ソフト5選もあわせてご覧ください。
まとめ|役員報酬は「期首に・同額で・計画的に」
農業法人の役員報酬で押さえるべきは、次の3点です。
- 毎月の報酬は定期同額給与にし、変更は期首から3か月以内に
- 賞与を出すなら事前確定届出給与を期限内に届け出る
- 金額は会社と個人のトータルの負担で考える
役員報酬は一度決めると1年間固定されるため、年間の利益予測がものを言います。その予測の精度を上げるには、日々の数字をリアルタイムで把握できる環境が欠かせません。役員報酬は「期首にいくらに設定するか」で1年が決まるため、判断材料となる損益の見通しを早く正確につかむことが、何より重要になります。
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※本記事は一般的な情報提供であり、役員報酬の適正額や税務上の取り扱いは個別事情で変わります。具体的な設定は、税理士などの専門家に確認することをおすすめします。


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