農業は法人化したほうがいいとは聞くものの「何からはじめればいいの?」って手が止まってしまいますよね。法人設立の費用は決して安くはありませんが、手順を理解すれば一つずつ進められます。この記事では、農業経営4年目の私が農業法人を作るための5つの手順を解説します。
- 農地を持てる「農地所有適格法人」の4つの要件
- 設立するための5ステップ
- 株式会社と合同会社の費用比較
- 設立した後に待ってる義務
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太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
3つの法人形態とは|組合法人 or 会社
農業法人には、会社(株式会社・合同会社)と農事組合法人があります。
| 形態 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 株式会社 | 信用度が高く、出資を集めやすい | 規模拡大・対外的な信用を重視したい |
| 合同会社 | 設立費用が安く、運営が柔軟 | 家族中心で小さく始めたい |
| 農事組合法人 | 農業者が共同で組織する形態 | 複数農家でまとまって経営したい |
家族経営の延長なら合同会社、取引や融資の拡大を見据えるなら株式会社という選び方が多い印象ですが、規模をどこまで広げたいかを軸に考えると迷いが減ります。なお、複数の農家が共同で機械や施設を持ち合って経営するなら、農事組合法人が選択肢になります。
TACHIFARM代表経営スタイルに合うものを選ぶことが運営のしやすさにつながります。
農業法人=農地所有適格法人 とは限らない
農地所有適格法人(のうちしょゆうてきかくほうじん)とは、農地を所有・借り受けて農業を行える法人のこと。まず押さえたいのは、農業法人と農地所有適格法人は別物だという点です。農地を借りるだけなら一般の法人でも可能ですが、農地を所有して経営したいなら、農地所有適格法人の4つの要件を満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 法人形態 | 株式会社(非公開)・持分会社・農事組合法人のいずれか |
| 事業 | 主たる事業が農業(関連事業を含む) |
| 構成員・議決権 | 農業関係者が総議決権の過半数を占める |
| 役員 | ・役員の過半数が農業に常時従事する・役員または重要な使用人のうち1人以上が農作業に年間60日以上従事 |
この4つは設立のときだけでなく、取得後も継続して満たす必要があります。法人化を迷っている段階の方は、農家の法人化のメリット・デメリットと判断基準で法人化すべきかを確認しておきましょう。
法人を設立するための5つのステップ
設立手続き自体は、会社法にもとづく一般の会社設立と同じ流れです。順番に見ていきます。
商号(社名)、事業目的、本店所在地、出資額、役員などの基本事項をまとめたものが定款です。農地所有適格法人を目指すなら、事業目的に農業を据え、4つの要件を満たす構成にします。
株式会社は、作成した定款を公証役場で認証してもらいます。合同会社では、この認証は不要です。電子定款にすれば、紙の定款で必要な収入印紙代4万円を節約できます。
決めた出資額を、発起人の口座へ払い込みます。払い込みを証明する書類は、後の登記で必要になります。
法務局へ設立登記を申請します。登記された日が会社の設立日です。登録免許税がかかり、金額は会社の形態で変わります。
登記後は、税務署・都道府県・市町村への開業届や、農地を扱う場合の農業委員会への手続きを進めます。農地所有適格法人は、毎事業年度の終了後3か月以内に農業委員会へ事業状況を報告する義務がある点も覚えておきましょう。
株式会社と合同会社の費用はどう違う?
設立費用の中心は、登録免許税と定款関連の費用です。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 15万円〜 | 6万円〜 |
| 定款認証 | 必要(数万円) | 不要 |
| 信用・対外的印象 | 高い | 株式会社よりは控えめ |
| 費用の目安 | 20万〜30万円程度 | 10万円前後〜 |
費用だけ見れば合同会社が割安ですが、取引先や金融機関からの信用を重視するなら株式会社が選ばれやすいです。安さだけで決めず、経営の方向性で選ぶことが大切です。
設立のときに必要な5つの書類


手続きをスムーズに進めるために必要な5つの書類を早めにそろえておきましょう。形態によって多少異なりますが、主なものは次のとおりです。
- 定款(株式会社は公証役場の認証が必要)
- 発起人・役員の印鑑証明書
- 出資金の払い込みを証明する書類
- 設立登記申請書(法務局へ提出)
- 法人の実印と印鑑届出書
農地を所有・利用する場合は、これに加えて農業委員会への許可申請や届出が必要になります。会社設立と農地の手続きは窓口が別なので、並行して進める段取りを意識すると無駄がありません。
法人がやるべき3つの事務作業
法人を作ると、個人事業の時代にはなかった事務がいくつも増えます。代表的なのが次の3つです。
- 社会保険(健康保険・厚生年金)への加入
- 法人としての複式簿記による経理・決算
- 役員報酬の設定や源泉徴収、各種申告
これらを手作業でこなすのは、農作業と並行するとかなりの負担です。設立直後にやるべきことは農業法人の経理|設立直後に整える7つの基本でも詳しく解説しています。
設立後にやる届出とスケジュール
登記が終わったら、各役所への届出が続きます。期限が短いものもあるため、一覧で押さえておきましょう。
| 提出先 | 主な届出 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 税務署 | 法人設立届出書・青色申告の承認申請書 | ・法人設立後2か月以内・青色の申請は3か月経過日と1期決算日の早い方の前日まで |
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金の新規適用届 | 設立後5日以内 |
| 都道府県・市町村 | 法人設立届出書(地方税) | 自治体が定める期限内 |
| 農業委員会 | 農地の権利取得の手続き・事業状況報告 | 取得時/毎事業年度後3か月以内 |
届出は種類が多く、提出先もバラバラなので、チェックリストを作って一つずつ消し込んでいくと抜けがありません。
いつ法人化する?3つのタイミングについて


「設立できるか」を考えることと同じくらい大切なのが「いつ設立するか」です。一般に、次のような状況は法人化を後押しします。
- 農業所得が大きくなり、個人の税負担が重く感じてきた
- 規模を広げ、農地を新たに取得・集積したい
- 従業員を雇い、対外的な信用を高めたい
私自身も、所得が一定の水準を超え、個人での税負担が重くなったタイミングで法人化を決めました。数字の裏づけをもって判断することが、後悔しない法人化の第一歩になります。
農業法人の設立でよくある質問
まとめ:農業法人の設立は「要件・手順・設立後」をセットで
農業法人を作るときの要点は、次の3つです。
- 農地を持つなら農地所有適格法人の4要件を満たす
- 設立は会社法の流れに沿って5ステップで進める
- 設立後は社会保険・経理・報告義務が増えると心得る
増える事務を効率化するなら、複雑な経理に強い会計ソフトの活用が近道です。マネーフォワードクラウドで経理を自動化すると、銀行・カードとの連携で記帳や決算の負担を大きく減らせます。設立直後は農作業と事務が一気に押し寄せる時期だからこそ、最初に仕組みを整えておくと後がぐっと楽になります。
どのソフトが農業に合うかはガチで農家におすすめの会計ソフト5選も参考になります。
※本記事は一般的な情報提供であり、設立要件や費用は個別事情・年度で変わります。具体的な手続きは、司法書士・行政書士・農業委員会などの専門窓口に確認することをおすすめします。










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