
産地生産基盤パワーアップ事業って自分の農場でも使えるの?



要件が複雑で何から調べればいいかわからない…
こういった疑問を持つ農業者の方は多いです。この記事ではTACHIFARM代表で農業歴4年の私が産地生産基盤パワーアップ事業の要件についてわかりやすく解説します。
- 産地生産基盤パワーアップ事業の補助率・補助上限額の仕組み
- 対象者の要件と「産地計画」に位置づけられるための条件
- 強い農業づくり総合支援交付金との違い
- 自己負担割合の考え方
- 申請から交付までの具体的な手順



前向きな農家さんの少しでも役に立てれば幸いです!
- 本記事の情報は2025年4月時点の農林水産省公表情報をもとに作成しています。補助率・要件・予算額は年度ごとに変更される場合があります。申請前には必ず都道府県担当窓口または農林水産省の最新通知を確認してください。


産地生産基盤パワーアップ事業の補助額の上限・補助率
補助率1/2・上限2〜3億円の仕組み
産地生産基盤パワーアップ事業の補助率は、原則として補助対象経費の1/2以内です。つまり、1億円の施設を整備する場合、最大5,000万円が補助され、残りの5,000万円(1/2以上)は自己負担となります。
| 取組の種類 | 補助上限額 |
|---|---|
| 通常の整備事業 | 1件あたり2億円 |
| 産地支援取組を含む場合 | 1件あたり3億円 |
「産地支援取組」とは、輸出事業者等との連携や加工・業務用など新市場獲得につながる取組を指します。単純な機械導入だけでなく、新市場開拓の要素が計画に含まれると上限額が1億円引き上げられる仕組みです。
仮に3億円の大型農産物集出荷施設を建てるなら、最大1.5億円が補助される計算になります。残り1.5億円を自己資金・融資でまかなう必要がありますが、それでも資金調達の負担は大幅に軽減できます
具体的な補助対象経費の例としては次のものが挙げられます。
- 農業用ハウス(鉄骨ハウス・連棟ビニールハウスなど)の新設・改修
- 選果機・調製機・集出荷施設の整備
- 農業機械のリース導入・取得(トラクター、田植機、コンバイン等)
- 生産資材の導入(育苗資材、防除資材等)
- 果樹園・茶園の改植・新植



農業機械のリース導入・取得や生産資材の導入も補助率は1/2以内が基本です
強い農業づくり総合支援交付金との違い
同じく農林水産省が所管する農業補助金として「強い農業づくり総合支援交付金」があります。両者は混同されやすいですが、目的・対象・スキームが異なります。
| 比較項目 | 産地生産基盤パワーアップ事業 | 強い農業づくり総合支援交付金 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 収益力強化・産地の生産基盤強化・次世代継承 | 産地基幹施設(集出荷施設等)の整備 |
| 対象 | 農業者・農業者グループ・農協等(産地計画に位置づけられた者) | 農協・農業法人等 |
| 補助率 | 原則1/2以内 | 原則1/2以内(タイプにより異なる) |
| 計画要件 | 産地パワーアップ計画への位置づけが必須 | 実施計画の策定が必要 |
| 窓口 | 都道府県経由で国へ申請 | 都道府県経由で国へ申請 |
| 特徴 | 個別農業者レベルの機械・施設導入まで対応 | 集出荷・加工施設など産地インフラ整備に強み |
どちらも”産地を強くする”補助金ですが、産地生産基盤パワーアップ事業のほうが個別農家レベルの機械・施設導入にも対応しており、使いやすい面があります。一方、集出荷施設のような産地共有インフラには強い農業づくり総合支援交付金のほうが向いていることもあります


対象となる施設・設備の具体例
実際にどのような施設・設備が補助対象になるのか、具体例を挙げます。
野菜・花卉産地の場合
- 鉄骨連棟ハウス(例:延べ床面積3,000㎡、整備費約6,000万円 → 補助額最大3,000万円)
- 養液栽培システムの導入
- 防霜ファン・遮光資材・防虫ネット等の生産資材
果樹産地の場合
- 果樹園の改植(高品質品種への転換)
- 収穫・選果の省力化機械
- 高密植栽培に対応した棚・支柱設備
水田・畑作産地の場合
- 大型コンバイン・トラクターのリース導入
- 乾燥調製施設・カントリーエレベーター
- スマート農業機器(ドローン防除機、自動操舵システム等)
輸出・新市場獲得対策(上限3億円適用の場合)
- 輸出向け国際水準のパッキングハウス(例:整備費2億円 → 補助額最大1億円)
- 低温貯蔵施設・CA貯蔵庫
- 加工・業務用向け洗浄・カット施設
産地生産基盤パワーアップ事業の対象者とは


産地計画の策定が必要
産地生産基盤パワーアップ事業の最大の特徴は、個別農家が単独で申請できない点です。この事業を活用するためには、まず地域に「産地パワーアップ計画(収益性向上タイプ)」または「生産基盤強化対策に係る産地計画」が存在することが前提となります。
この計画は、次のいずれかの組織が作成します。
- 地域農業再生協議会(市町村・JA・農業関連業者等で構成)
- 地域担い手育成総合支援協議会
- 果樹産地協議会
計画には「収益性向上の成果目標(単収・販売額の何%増加を何年以内に達成するか)」「対象面積の要件」等が定められており、これに適合した取組主体(農業者・農業法人等)がはじめて補助を受けられます。



まず地元のJAや市町村農政担当窓口に相談することが第一歩です
申請できる農業者・組織の種類
産地パワーアップ計画に「取組主体」として位置づけられれば、規模の大小を問わずさまざまな農業者・組織が対象になります。
- 個人農業者(認定農業者・認定新規就農者等)
- 農業者グループ(任意組合・生産組合等)
- 農業法人(株式会社・農事組合法人等)
- 農業協同組合(JA)
- 集落営農組織
収益性向上対策では「成果目標の基準を満たすこと」「面積要件(一定の作付面積以上)を満たすこと」の2点が主な採択要件です。
生産基盤強化対策では、施設・農地を次世代に継承するための整備・改修が対象となるため、「5年以内に継承者へ譲渡する計画があること」が追加要件として求められます。
NG条件
以下に該当する場合は支援対象外となる可能性が高いです。事前に都道府県窓口で確認してください。
- 産地パワーアップ計画に取組主体として位置づけられていない農業者・法人
- 成果目標の設定が計画基準を下回っている、または設定されていない場合
- 施設園芸エネルギー転換枠において、化石燃料加温設備(重油ボイラー等)を有さないハウス(この枠では対象外)
- 生産基盤強化対策で、継承計画が5年超または具体的な継承先が未定の場合
- 補助対象経費が交付規程に定める下限額を下回る場合
- 既に他の国庫補助事業と重複して補助を受けている設備・施設
産地生産基盤パワーアップ事業の自己負担割合とは


補助率が1/2以内ということは、必ず補助対象経費の1/2以上を自己負担する必要があります。
| 整備事業の総費用 | 補助額(最大1/2) | 自己負担(最低1/2) |
|---|---|---|
| 1,000万円 | 500万円 | 500万円 |
| 5,000万円 | 2,500万円 | 2,500万円 |
| 1億円 | 5,000万円 | 5,000万円 |
| 2億円(上限) | 1億円 | 1億円 |
| 3億円(産地支援取組含む) | 1億5,000万円 | 1億5,000万円 |
自己負担分の調達方法として一般的に活用されるのが以下の資金調達手段です。
自己資金との組み合わせ
農業者の手元資金・農業法人の内部留保を充当します。
農業近代化資金・農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)との併用
農林漁業金融公庫や農協系金融機関が提供する農業専用融資を組み合わせることで、手元資金を抑えながら大型整備が可能になります。
自己負担が1/2以上と聞くと大きく感じますが、スーパーL資金等の低利融資と組み合わせることで、初期の現金負担を抑えながら大型施設整備が実現できます。
産地生産基盤パワーアップ事業の申し込み手順6ステップ


STEP 1:地元のJA・市町村農政窓口への事前相談
まず、地元のJAや市町村の農政担当窓口に「産地生産基盤パワーアップ事業を使いたい」と相談します。地域に産地パワーアップ計画がすでにあるか、自分の取組が対象になるかを確認するのがこの段階の目的です。計画がない場合は計画策定から始める必要があります。
この最初の相談を飛ばして書類を自分で揃えようとすると、後で「計画に位置づけがない」と判明して振り出しに戻るケースがあります。必ず最初に窓口相談を!
STEP 2:産地パワーアップ計画への位置づけ確認・成果目標の設定
地域農業再生協議会等と連携し、自分の取組が産地パワーアップ計画の「取組主体」として位置づけられるよう調整します。この段階で、収益性向上の成果目標(例:トマト単収を現状比20%増、3年以内)と対象面積を確定させます。
STEP 3:取組主体事業計画の作成
補助対象となる機械・施設の整備内容、整備費用の見積もり、成果目標の達成に向けたスケジュール等を記載した「取組主体事業計画」を作成します。施設の場合は建設業者・農機メーカーから相見積もりを取得し、適正な事業費を算出します。
STEP 4:協議会経由で都道府県・国へ事業計画を提出
作成した取組主体事業計画を地域農業再生協議会に提出。協議会が都道府県を通じて農林水産省(地方農政局等)へ計画を提出し、事業計画の承認・割当内示(採択通知)を受けます。
STEP 5:採択後に交付申請
事業計画が採択されたら、補助金の交付申請を都道府県経由で行います。交付決定を受けるまでは原則として事業(施設工事・機械購入等)に着手できないため、スケジュール管理が重要です。
STEP 6:事業実施・実績報告・補助金交付
交付決定後に施設整備・機械導入等の事業を実施し、完了後に実績報告書を提出。検査・確認を経て補助金が交付されます。また、事業完了後も成果目標の達成状況について報告義務があります。
STEP 4の採択から交付決定まで数ヶ月かかるケースが多いです。施設整備を特定の時期(例:春先の定植前)に完了させたい場合は、前年度から逆算してSTEP 1の相談を開始することが必要です
まとめ
産地生産基盤パワーアップ事業のポイントを表にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 産地生産基盤パワーアップ事業 |
| 所管省庁 | 農林水産省 |
| 補助率 | 補助対象経費の1/2以内 |
| 補助上限額 | 1件あたり2億円(産地支援取組を含む場合3億円) |
| 自己負担割合 | 1/2以上 |
| 対象者 | 産地パワーアップ計画に位置づけられた農業者・農業法人・農協等 |
| 計画要件 | 地域農業再生協議会等が策定する産地パワーアップ計画への位置づけが必須 |
| 成果目標 | 収益性向上(単収・販売額の向上)またはほ場・施設の次世代継承 |
| 申請窓口 | 地元JA・市町村 → 都道府県 → 国(農林水産省・地方農政局) |
| 対象設備例 | ハウス・選果機・農業機械・改植・集出荷施設・輸出対応施設 等 |
| NG条件 | 計画未位置づけ・成果目標基準未達・継承計画なし・重複補助 等 |
| 他補助金との違い | 個別農家レベルの機械・施設導入にも対応(強い農業づくり交付金は産地インフラ整備中心) |
産地生産基盤パワーアップ事業は、補助率1/2・上限最大3億円という農業分野では大型の補助金です。ただし、単独では申請できず産地パワーアップ計画への位置づけが絶対条件。まず地元JA・市町村の農政窓口への相談から動き始めることが採択への最短ルートです。
申請書類・要項へのダイレクトリンク
申請に必要な書類・要項は下記リンクから直接入手できます。申請書類は年度ごとに更新されるため、必ず最新版をご使用ください。
| 書類・情報の種類 | 入手先 |
|---|---|
| 農林水産省|産地生産基盤パワーアップ事業 | 農林水産省公式ページ |
| 農林水産省|強い農業づくりの支援(全般) | 農林水産省公式ページ |
| eMAFF(農林水産省電子申請) | 農林水産省公式ページ |
申請窓口: 地元JA・市町村 → 都道府県 → 農林水産省地方農政局
⚠️ 申請には産地パワーアップ計画への位置づけが必須です。まず地元JAまたは市町村農政窓口に相談してください。










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