「補助金で機械を買えた」と喜んだのもつかの間、翌年の確定申告で「補助金にも税金がかかります」と言われて青ざめる。これは、補助金を使った農家が意外とつまずくポイント。
実は補助金は、受け取った年の収入として課税の対象になり、せっかくの支援に税金がかかってしまうのです。これを防ぐのが「圧縮記帳」や「総収入金額不算入」という仕組みです。この記事では、現役の米農家として、補助金の税金を抑える経理の方法を解説します。
- 補助金に税金がかかる理由
- 圧縮記帳の仕組み
- 個人と法人で違う扱い
- 申告で必要な手続き
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太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
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なぜ補助金に税金がかかるのか

補助金はもらえるとうれしいものですが、税金は収入として扱われます。つまり、補助金を受け取った年は、その分だけ所得が増え、課税の対象になるのです。
たとえば、500万円の機械を、半額の250万円の補助金で買ったとします。この250万円は、その年の収入に加わります。何も対策をしないと、補助金に対しても所得税や法人税がかかり、「税金を払うために、別のお金を用意しないといけない」という事態になりかねません。
補助金そのものの探し方は農家向け補助金20選を目的別に徹底比較を参考にしてください。
圧縮記帳とは?課税を「先送り」する仕組み
そこで使えるのが、圧縮記帳です。これは、補助金で固定資産(トラクターやビニールハウスなど)を買ったとき、その資産の帳簿価額を補助金の分だけ減らし、同額を経費(圧縮損)として計上する方法です。
わかりやすくいうと、「補助金にかかる税金を、その年に一度に払わなくて済む」仕組みだと理解すれば十分です。ただし、圧縮記帳は税金を免除するのではなく「先送り(繰り延べ)」する制度です。次の章で、そのからくりを見ていきます。
圧縮記帳は「免除」ではなく「繰り延べ」

なぜ先送りなのかというと、圧縮した分だけ、その後の減価償却費が減るからです。
固定資産は、減価償却によって毎年少しずつ経費にしていきます。圧縮記帳で帳簿価額を下げると、その後に経費にできる減価償却費も小さくなります。つまり、補助金を受けた年は税負担が軽くなるものの、翌年以降は経費が減るぶん、税負担がやや増えるのです。
トータルで見れば払う税金の総額は大きく変わりませんが、補助金を受けた年に資金が出ていくのを防げる点が経営をしていく上で大きなポイント。設備投資の直後はお金が必要な時期なので、この資金繰りの効果は大きいといえます。減価償却の基本は、農機具の減価償却|耐用年数と計算方法・節税のやり方で解説しています。
数字で見る圧縮記帳の効果
イメージをつかむために、500万円の機械を250万円の補助金で買った例で考えます。
| 区分 | 何もしない場合 | 圧縮記帳・不算入を使う場合 |
|---|---|---|
| 補助金250万円 | その年の収入に算入 | 収入に算入しない |
| 機械の取得価額 | 500万円 | 圧縮後250万円 |
| その年の課税 | 補助金分にも課税 | 補助金分の課税を回避 |
| 翌年以降の減価償却 | 500万円が基礎 | 250万円が基礎(経費は減る) |
ポイントはいちばん下の行で、補助金を受けた年の税金は抑えられますが、その代わり翌年以降に経費にできる減価償却費は減ります。「今、税金を払わない」代わりに「将来、少しずつ取り戻される」という関係になっているのです。
圧縮記帳を使うメリット・デメリット
この制度を使うべきか迷ったときの判断材料を整理します。
- メリット:補助金を受けた年の税負担を抑え、資金繰りに余裕が生まれる
- メリット:大きな設備投資をした直後の、資金が苦しい時期を乗り切りやすい
- デメリット:翌年以降の減価償却費が減り、その分の税負担は将来に回る
- デメリット:経理が複雑になり、明細書の作成など手間が増える
多くの場合、補助金を受けた年の負担を軽くできるメリットのほうが大きく、使う価値があります。ただし、判断に迷うときは税理士に相談するのが確実です。
圧縮記帳は法人だけの制度!個人と法人での違いとは
もっとも間違えやすいポイントで、「圧縮記帳」という言葉は法人税の制度で、個人事業の農家は圧縮記帳を使えません。
個人事業の場合は、代わりに「国庫補助金等の総収入金額不算入」という特例を使います(国税庁)。名前は違いますが、補助金で固定資産を取得した場合に、その補助金分を収入に算入しないことで課税を繰り延べる、という効果は圧縮記帳とほぼ同じです。
| 区分 | 使う制度 | 効果 |
|---|---|---|
| 法人 | 圧縮記帳 | 圧縮損を計上して課税を繰り延べ |
| 個人事業 | 総収入金額不算入の特例 | 補助金分を収入に入れず課税を繰り延べ |
「うちは個人だから圧縮記帳」と思い込むと、申告書類を間違えるおそれがあります。自分が個人か法人かで、使う制度と書類が変わると覚えておきましょう。
総収入金額不算入を適用する3つの条件

この特例は、どんな補助金でも無条件に使えるわけではありません。主な条件は次のとおりです。
- 国や地方公共団体などから交付される補助金等であること
- その補助金を、交付の目的に合った固定資産の取得や改良に充てたこと
- 補助金を受けた年内に、対象の資産を取得していること(原則)
たとえば、機械導入の補助金で実際に機械を買った場合などが典型例です。補助金を運転資金や消耗品に使った場合は、この特例の対象にならない点に注意してください。機械導入の補助金については、新規就農の機械導入補助金の要件を徹底解説もあわせてご覧ください。
総収入金額不算入の申告で必要な手続き
この特例を使うには、確定申告の際に明細書の添付が必要です。個人事業なら「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」、法人なら圧縮額の損金算入に関する明細書を添えます。
手続き自体は様式に沿って書けば難しくありませんが、補助金の額や対象資産の金額を正確に記入する必要があります。金額を間違えると、税額にも影響します。補助金を受けた年は、必ずこの処理を忘れないようにしましょう。
補助金の経理のよくある3つの質問
わかりにくい経理は会計ソフトで効率的に

補助金の経理は、通常の取引より複雑です。受け取った補助金の記録、固定資産の登録、圧縮や不算入の処理、その後の減価償却まで、一連の流れを正確に管理する必要があります。これを手作業でこなすのは、ミスのもとです。
そこで頼りになるのが、クラウド会計ソフトです。マネーフォワードクラウドで補助金や固定資産の数字を正確に管理すると、固定資産台帳と連動して減価償却まで自動で計算され、複雑な会計処理の負担を減らせます。法人の決算や、複数の補助金を扱う規模拡大局面ほど、その効果は大きくなり、本業の農業に集中しながら経理を行えます。
「個人のまま」と「法人化」、自分はどっちが得?
「うちは個人のままでいいのか、法人化したほうが得なのか」——ここまで読んで気になった方へ。補助金を活かして規模を広げる農家ほど、法人ならではの選択肢が効いてきます。ただし損得は売上・所得・家族構成で人それぞれ。
経営サポートプラスアルファの60分無料相談で「自分の場合」を試算すれば、社会保険まで含めた損得が数字でわかります。設立代行は実質0円、最短1営業日対応。
まとめ:補助金の税金は「圧縮記帳・不算入」で抑える
補助金の経理で押さえるべきは、次の3点です。
- 補助金は受け取った年の収入として課税の対象になる
- 固定資産を買ったなら、圧縮記帳(法人)・総収入金額不算入(個人)で課税を繰り延べられる
- 複雑な経理は税理士に相談か会計ソフトの導入で対応する
補助金を「もらって終わり」にせず、受けた後の経理まで見据えることで、手元の資金を守れます。申請のときに頑張って勝ち取った補助金だからこそ、出口の処理まで丁寧に行いたいものです。
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