「インボイスに登録はしたけれど、結局いくら消費税を納めるの?」
出荷先に求められて登録したものの、納税額が読めず不安な農家は多いはずです。実は、登録を機に課税事業者になった人には、納める消費税を大きく減らせる「2割特例」という負担軽減策があります。ただし期限があり、知らないと損をしてしまうことも…
この記事では、農業経営4年目で日商簿記2級を取得した私が、インボイスの2割特例の中身と使い方についてわかりやすく解説します。
- 2割特例って何?
- 2割特例が対象になる人・ならない人
- 2割特例で納税額がどれだけ減るのか
- 2割特例はいつまで使えるか・使い方
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太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
そもそも2割特例とは?
2割特例とは、インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった人を対象に、納める消費税を売上にかかる消費税額の2割に抑えられる特例です(国税庁)。
消費税は通常、受け取った消費税ー支払った消費税で計算します。しかし2割特例を使えば、支払った消費税を細かく集計しなくても、売上の消費税の2割だけ納めればよいことになります。計算が簡単で、納税額も少なくなる、というのが大きな利点です。
そもそもインボイス登録をすべきか迷っている段階の方は、農家のインボイス登録は必要?状況別に完全解説を先に読んでおくと、全体像がつかめます。
インボイス制度が農家に関係する理由
米や野菜を、JA以外の直売所や飲食店、法人に売っている農家は、取引先から「インボイスを発行してほしい」と求められることがあります。インボイスを出すには課税事業者になる必要があり、そうなると消費税の納税義務が生じます。「税金が増えるなら登録したくない」という気持ちもわかりますが、登録しないと取引先が仕入税額控除を受けられず、取引に影響が出ることもあります。
売り先によって登録の必要性は変わる

一方で、売り先がJAや消費者だけの農家は、必ずしも登録が必要とは限りません。インボイスを求めてくるのは、消費税の計算で仕入税額控除を使いたい事業者(飲食店や法人など)だからです。自分の売り先が誰かによって、登録の必要性は変わります。
まずは取引先がインボイスを求めているかを確認し、そのうえで、登録するなら2割特例で負担を抑えるという順番で考えると判断しやすくなります。なお、買い手側には登録していない農家からの仕入れでも一定割合を控除できる経過措置があり、これも年々縮小していく予定です。
2割特例の対象になる人・ならない人
2割特例は、すべての人が使えるわけではありません。対象になるかどうかを整理します。
| 区分 | 2割特例 |
|---|---|
| インボイスを機に免税→課税になった人 | 使える |
| 基準期間の課税売上が1,000万円超の人 | 使えない |
| もともと課税事業者だった人 | 使えない |
ポイントは、「インボイス制度がなければ、本来は免税事業者だった人」が対象だということです。2年前(基準期間)の課税売上が1,000万円を超えるような規模の農家は、対象外になります。
自分が対象かどうか分からないときは、税務署や税理士に確認しましょう。
どれくらい納税額が減るのか
イメージをつかむために、簡単な例で考えます。売上にかかる消費税が年間50万円で、経費の消費税が10万円だったとします。
| 計算方法 | 納める消費税の目安 |
|---|---|
| 2割特例 | 売上50万円 × 2割 = 10万円 |
| 本則課税(経費の消費税が10万なら) | 40万円(売上50万円ー経費10万円) |
2割特例を使えば、売上の消費税の2割、この例なら10万円だけで済みます。経費の消費税が少ない米農家ほど、本則課税より有利になりやすいのが特徴です。納税の負担を予測しやすくなる点も、経営にとっては安心材料になります。
米作りは、機械の更新がない年は大きな経費の消費税が出にくいため、2割特例の恩恵を受けやすい傾向があります。逆に、大きな設備投資をした年は本則課税のほうが有利になることもあるので、年ごとに見比べるのが得策です。
【申告は2026年分まで】2割特例が使える期間について
ここが最重要ポイントです。2割特例は期間限定の措置です。
対象となるのは、令和5年(2023年)10月1日から令和8年(2026年)12月31日までの課税期間です(国税庁)。個人事業の農家であれば、2023年分(10〜12月)から2026年分の申告まで、計4回が対象になります。
2027年以降は特例を使えません。期限が近づいたら、次の計算方法を早めに検討しておく必要があります。
【手続きはカンタン】2割特例は確定申告のときにできる
2割特例のうれしい点は、手続きが簡単なことです。
- 事前の届出は不要
- 確定申告書に「2割特例を適用する」と記載
- 2年間の継続適用などのしばりもなし
つまり、申告のたびに「今年は2割特例を使うか、別の方法にするか」を選べます。簡易課税を届け出ている場合でも、有利なほうを選択できます。計算してみて、得なほうを選ぶのが賢い使い方です。
確定申告全体の流れは、農家の確定申告のやり方|青色申告で得する完全ガイドで解説しています。
2割特例と簡易課税はどう違う?
「簡易課税と何が違うの?」とよく聞かれます。両者の違いを整理します。
| 項目 | 2割特例 | 簡易課税 |
|---|---|---|
| 事前の届出 | 不要 | 必要(原則、前年末まで) |
| 適用期間 | 2026年12月末までの期間限定 | 期限なし |
| 継続のしばり | なし(毎年選べる) | 2年間の継続が必要 |
| 納税額 | 売上消費税の2割 | 業種ごとのみなし仕入率で計算 |
食用の農産物を売る場合、簡易課税のみなし仕入率は高めに設定されており、結果として2割特例と近い負担になることもあります。ただし2割特例のほうが届出不要で、毎年柔軟に選べる点が手軽です。どちらが得かは売上や経費の状況で変わるため、両方で試算してみるのが確実です。
2割特例が終わったらどうする?
2割特例は令和8年(2026年)分で終了します。その後の納税方法は、次の3つから選べます。
| 方法 | 計算のしくみ | 向いている人・特徴 | 対象期間 |
|---|---|---|---|
| 本則課税 | 受け取った消費税から、支払った消費税を差し引いて計算する。 | 経費(設備投資など)が多い農家ほど有利になりやすい。 | 期限なし |
| 簡易課税 | 届出をすれば、売上だけで納税額を計算できる(業種ごとのみなし仕入率を使用)。 | 経費の集計をせず、手軽に計算したい人向け。事前の届出が必要。 | 期限なし |
| 3割特例 | 納める消費税を、売上にかかる消費税額の3割にできる。 | インボイスを機に課税事業者になった個人事業の農家が対象。(基準期間の課税売上高1,000万円以下など要件あり) | 個人事業者の令和9年分・令和10年分(2027・2028年分) |
※「3割特例」は個人事業者のみが対象で、法人は使えません。出典:国税庁「令和8年度税制改正特集」
申告と記帳には会計ソフトで備える

2割特例で計算が簡単になるとはいえ、売上にかかる消費税を正しく把握するには、日々の売上をきちんと記録しておく必要があります。消費税の申告は、所得税の確定申告とあわせて行うため、記帳の仕組みを整えておくことが近道です。
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会計ソフトの選び方に迷う方は、農家の青色申告とクラウド会計ソフトの選び方もあわせてご覧ください。
2割特例のよくある3つの質問
最後に、農家からの多くの質問にお答えします。
まとめ|売上や税金の管理は会計ソフトで自動化
農家の2割特例で押さえるべきは、次の3点です。
- インボイスを機に課税事業者になった人は納税を売上消費税の2割にできる
- 使えるのは令和8年(2026年)9月30日まで
- 届出は不要で、確定申告書に記載するだけ。
まずは自分が対象になるかを確認し、対象なら忘れずに申告書で適用しましょう。
「登録したけれど不安」という方こそ、記帳の習慣をつけておけば、特例終了後に本則課税や簡易課税へ切り替えるときもスムーズです。やよいの青色申告オンラインなら初年度無料で銀行口座やクレジットカードとの連携や領収書の自動仕訳、確定申告書類の作成ができます。
今のうちに、自分の経営に合った収支管理方法を見極めておきましょう。


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