「農業で独立したけど、開業届って難しそう」と身構えていませんか。
実は、農業の開業届は用紙1枚、慣れれば15分ほどで書けるシンプルな手続きです。しかし、開業届を出さないまま営農を続け、いざ確定申告で「青色申告にしておけばよかった」と後悔する人は少なくありません。
ここでは、現役農家が開業届の書き方と青色申告承認申請書の提出方法についてわかりやすく解説します。
- 開業届を出すべき3つの理由
- 開業届の書き方(農業の場合)
- 一緒に出すべき青色申告の申請書とは
- 提出期限と提出方法
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太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
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開業届とは?提出すべき3つの理由

開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。個人で事業を始めたことを税務署に知らせる書類で、農業を個人で営む場合も対象になります。
「出さなくても罰則はない」と言われることもありますが、ここでは開業届を出す3つのメリットを紹介します。
- 青色申告ができるようになり、最大65万円の特別控除を受けられる
- 屋号での銀行口座開設や、各種申請で事業者と認められやすくなる
- 経営者としての区切りになり、帳簿づけの意識が高まる
とくに大きいのが青色申告です。これを使うかどうかで、納める税金が大きく変わります。青色申告の全体像は農家の青色申告とクラウド会計ソフトの選び方で解説しています。
農家の場合の開業届の書き方
開業届は、国税庁のサイトや税務署で入手できます。記入欄は多くありませんが、農家がつまずきやすい項目を中心に見ていきます。難しく考える必要はありません。
| 記入欄 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 納税地 | 自宅の住所を書くのが一般的 |
| 職業 | 「農業」と記入 |
| 屋号 | 任意。農園名やブランド名があれば記入 |
| 所得の種類 | 「事業所得」を選択 |
| 開業日 | 実際に農業を始めた日を記入 |
職業欄は「農業」、所得の種類は「事業(農業)所得」と押さえておけば十分です。屋号は空欄でも問題なく、後から決めることもできます。
書く前に準備しておく4つのもの
スムーズに書くために、手元に次の4つのものをそろえておきましょう。
- マイナンバーが分かるもの(マイナンバーカード)
- 本人確認書類
- 屋号を使う場合は、その名称
- 開業日のメモ(実際に農業を始めた日)
開業届の用紙は、税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のサイトからダウンロードもできます。会計ソフトの開業書類作成サービスを使えば、案内に沿って入力するだけで完成し、記入漏れも防げます。
開業届と一緒に出したい!青色申告承認申請書の3つの利点
開業届とあわせて、ぜひ提出したいのが「所得税の青色申告承認申請書」です。これを出さないと、青色申告のメリットが受けられません。
青色申告には、次のような利点があります。
- 最大65万円の青色申告特別控除
- 赤字を翌年以降3年間繰り越せる
- 家族への給与を経費にできる
開業届だけ出して青色申告の申請を忘れると、節税の入り口に立てないことになります。家族への給与の扱いは農家の専従者給与で節税する方法で詳しく解説しています。
どちらを選ぶべき?青色申告と白色申告のちがい
確定申告には「青色」と「白色」があります。違いを整理します。
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 特別控除 | 最大65万円 | なし |
| 帳簿 | 複式簿記など | 簡易な記帳 |
| 家族への給与 | 経費にできる | 制限あり |
| 申請 | 事前の承認申請が必要 | 不要 |
やよいの青色申告オンラインを使えば複式簿記の負担は大きく下がるため、これから始めるなら青色申告がおすすめです。最大65万円の控除は、税率にもよりますが年間で数万円から十数万円の節税につながることもあり、その効果は決して小さくありません。
提出期限と提出方法に注意
ここがいちばん大切なポイントです。期限を過ぎると、その年は青色申告ができません。
開業届の期限
開業届は、事業を始めた日から1か月以内に提出するのが原則です。
青色申告承認申請書の期限
青色申告承認申請書は、期限がより厳しいので要注意です。
- その年から青色申告したい場合:その年の3月15日まで
- 1月16日以降に開業した場合:開業日から2か月以内
この期限を1日でも過ぎると、青色申告は翌年からになります。開業届と青色申告承認申請書は同時に出すのが、出し忘れを防ぐいちばん確実な方法です。
3つの提出方法
提出先は、納税地を管轄する税務署です。方法は次の3つから選べます。
- 税務署の窓口へ持参する
- 郵送する
- e-Tax(電子申告)で提出する
令和7年(2025年)1月から、税務署は控えへの収受日付印の押なつを廃止しました。提出の証明が必要な場合は、e-Taxの受信通知を使うか、窓口で日付・税務署名入りのリーフレットを受け取れます。控えは、屋号での銀行口座開設や、融資・補助金の申請で「事業を営んでいる証明」として役立ちます。
開業届を出す前に知っておきたい2つの注意点

メリットの多い開業届ですが、出す前に確認しておきたい点もあります。
注意点①:失業給付(雇用保険の基本手当)との関係
会社を辞めて失業給付を受けている途中で開業届を出すと、「就職した」とみなされ、給付を受けられなくなる場合があります。前職を離れて就農する方は、ハローワークで取り扱いを確認しておきましょう。
注意点②:家族の扶養との関係
開業届そのものより、その後の所得の大きさによって、健康保険の扶養から外れる可能性があります。就農初期で所得が小さいうちは影響が出にくいものの、頭の片隅に置いておくと安心です。
開業届を出し忘れたら、どうなる?
「もう何年も農業をしているのに、開業届を出していなかった」というケースもあります。この場合でも、開業届はさかのぼって提出できます。ただし、青色申告承認申請書には厳密な期限があり、さかのぼって申告をすることはできません。気づいた時点で申請すれば、その年または翌年からの適用になります。
「まだ出していない」と気づいたら、できるだけ早く手続きするのが得策です。
農業の確定申告ならではのポイント
農業所得は、確定申告のうえで一般の事業所得とは少し扱いが異なります。青色申告をする場合、農業所得用の青色申告決算書を使うのが特徴です。
この様式には、米や野菜などの作目ごとの収入や、肥料・農薬・燃料といった農業特有の経費を記入する欄が用意されています。会計ソフトは農業用の決算書に対応していることがあるため、選ぶときは「農業所得に対応しているか」を確認しておくと安心です。一般的な事業所得用の様式とは別物なので、ここを取り違えないようにしましょう。
開業届を出したら会計ソフトで記帳を始めよう

開業届と青色申告の申請を済ませたら、次にやるべきは帳簿づけのスタートです。最大65万円の控除を受けるには、複式簿記に加えて、e-Taxでの申告か、優良な電子帳簿保存のどちらかが必要です。紙で提出すると控除は55万円に下がります。
「複式簿記なんて無理」と感じるかもしれませんが、今は会計ソフトが計算を代行してくれます。やよいの青色申告オンライン(初年度無料)で開業初年度から記帳・申告を始めると、簿記の知識がなくても、画面の案内に沿って入力するだけで農業所得の確定申告書まで作成できます。
とくに65万円の控除を狙うなら、日々の取引をこまめに入力しておくことが欠かせません。開業のタイミングで記帳の仕組みを整えておけば、初めての確定申告も慌てずに乗り切れます。レシートの撮影や銀行口座の自動連携を使えば、入力の手間はさらに減らせます。
実際の確定申告の流れは、農家の確定申告のやり方|青色申告で得する完全ガイドで解説しています。
まとめ:開業届は「青色申告とセットで早めに」
農業の開業届で押さえるべきは、次の3点です。
- 開業届は事業開始から1か月以内に、職業欄は「農業」で提出する
- 青色申告承認申請書を同時に出す(期限は3月15日または開業から2か月以内)
- 提出後は、会計ソフトで記帳をすぐ始める
手続き自体は15分で終わります。後回しにして節税の機会を逃さないよう、早めに動きましょう。開業届と青色申告承認申請書をそろえて出すこと、そしてその日から記帳を始めること。この2つを押さえておけば、最初の確定申告は驚くほどスムーズになります。
※この記事は一般的な情報提供であり、書き方や期限は状況で変わることがあります。とくに失業給付や扶養との関係は、個別の事情で扱いが変わります。具体的な手続きは、お住まいの税務署や税理士に確認することをおすすめします。


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