「補助金や融資の窓口から経営計画書を求められたけど、書き方を教えて欲しい」
5年後の売上なんて読めないし、何をどう書けばいいのか分からないといった農家は少なくありません。しかし経営計画書は、決まった型に沿って数字と方針を埋めていけば審査で評価されやすくなります。
この記事では経営計画書の書き方や審査で見られる3つのポイントなどを現役農家がわかりやすく解説します。
- いつ経営計画書が必要になるのか
- 経営計画書の書き方5ステップ
- 作成のときの3つの失敗例
- 審査で見られる3つのポイント

太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
経営計画書はどんなときに必要?

経営計画書とは、これからどんな農業経営をしていくかを数字と言葉で示した書類です。次のような場面で求められます。
| 場面 | 関係する計画書 |
|---|---|
| 認定農業者になりたい | 農業経営改善計画 |
| 新規就農で支援を受けたい | 青年等就農計画 |
| 補助金・融資を申請したい | 事業計画書・収支計画書 |
「現状はこうで、何年後にここまで伸ばし、そのために何をするか」という筋道を示すものです。そして、経営計画書は、単なる書類づくりにとどまりません。
たとえば、認定農業者になれば、低利の融資や補助金や税制の優遇など、経営を後押しする制度が使えるようになります。認定農業者のメリットは農業経営改善計画書の書き方|認定農業者5つのメリットで詳しく解説しています。
経営計画書に書く5つの基本項目
計画書の様式は申請先によって異なりますが、求められる中身はおおむね共通します。主な項目は次のとおりです。
- 経営者・経営の概要(作目、栽培面積、家族・従業員の構成)
- 現状の経営内容(売上、所得、労働時間など)
- 5年後の目標(所得、規模、労働時間)
- 目標達成のための取り組み(機械導入、規模拡大、販路開拓など)
- 資金計画(必要な投資額と調達方法)
これらは別々の項目に見えて、実は一本の線でつながっています。つまり、現在地と目的地、そこへ至る道筋を示すのが計画書の役割です。
なお、農業経営改善計画では、5年以内に経営へ参画する予定の家族や、逆に離農する見込みの人についても記載を求められます。
今だけでなく、5年後の経営体制まで見据えて書くのがポイントです。家族経営の農家なら、誰がどの作業を担うかも整理しておくと、計画に厚みが出ます。
説得力のある計画書を作る5ステップ
ここからは、実際の作成手順を見ていきます。
まずは今の経営を数字で把握します。売上、経費、所得、栽培面積、労働時間を洗い出しましょう。日々の帳簿があると、この作業がぐっと楽になります。
次に、5年後にどうなっていたいかを数字で描きます。「所得を○○万円にする」「面積を○ヘクタールに広げる」など、具体的にします。漠然とした願望ではなく、根拠のある目標にすることが大切です。
目標と現状のギャップを、どう埋めるかを書きます。機械の導入、品種の変更、直売やネット販売の開始など、具体的な打ち手を挙げます。ここが計画の「中身」になります。
取り組みに必要なお金と、その調達方法(自己資金・補助金・融資)を整理します。補助金や融資の審査では、この資金計画の現実味が重視されます。
最後に、数字が無理のない範囲かを見直します。就農初期は経費がかさみ、技術も発展途上です。一般的な収量や単価をそのまま使わず、少し控えめでゆとりのある数値にするのがコツです。
数値計画の作り方|米農家の例で考える
数字をどう組み立てるか、米農家を例にイメージしてみます。あくまで考え方の一例ですが、現状から5年後への伸ばし方を「面積×単収×単価」で描くと、説得力が出ます。
| 項目 | 現状 | 5年後の目標 |
|---|---|---|
| 作付面積 | 3ヘクタール | 5ヘクタール |
| 売上 | 約450万円 | 約800万円 |
| 農業所得 | 約150万円 | 約300万円 |
| 主な取り組み | ― | 農地集積・直売の開始・機械更新 |
面積を増やすなら農地の確保を、単価を上げるなら直売やブランド化を、といったように数字の根拠を取り組み欄で説明することが大切です。
計画書づくりでやりがちな3つの失敗
最後に、つまずきやすいポイントを3つ挙げます。
- 数字を盛りすぎる:達成できない高い目標は、かえって実現可能性を疑われる
- 取り組みと数字がつながっていない:売上だけ伸びて、根拠の打ち手が書かれていない
- 資金計画が抜けている:投資はするのに、その調達方法が示されていない
どれも、「現状・目標・道筋・お金」のどこかが欠けていることが原因です。4つがひと続きの物語になっているかを、提出前に見直しましょう。
計画書の審査で見られる3つのポイント
計画書は、提出すれば必ず通るものではありません。審査担当者は、主に次の点を見ています。
- 実現可能性:背伸びしすぎず、達成できそうな計画か
- 一貫性:目標・取り組み・資金計画がつながっているか
- 継続性:その地域で農業を続けていく意思があるか
数字を盛るより、地に足のついた計画のほうが評価されます。融資の申請を控えている方はスーパーL資金の必要書類と申請手順も参考になります。
経営計画書づくりでよくある3つの質問
最後に、計画書を作る農家からの質問にお答えします。
計画書は「作って終わり」にしない

経営計画書は、提出のためだけでなく、計画と実績を見比べ、ズレがあれば軌道修正する。この繰り返しが、経営を安定させます。とはいえ、実績を手作業で集計するのは大変です。とくに、補助金や複数の販路が絡む農業経営は、数字がばらけて把握しづらくなりがちです。
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まとめ|経営計画書は「現状・目標・道筋」をつなげる
経営計画書を作るときの要点は、次の3つです。
- 現状の数字を棚卸しし、5年後の目標を具体的に描く
- 目標までの取り組みと資金計画をひも付ける
- 数値は背伸びせず、続けられる現実的な計画にする
計画書づくりは大変ですが、自分の経営を見つめ直す絶好の機会でもあります。一度しっかり作っておけば、翌年以降は数字を更新するだけで使い回せます。最初の一枚に時間をかける価値は十分にあります。


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