「農業で肝心の農地の借り方がわからない…」
新規就農でいちばんの壁は、実はここだと言われます。農機や資金は用意できても、田んぼや畑がなければ農業は始まりません。しかも農地は、ただの土地とは違い、自由に売り買いできるわけではありません。借りるにも買うにも、農業委員会の許可など独自のルールがあります。
この記事では、現役農家として新規就農者が農地を確保するまでの流れを整理します。
- 農地が普通の土地と違う理由
- 2023年の制度改正で変わった点
- 農地を借りる・買う2つのルート
- 借りやすくするためのコツ
新規就農者向けの無利子融資は青年等就農資金の必要書類と申請手順で解説しています。

太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
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なぜ農地は「簡単に手に入らない」のか
農地は、食料を生産する基盤として法律で守られています。そのため、農地を借りたり買ったりするには、原則として農業委員会の許可(農地法第3条)が必要です。
許可を受けるには、3つの条件を満たさなければなりません。
- 取得した農地のすべてを効率的に利用すること
- 必要な農作業に常時従事すること(原則、年間150日以上が目安)
- 周辺の農業に支障を与えないこと
「お金を出せば誰でも買える」わけではなく、実際に農業をする人に農地が渡るよう設計されています。新規就農でつまずきやすいのは、この仕組みを知らないまま土地探しを始めてしまうケースです。
2023年の制度改正で「小さく始めやすく」なった
かつては、農地を取得するときに下限面積要件という高いハードルがありました。一定面積(都府県で50アール、北海道で2ヘクタール)以上を耕作しないと農地を持てなかったのです。
しかし2023年4月の改正で下限面積要件は廃止されました(農林水産省)。
背景には、農業者の高齢化が進むなか、規模の大小を問わず意欲ある新規参入者を増やしたいという狙いがあります。
ただし下限面積がなくなっても、農作業に常時従事することや、農地を適切に使うことといったほかの許可条件は残っています。「小さければ誰でも自由に」というわけではない点には注意が必要です。就農にあたって使える補助金は新規就農で補助金は使える!正しい申請方法も参考にしてください。
農地を手に入れるための2つのルート
新規就農では、まず借りるところから始めるのが一般的です。
| ルート | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 農地バンク(農地中間管理機構) | 公的機関が貸し手と借り手を仲介する。まとまった農地を借りやすい | 一定の規模で始めたい人 |
| 相対(農地法第3条) | 地主と直接交渉して借りる・買う | 地域につてがある人 |
農地バンク(農地中間管理機構)から借りる
農地バンクは、都道府県が設けた公的な仲介機関です。離農する農家などから農地を預かり、借りたい人へ貸し出します。個人間の交渉より安心感があり、契約も整理されているのが利点です。
2025年度以降は、地域の話し合いでまとめた「地域計画」に沿って農地バンクを通じた貸借が基本になります。
地主と直接交渉する(相対)
昔から地域にある方法が、地主と直接話して借りることです。信頼関係があれば話は早い一方、新規就農者がいきなり交渉するのは簡単ではありません。
いずれの方法でも、最終的には農業委員会の許可・手続きが必要になります。
農地の購入をおすすめしない3つの理由
新規就農でいきなり農地を買うのはおすすめしません。理由は次の3つのとおりです。
- 購入にはまとまった資金が必要で、初期投資の負担が大きい
- その土地が自分の営農に合うかは、耕してみないと分からない
- 経営がうまくいかなかったとき、土地が負担として残る
まずは借りて経営を軌道に乗せ、続けられる手応えを得てから購入を検討する。これが、リスクを抑えた現実的な進め方です。さらに農地を買うと、固定資産税や登記の登録免許税などの負担も生じます。
農地を借りるまでの5ステップ
実際の流れを整理します。
- 就農の相談:市町村の農政担当や農業委員会、県の就農相談窓口に相談する
- 研修・実績づくり:農業大学校や先進農家で技術を身につけ、信頼を得る
- 農地を探す:農地バンクへの登録、地域の紹介などで候補地を探す
- 農業委員会の許可・契約:農地法第3条の許可を受け、賃貸借契約を結ぶ
- 就農スタート:農地を引き渡してもらい、営農を開始する
STEP1とSTEP2を早めに着手することです。農地探しは「人とのつながり」で進むことが多く、相談や研修を通じて顔が見える関係をつくることが、結局は近道になります。
農地探しはどこに相談する?
「どこに行けばいいか分からない」という方のために、主な相談先を整理します。
| 相談先 | 相談できること |
|---|---|
| 市町村の農業委員会 | 農地の権利移動、農地法の手続き |
| 農地バンク(農地中間管理機構) | 貸し出し可能な農地の紹介 |
| 都道府県の就農相談センター | 就農全般、研修先・農地・資金の案内 |
| JA・農業改良普及センター | 地域の情報、技術・経営の相談 |
まずは市町村の農政担当か、都道府県の就農相談センターに連絡してみてください。そこから、地域の実情に合った窓口へつないでもらえます。複数の窓口を回ることで、農地の情報も集まりやすくなります。
新規就農者が農地を借りやすくする3つのコツ

現役農家として感じるのは、農地は「貸す側の不安」を減らせる人に集まる、ということです。地主にとって、大切な農地を見ず知らずの人に預けるのは勇気がいります。そこで効くのが、次の3つのような姿勢です。
- 研修や農業体験で本気度と技術を示す
- 地域の集まりや農作業に顔を出し、信頼関係を築く
- 経営計画を用意し、継続して耕作する意思を伝える
私自身、祖父母の代から地域とのつながりに助けられてきました。新規参入なら、まずは小さく借りて実績を積み、少しずつ広げていくのが現実的です。就農資金の準備とあわせて経営開始資金の要件・申請手順も確認しておくと安心です。
農地探しでつまずく2つのケース
農地探しでつまずきやすいのが次のようなケースです。
- 条件のよい農地ばかりを最初から狙う
- 地域に顔を出さずに紹介だけを待つ借りた後の管理を軽く見て放置する
いずれも、地主の信頼を損ねてしまいます。最初の一枚を大切に耕す姿勢が、次の農地を呼び込みます。条件の悪い土地でも、丁寧に育てる姿は地域の人がよく見ています。
農地が決まったら会計ソフトで記帳の準備を

経営をする上で決して忘れてはいけないのが、お金の記録です。就農1年目から、収入と経費を帳簿につけておく必要があります。祖父母から農家を後継したときに一番大変だったのが、お金の管理が煩雑だったこと。どんなに農業技術が優れていても、お金の管理ができなければ農業は続けられません。
やよいの青色申告オンラインなら初年度無料で記帳を始めることができます。農業を持続可能にするため、慣れない事務に時間を取られず農作業に集中しましょう。
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まとめ|農地は「制度を知り、信頼を築いて」確保する
新規就農で農地を確保するための要点は、次の3つです。
- 農地の取得・賃借には農業委員会の許可(農地法第3条)が必要
- 2023年の改正で下限面積要件が廃止され、小さく始めやすくなった
- 農地バンクや相談窓口を活用し、信頼関係づくりを早めに進める
- 農業に集中するため迷わず会計ソフトは導入する
農地探しには時間がかかります。だからこそ、就農を思い立ったらすぐ相談と研修から動き出すことが大切です。理想の農地を待ち続けるより、まず地域のなかで実績と信頼を積み上げていくこと。
それが、結果的にいちばんの近道になります。
私自身も、小さな田んぼから少しずつ広がってきました。焦らず、着実に進めていきましょう。
※本記事は一般的な情報提供であり、農地の取得要件や手続きは地域・年度で変わります。とくに2025年度以降の貸借の仕組みは、地域計画の状況によって運用が異なる場合があります。具体的な手続きは、お住まいの農業委員会・市町村の就農相談窓口に確認することをおすすめします。


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