【現役農家が解説】農水省「収入保険制度」の仕組みと5つの加入手順

農業に前向きな女性

天候不順で収穫が半分になった年、あの保険に入っていなかったら廃業していたかもしれない・・・

農業経営を続けていると、台風・干ばつ・価格暴落など、収入を直撃するリスクは毎年どこかに潜んでいます。そんなときに頼りになるのが農林水産省の収入保険制度(農業経営収入保険)です。

この記事ではTACHIFARM代表で農業歴4年の私が収入保険制度の要件についてわかりやすく解説します。

TACHIFARM代表

みなさまの農業経営の少しでもお役に立てれば幸いです!

この記事でわかること
  • 収入保険制度の補償内容と補填額の計算方法
  • 加入できる農業者の条件(青色申告が必須な理由)
  • 農業共済・ナラシ対策との使い分け
  • 掛金の具体的な目安と国の助成額
  • 実際の加入手順(ステップ別)

⚠️ 本記事の情報は2025年時点の制度内容をもとに作成しています。掛金率・補填上限・申請期限は年度ごとに変更される場合があります。最新情報は必ず農業共済組合(NOSAI)または農林水産省の公式ページでご確認ください。

目次

収入保険制度の補償内容・補填額の仕組み

💬「収入保険って名前は聞いたことあるけど、実際いくら補填されるのかよくわからない」という方へ

収入保険制度は、農産物の販売収入全体を対象に、収入が一定水準を下回った場合に補填する農水省の制度です。自然災害による収量減少だけでなく、価格下落・需要減少・経営上のトラブルも補償対象になります。

基準収入の90%補填の計算方法

補填の起点となるのが「基準収入」です。基準収入は、過去5年間の農業収入の平均値をもとに算出されます(青色申告実績が5年未満の場合は実績年数分で計算)。

補填の計算式(保険方式の場合)

補填額 =(基準収入 × 補償限度割合 − 当年の実際収入)× 支払率
  • 補償限度割合:最大90%(農業者が50〜90%の範囲で選択:青色申告実績1年目は最大75%)
  • 支払率:最大90%

具体例:基準収入1,000万円・補償限度90%・支払率90%の場合

当年収入補填のトリガー不足額支払率受取保険金
900万円900万円(基準収入×90%)0円0円
700万円900万円200万円90%180万円
500万円900万円400万円90%360万円
300万円900万円600万円90%540万円
TACHIFARM代表

500万円に落ちても360万円が補填されるため、安心感がありますね。

なお、補填方式には以下の2タイプがあります。

タイプ内容
保険方式補償充実タイプ掛捨て。補償限度は最大90%。収入が回復しても積立金は戻らない
積立方式併用タイプ積立方式(掛捨てなし)と保険方式を組み合わせ。未使用の積立分は翌年に繰り越せる

掛金・国助成額の試算例(農業規模別)

収入保険の掛金は、保険金額(=基準収入×補償限度割合×支払率)に保険料率を掛けて算出されます。国が掛金の50%を助成するため、農業者の実質負担は半額です。

保険料率の目安(補償限度90%・支払率90%の場合)

保険方式の料率:約1.372%(補償限度8割・支払率9割の農業者負担)

  • 最新料率はNOSAIをご確認ください。

農業規模別の掛金試算例(保険方式・補償限度90%・支払率90%)

基準収入保険金額掛金総額(概算)国助成額(50%)農業者負担(50%)
200万円162万円約19,000円約9,500円約9,500円
500万円405万円約48,000円約24,000円約24,000円
1,000万円810万円約96,000円約48,000円約48,000円
3,000万円2,430万円約286,000円約143,000円約143,000円

※上記は概算です。実際の掛金は付加保険料(事務費)を含むため、NOSAIの収入保険簡易計算ツールでご確認ください。

💬「基準収入500万円規模の農家でも年間3〜4万円程度の自己負担。作業1日分のコストで年間のセーフティネットが確保できると考えると、非常にコスパの良い制度です。」

収入保険制度の対象者とは

青色申告が必要な理由

収入保険制度に加入するためには、青色申告を行っていることが絶対条件です。白色申告では加入できません。

なぜ青色申告が必要なのか。それは「収入をきちんと記録・証明できる農業者だけを対象にする」という制度の原則があるからです。収入保険は「過去の収入実績」をもとに補填額を計算します。そのため、帳簿に記録された正確な収入データが不可欠なのです。

青色申告のポイント
  • 簡易帳簿(現金出納帳など)でも可(複式簿記は不要)
  • ただし「現金主義による所得計算の特例」を使っている場合は対象外
  • 税務署に「青色申告承認申請書」を提出することで手続き完了
  • 新規就農者も加入可能:青色申告実績が1年以上あれば申し込める

💬「青色申告を始めたばかりの1年目でも加入できます。ただし青色申告実績が5年未満の場合は、補償金額が少し小さくなります。」

収入保険と農業共済・ナラシ対策の違い

「収入保険・農業共済・ナラシ対策、何が違うの?」という質問はとても多いです。以下の比較表を参考にしてください。

比較項目収入保険農業共済(NOSAI)ナラシ対策
対象作物全農産物(販売収入全体)品目別(水稲・畑作物・果樹など)米・麦・大豆・てん菜・でん粉原料用ばれいしょ
補償対象収量減少+価格下落+その他主に収量減少(自然災害)主に価格下落
加入資格青色申告農業者全農業者(作付面積基準あり)販売農家・集落営農
掛金の国助成50%品目により異なる75%(農業者負担25%)
重複加入農業共済との重複不可収入保険と重複不可収入保険との重複不可
ポイントのまとめ
  • 米・麦・大豆など特定の品目だけを作る農家→ ナラシ対策や農業共済が向いている場合も
  • 複数品目を栽培する農家・野菜農家・果樹農家→ 収入保険の方が幅広く補償される
  • 価格下落リスクも含めて農業経営全体を守りたい農家→ 収入保険が強力

NG条件(加入できない農業者の例)

以下に当てはまる場合は、収入保険制度への加入ができません。

  • 白色申告のみの農業者(青色申告実績なし)
  • 現金主義による所得計算の特例を適用している農業者
  • 農業共済(NOSAI)の類似共済に加入中の農業者*
  • ナラシ対策に加入中の農業者(同様に重複不可)
  • 農業以外の副業収入が農業収入を大幅に上回るケース(農業者として認定されない場合)
  • 施設共済・果樹共済の樹体部分・家畜共済の家畜損害補償等の固定資産損害補償は収入保険と重複加入可能

収入保険制度の自己負担(掛金)の目安

収入保険の費用は大きく3つに分かれます。

1. 保険掛金(掛捨て)
基準収入や補償限度によって変わります。国が50%を助成するため、自己負担は掛金の半額です。

2. 積立金(積立方式を選んだ場合)
掛捨てではなく、未使用分は翌期に繰り越されます。農業者負担分は積立金の25%で、残り75%は国が補助します。

3. 付加保険料(事務費)

  • 加入者割:新規加入者4,500円 / 継続加入者3,200円
  • 補償金額割:保険金額・積立金1万円あたり22円
費用項目総額国助成額農業者負担
保険掛金約48,000円約24,000円約24,000円
付加保険料(事務費)約12,000円約12,000円
合計約60,000円約24,000円約36,000円
実負担の具体例(基準収入500万円・補償限度90%・支払率90%の場合)

💬「掛金は農業所得から必要経費として計上できます。税務上も有利です。」

誰でもできる!収入保険制度の加入手順5ステップ

STEP 1|青色申告を始める(未実施の場合)

まず税務署に「青色申告承認申請書」を提出します。翌年1月からの加入を目指す場合、その年の3月15日までに申請する必要があります。青色申告ソフトを使えば帳簿管理が格段に楽になります。

STEP 2|最寄りのNOSAI(農業共済組合)に相談する

各都道府県のNOSAIに連絡して、収入保険の相談窓口を訪問します。担当者が補償プランの試算や書類準備を手伝ってくれます。

相談するタイミング

加入を希望する保険期間の開始前年10月〜12月頃が目安です(例:2026年1月加入なら2025年秋に相談)。

TACHIFARM代表

「NOSAI 都道府県名 連絡先」で検索!

STEP 3|必要書類を準備する

必要書類内容
前年の青色申告決算書農業収入の実績証明
農業経営に関する計画書翌年の営農見通し
本人確認書類運転免許証等
印鑑申請書への押印用

法人の場合は、法人登記簿謄本・決算書等が追加で必要になります。

STEP 4|加入申し込みを行う

申し込みは以下の2通りの方法があります。

  • NOSAI窓口で直接申し込み(担当者がサポート)
  • eMAFF(農林水産省共通申請サービス)でオンライン申請(付加保険料の割引あり)

STEP 5|掛金を納付して加入完了

審査が通ったら保険証書が届き、掛金を納付すれば加入完了です。保険期間は1月1日〜12月31日の1年間です。

💬「初めての加入はNOSAI窓口で相談するのが一番です。私も1回目は窓口で申し込みました。担当者が試算もしてくれて安心感がありました。」

まとめ

収入保険制度の要点を一覧表で整理します。

項目内容
正式名称収入保険制度(農業経営収入保険)
対象者青色申告を行っている農業者(個人・法人)
補償対象農産物の販売収入全体(収量減少・価格下落・その他)
補填上限基準収入の90%(補償限度最大90%・支払率最大90%)
国の助成保険掛金の50%を国が助成
自己負担掛金の50%+付加保険料(事務費)の全額
積立方式積立金の75%を国が助成(農業者負担25%)
申請窓口農業共済組合(NOSAI)/eMAFF(オンライン)
加入の絶対条件青色申告実績(1年以上)・帳簿の整備
加入できない条件農業共済・ナラシ対策との重複加入不可・白色申告者は不可
保険期間毎年1月1日〜12月31日(1年間)
申し込み時期の目安前年10月〜12月

農業経営のリスクは年々多様化しています。収入保険制度は、多様なリスクを「農業収入全体」でカバーできる、現代農業にフィットしたセーフティネットです。

TACHIFARM代表

まずは最寄りのNOSAIに相談するところから始めてみてください。

申請書類・要項へのダイレクトリンク

申請に必要な書類・要項は下記リンクから直接入手できます。申請書類は年度ごとに更新されるため、必ず最新版をご使用ください。

書類・情報の種類入手先
農林水産省|収入保険制度(概要・要綱)農林水産省公式ページ
農林水産省|収入保険制度の詳細農林水産省公式ページ
NOSAI全国連|収入保険加入申込・相談農林水産省公式ページ
eMAFF(オンライン申請・付加保険料割引あり)農林水産省公式ページ

申請窓口: 最寄りのNOSAI(農業共済組合)窓口

⚠️ 加入申込書はNOSAI窓口で取得できます。eMAFFを使ったオンライン申請では付加保険料の割引があります。青色申告の実績書類(決算書)を持参して相談してください。

関連リンク・参考資料

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この記事を書いた人

農業|ライター|千葉県山武郡横芝光町でコシヒカリを始めとしたおいしいお米を生産|Word、ドキュメント、WordPressでの記事の執筆|日商簿記2級|FP3級|食品衛生責任者|英検2級

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