電子帳簿保存法の対応|農家が専用システムなしで進める5ステップ

会計業務に従事する農家

当記事はPRを含みます。

農薬や肥料の請求書がメールで届いたあと、紙に印刷してデータを消していませんか。

実はその進め方は、令和6年1月から始まった保存のルールに合っていません。このルールが電子帳簿保存法の「電子取引データ保存」であり、農家も全員が対象になります。とはいえ、やることは届いたデータを消さずに、決めた場所へ残しておくだけです。

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専用のシステムを買う必要はなく、パソコンと無料のクラウドストレージだけで足ります。

この記事ではTACHIFARM代表で農業歴4年の私が、農家の電子帳簿保存法への対応を解説します。

📌 この記事でわかること

・農家に義務づけられている電子帳簿保存法の範囲
・農家の電子取引に当てはまる書類の見分け方
・専用システムを買わずに要件を満たす5ステップ
・準備が間に合わないときに使える猶予措置の条件

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この記事を書いた人
たち しょうえい

太智昭栄

Shoei Tachi

  • 農業経営者(2022年〜千葉県東部でお米を生産)
  • 日商簿記2級・3級FP技能士取得
  • 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信

目次

電子帳簿保存法は「電子取引データ」だけが対象

農家が最初に押さえるべき点は、電子帳簿保存法のうち義務なのは電子取引データを保存するということ。電子帳簿保存法(帳簿や書類を電子データで保存するための法律)は、3つの区分に分かれています。そのうち電子帳簿等保存とスキャナ保存は、あくまで任意で選べる制度にとどまります。

したがって、専用システムを入れていない農家でも、電子取引データ保存だけは避けて通れません

農家が判断を誤りやすい部分なので、まずは3つの区分の違いを次の表で確認してください。

区分対象になるもの農家の対応
電子帳簿等保存会計ソフトで作成した帳簿・決算書任意(選んでよい)
スキャナ保存紙で受け取った請求書・領収書の画像任意(選んでよい)
電子取引データ保存メールやサイトで授受したデータ義務(全員が対象)
紙で受け取った請求書はこれまでどおりで問題ありません

紙でやり取りした請求書や領収書は、これまでどおりファイルに綴じて保管すれば足ります。電子帳簿保存法が保存方法を変えたのは、あくまでデータでやり取りした書類に限られます。

電子取引に当てはまる書類を洗い出す

対応の第一歩は、自分の経営でどの書類が電子取引に当てはまるのかを洗い出す作業です。

電子取引とは、請求書や領収書に相当する情報を、データで受け取ったり渡したりする取引です。国税庁はメールでの授受やインターネット上の取引を、電子取引の代表例として示しています。

まずは次の表を使って、自分の経営に当てはまるものへ順番に印を付けていってください。

農業でよくある場面具体例電子取引か
資材・農薬の仕入れメールに添付されたPDFの請求書該当する
ネット通販での購入農機具の部品を買ったときの領収書該当する
入出金の確認ネットバンキングの明細・カード明細該当する
農協との取引ウェブで確認する精算書・出荷明細該当する
対面での仕入れその場で受け取った紙の領収書該当しない
ネット通販の領収書とカード明細も対象です

ネット通販で買った部品や資材の領収書も、サイト上で発行されれば電子取引に当たります。ウェブ上でしか確認できないクレジットカードの明細や、ネットバンキングの明細も同じです。カード明細やネット明細は一定期間で画面から消えるため、その都度ダウンロードしてください。

ちなみに、農協のウェブ明細を使っている場合も、同じ考え方で保存の対象になります。

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電子帳簿保存法の保存要件は「真実性」と「可視性」の2つ

電子取引データの保存要件は、真実性の確保と可視性の確保という2つの柱で構成されています。

「真実性」とは、保存したデータが後から改ざんされない状態をつくることを指します。一方で「可視性」とは、必要なときに誰でもすぐ画面で確認できる状態を保つことです。

真実性の確保は事務処理規程だけで満たせます

真実性の確保は、改ざん防止のための社内ルールの文書を作れば満たせます。タイムスタンプの付与や、訂正削除の履歴が残るシステムを使う方法も認められています。ただし、費用をかけたくない農家には、事務処理規程を選ぶやり方がいちばん現実的です。

規程のサンプルは国税庁のホームページに公開されており、そのまま使うこともできます。

売上5,000万円以下の農家は検索要件が不要

可視性の確保では、取引年月日と取引金額、取引先の3項目で検索できることが求められます。ただし、2課税年度前の売上高が5,000万円以下なら、検索要件は不要になります。

基本的に税務調査でデータのダウンロードを求められたときに応じられれば問題ありません。

農家の電子帳簿保存法対応を5ステップで進めます

ここからは、実際に手を動かす順番を5つのステップに分けて、具体的に説明していきます。順番どおりに進めれば、パソコン1台と無料のクラウドストレージだけで対応が完了します。

STEP
対象データを洗い出す

メール、通販サイト、ネットバンキングの3か所から、対象になるデータを洗い出します。

STEP
保存フォルダを1か所に決める

パソコンやクラウドの中に、年度ごとの保存フォルダを1か所だけ作ってデータを集約します。

STEP
事務処理規程を用意する

国税庁のサンプルをダウンロードし、法人名や氏名を書き入れたうえで印刷して保管します。

STEP
ファイル名をそろえる

保存するファイル名を「日付_取引先_金額」の形にそろえ、探しやすい状態にします。

STEP
毎月の習慣にする

月末に30分だけ時間を取り、その月に届いたデータをまとめて保存フォルダへ移します。

【筆者おすすめ】ファイル名は「日付_取引先_金額」でそろえる

ファイル名のつけ方をそろえると、検索要件を満たしやすくなり、探す時間も短くなります。たとえば20260410_全農_38500のように、日付と取引先と金額を並べます。なお、取引先名は略さずに統一しておくと、あとから並べ替えるときに迷わずに済みます。

フォルダは年度ごとに分けたうえで、その中に月ごとの小分けを作ると管理が安定します。

令和9年からの75万円控除につながる

電子帳簿保存法への対応は、守りだけの話ではなく、将来の節税にも直接つながっていきます。令和8年度税制改正により、青色申告特別控除の最高額が75万円へ引き上げられました。新しい控除額が実際に適用されるのは、令和9年分以後の所得税からと定められています。

したがって、今から電子保存に慣れておくほど、改正後にそのまま有利に働いてくれます。控除額と要件の関係については、次の表で整理しましたので順番に確認しておいてください。

控除額主な要件適用時期
75万円複式簿記+期限内のe-Tax申告+優良な電子帳簿令和9年分以後
65万円複式簿記+期限内のe-Tax申告令和9年分以後
10万円簡易な帳簿での申告(前々年分の収入金額が1,000万円以下)令和9年分以後
0円(対象外)簡易な帳簿での申告(前々年分の収入金額が1,000万円超)令和9年分以後

①優良な電子帳簿なら青色申告特別控除が75万円になります

75万円の控除を受けるには、複式簿記による記帳に加えて、仕訳帳と総勘定元帳を優良な電子帳簿として保存する必要があります。優良な電子帳簿とは、訂正削除の履歴が残るなど、一定の要件を満たした帳簿を指します。なお、請求書などの電子取引データを会計システムに連携して一元的に保存する方法でも、この追加要件を満たせます。いずれの場合も、e-Taxでの期限内申告も合わせて必要です。

一方で、複式簿記と期限内のe-Tax申告だけの場合は、65万円の控除にとどまります。また、複式簿記で記帳していても紙で申告すると、令和9年分からは10万円まで下がります。

②会計ソフトを使うと要件をまとめて満たせます

優良な電子帳簿の要件は、対応した会計ソフトを使うことで、まとめて満たすことができます。クラウド会計なら、銀行やカードの明細が自動で取り込まれ、履歴もデータとして残ります。

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私も最初は、印刷したほうが安心できると考えていました。ただし、データのまま残す形に変えてから、必要な書類を探す時間は短くなりました。

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まとめ|農家の電子帳簿保存法対応は事務処理規程1枚から始まります

農家の電子帳簿保存法対応は、専用システムがなくても、今日から始めることができます。まずは対象データを洗い出し、保存先を1か所に決めて、事務処理規程を用意してください。準備が間に合わない場合も、相当の理由があると所轄税務署長に認められ、データのダウンロードの求めと出力書面の提示に応じられるなら、猶予措置を使えます(事前の申請は不要です)。

大切なのは、届いた電子データを消さずに、そのまま残しておく習慣をつくることです。今日は、直近1か月分のメールとネット明細をフォルダにまとめる作業から始めてください。

🌾 この記事のまとめ

・義務化されているのは3つの区分のうち「電子取引データ保存」だけ
で受け取った請求書や領収書は、これまでどおりの保管でよい
・保存要件は「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つだけ
・2課税年度前の売上高が5,000万円以下なら検索要件は不要
・準備が間に合わないときは猶予措置を使える(事前申請は不要)
・令和9年分から、優良な電子帳簿で青色申告特別控除が75万円になる

制度の内容や運用は変わることがあるため、最新の情報は国税庁の特設サイトでご確認ください。

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▼参考・出典

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この記事を書いた人

農業|ライター|千葉県山武郡横芝光町でコシヒカリを始めとしたおいしいお米を生産|Word、ドキュメント、WordPressでの記事の執筆|日商簿記2級|FP3級|食品衛生責任者|英検2級

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