祖父母や親から田畑を引き継ぐとき、「手続きで何から手をつければいいのか分からない」と悩む方は多いはず。農地の相続は法務局での名義変更に加えて農業委員会への届出も必要でそれぞれに期限があります。
そんな複雑な手続きを農業経営4年目の私がわかりやすく解説します。
- 相続の手続き5ステップ
- 相続登記・届出の期限と過料
- 登録免許税・相続税の目安
- 納税猶予で損しないための判断軸

太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
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農地相続で必ず押さえる3つの手続き
農地を相続したら、次の3つは必ず確認してください。期限の起点が手続きごとに違う点に注意が必要です。
| 手続き | 何をする | 期限の目安 | 怠った場合 |
|---|---|---|---|
| 相続登記(名義変更) | 法務局で農地の名義を相続人へ変更 | 相続を知った日から3年以内 | 10万円以下の過料の対象になり得る |
| 農業委員会への届出 | 農地法第3条の3にもとづく届出 | 取得を知った日からおおむね10か月以内 | 10万円以下の過料の対象になり得る |
| 相続税の申告・納税 | 基礎控除を超える場合に申告 | 死亡を知った日の翌日から10か月以内 | 加算税・延滞税の対象になり得る |
相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化されました。過去に相続した農地も対象で、その場合は2027年(令和9年)3月31日までに登記すれば義務を果たしたことになります。「うちは昔から名義がそのまま」というご家庭こそ、早めの確認をおすすめします。
なお、農地を相続したあとに「やはり農業を続けるのは難しい」と感じる方もいます。手続きの前に、家族でどう経営を続けるかを話し合っておくと、迷いが減ります。同じ後継者の立場での向き合い方は米農家の後継者問題|家族で一緒に農業を続ける3つのコツも参考になります。
初心者でもできる!農地相続の手続き5ステップ

ここからは、実際の進め方を順番に見ていきます。
STEP1|遺言書の有無と「相続人・農地」の洗い出し
最初にやるのは、遺言書があるかどうかの確認です。遺言があればその内容が原則優先されます。次に、戸籍をたどって法定相続人が誰なのかを確定し、被相続人(亡くなった方)名義の農地が「どこに・何筆あるか」を登記簿や固定資産税の課税明細で把握します。
農地は離れた場所に点在していることも多く、本人も把握しきれていないケースがあります。市区町村から届く固定資産税の課税明細書や、農業委員会が管理する農地台帳が手がかりになります。
STEP2|遺産分割協議で「誰が農地を継ぐか」を決める
遺言がない場合は、相続人全員で話し合う遺産分割協議を行い、誰が農地を相続するかを決めます。農地は分割しづらい財産なので、「農業を続ける人がまとめて相続し、ほかの相続人には別の財産で調整する」といった形が現実的です。
合意できたら遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・実印で押印します。この書類は、次の相続登記でも必要になります。
STEP3|相続登記(名義変更)を法務局で行う
農地の所在地を管轄する法務局で、名義を被相続人から相続人へ変更します。相続による農地の取得は、後述の農業委員会の「許可」は不要で、登記そのものは通常の不動産と同じ流れです。
必要書類の例は次のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)
- 相続人全員の戸籍謄本・住民票
- 遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書
- 対象農地の固定資産評価証明書 など
登記は自分で申請することもできますが、戸籍の収集や書類作成は手間がかかります。権利関係が複雑な場合は司法書士に依頼すると確実です。
STEP4|農業委員会へ「農地法第3条の3」の届出を出す
ここが農地ならではのステップです。農地を相続したら、その農地がある市区町村の農業委員会へ届出をします。期限は権利を取得したことを知った日からおおむね10か月以内で、届出を怠ったり虚偽の届出をしたりすると、10万円以下の過料の対象になり得ます。
届出書は農業委員会の窓口やホームページで入手でき、登記事項証明書などを添えて提出します。手続き自体は難しくありませんが、「登記とは別に届出が必要」という点を知らずに見落とす方が多いので注意してください。
STEP5|相続税の申告・納税(必要な場合)
相続財産の総額が基礎控除を超える場合は、死亡を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告・納税が必要です。農地の評価や納税猶予の判断は専門性が高いため、早めに税理士へ相談すると安心です。
見落としやすい2つのお金|登録免許税と相続税とは

手続きと並んで気になるのが費用です。「結局いくらかかるのか」「税金で持っていかれすぎないか」という不安は、後継者なら誰もが抱くところでしょう。主な税金を整理します。
相続登記でかかる登録免許税
相続による所有権移転登記には、固定資産税評価額の0.4%(1000分の4)の登録免許税がかかります。たとえば評価額600万円の農地なら、600万円×0.4%=2万4,000円の税金がかかるイメージです。
さらに、価額が100万円以下の土地は登録免許税が免税になる措置が、令和9年(2027年)3月31日まで設けられています。評価額の低い農地が複数ある場合、免税が効くことがあります。
相続税の基礎控除と「農地の納税猶予」
相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除があります。相続人が3人なら4,800万円までは相続税がかからず、農地と他の財産を合わせてこの枠に収まれば、そもそも相続税はかかりません。
また、枠を超える場合に検討したいのが、農地等の相続税の納税猶予の特例です。これは、農業を引き継ぐ相続人が農業を続けることを条件に、一定額を超える相続税の納税が猶予される制度です。専門用語の「納税猶予」とは、税金が消えるのではなく、条件を満たす間は支払いを先送りできる仕組みを指します。
ただし、この特例には注意点があります。
- 申告期限までに農業経営を始め、その後も継続することが条件
- 3年ごとに「継続届出書」の提出が必要
- 途中で農地を売却・転用・放棄すると猶予が打ち切られ、猶予税額に利子税を加えて納めることになる
要件を満たせば大きな効果がある一方、続けられなくなると後で負担が生じる点は、家族とよく話し合うべきところです。節税になるかどうかは個々の要件を満たす場合に限られるため、必ず最新の制度内容を確認してください。
引き継いだ後にやること|自分の確定申告と記帳を整える

農地の名義変更が終わったら、いよいよ自分が経営者です。ここで意外と見落とされるのが、所得税の確定申告の準備です。とくに、相続税の納税猶予を受ける場合や青色申告で節税を狙う場合は、日々の記帳をきちんと残しておくことが前提になります。
青色申告には最大65万円の特別控除があり、農業所得のある個人なら使わない手はありません。制度の詳しい中身は、農家の青色申告とクラウド会計ソフトの選び方|65万円控除を最大活用で解説しています。
承継のタイミングで「個人のままいくか、法人化するか」を考える方もいるでしょう。判断の目安は、農家の法人化のメリット・デメリットと判断基準にまとめています。
まとめ|農地相続は「登記・届出・税」を期限内に
農地を相続したら、押さえるべきは次の3点です。
- 相続登記を相続を知った日から3年以内に(義務化・過料の対象)
- 農業委員会への届出をおおむね10か月以内に(農地法第3条の3)
- 基礎控除を超えるなら相続税の申告を10か月以内に。農業を続けるなら納税猶予の検討も
そして手続きが落ち着いたら、引き継いだ経営の記帳・確定申告を整えることが、次の安定経営への第一歩になります。
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TACHIFARM代表先代から受け継ぐ大切な農地です。一つずつ確実に進めていきましょう。
※本記事は一般的な情報提供であり、相続税の評価や納税猶予の適用、登記の細かな判断は個別事情によって変わります。具体的な手続きは、税理士・司法書士・お住まいの農業委員会などの専門窓口に確認することをおすすめします。










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