「米農家の1日って、どんな感じなんだろう?」
そう思ったことはありませんか。
田んぼで黙々と働くイメージはあっても、実際に何時に起きて、何をして、何を考えながら過ごしているのかは、なかなか見えてこないですよね。田植えが始まる前のこの時期は、1年でいちばん気が抜けない時期のひとつです。
この記事では、苗の温度管理、田んぼを耕す作業、経理仕事まで行う米農家の1日を紹介します。
TACHIFARM代表 太智昭栄バタバタと過ぎていく1日を、ぜひのぞいてみてください。
① 【7:00〜】育苗ハウスへ


長靴を履いて最初に向かうのは、ビニールハウスです。ここでは、育てている苗の確認をします。
4月初旬は、種まきから10日前後が経過した時期です。3月末に播種機で育苗箱に種籾をまき、ハウスの中で発芽させている段階で、この頃の稲の赤ちゃんは温度と水に極端に敏感です。夜間に気温が10度を下回ると苗の育ちが悪くなるリスクが高まるため、毎朝の確認作業は欠かせません。



朝一番のビニールハウス確認は、必ず行います!
ハウスに入ってまず行うのが、温度計のチェックです。苗の生育に適した温度は18〜20度で、35度を超えると高温障害を引き起こす危険があります。同時に湿度の状態も確認し、湿度が高すぎる場合はハウスの端を少し開けて換気を行います。
湿度が高いまま放置すると「苗立枯れ病」の原因になるため、温度と湿度はセットで管理することが大切です。
② 【8:00〜11:00】トラクターで田んぼへ


育苗ハウスの確認が終わると、次はトラクターに乗り込みます。
春起こし(荒おこし)――冬眠明けの田んぼを耕す
4月のメイン作業は「春起こし(荒おこし)」です。冬の間に固まった田んぼの土をトラクターで耕し、残った稲の茎や根(残渣)を土に混ぜ込んでいきます。この作業を怠ると、次の工程である代かきのときに土がうまくほぐれず、田植え後の根張りにも悪影響が出てしまいます。
機械の操作は私が担当し、祖父が補助に回ってくれています。「あっちの角は去年深くてタニシにやられた」「この田んぼはもう一回耕した方がいい」と、50年以上この土地を耕してきた祖父の一言は、どんな農業テキストよりも的確で頼りになります。現場で積み上げてきた経験は、数字やデータでは測れないものがあると、作業のたびに実感します。
午前11時、育苗ハウスへ――苗を守る換気のタイミング
午前中は1ヘクタール分を目標に作業を進め、昼前には機械を止めてタイヤの泥を落とします。また、午前11時ごろには育苗ハウスに戻り、換気の状態を確認します。気温が上がるこの時間帯はハウス内が高温になりやすく、30度を超えると苗が一気に弱るため、天窓を開けて温度を調整します。
この換気作業は、祖母が担当してくれることが多いです。「今日は暑いけん、早めに開けといたよ」と声をかけてくれるひと言に、毎回どれほど助けられているかわかりません。家族で役割を分担しながら、1日の農作業が成り立っています。
農機具は消耗品ではなく、経営の基盤のため、メンテナンスをサボると一番大事な時期に壊れる可能性があります。農家仲間からの情報を集めると、修理費が100万円を超えることも珍しくありません。
③ 【12:00〜13:00】昼食をとる
お昼は基本的に一人で食事をすることが多いです。農業と並行して副業にも取り組んでいるため、祖父母にはゆっくり休憩してもらいながら、私はそのまま次の作業や仕事に向かうことがほとんどです。
祖父母と一緒に働いていると、「動けるうちに、働けるだけ働かなければ」という気持ちを日々実感します。元気に畑へ出てくれる姿がある一方で、若い自分にしかできないことがあるとも感じていて、その思いが日々の原動力になっています。貴重な時間を少しでも有意義に使えるよう、農業もライターの仕事も、毎日コツコツと積み重ねています。



若さと体力は、お金では買えない財産です。
④ 【13:00〜17:00】農作業、事務作業、そして副業


午後は田んぼ作業、もしくは事務作業をしてることが多いです。農業経営者として私が担っているのは、農作業だけでなく、経理・事務も行なってます。補助金の申請や農業委員会への届出、日々の会計記録は、クラウド会計ソフトを使っていても毎日少しずつ積み上げないとあっという間に溜まります。
書類確認と資材の発注、農薬の購入など「見えない仕事」が農業経営を支えています。田んぼに出ていない時間も、農家の仕事は動き続けているんです。
さらに私は、ライター業も個人事業として行っているため、農作業が一段落した時間帯にブログの更新やSNS投稿も行います。農業経営の傍らで文章を書くことは、農業の視点を言語化するいい訓練にもなっています。
⑤【18:00〜】家族の食卓と明日の準備


夕方5時半ごろ、日が傾いてきたら作業を終わりに家に戻ります。自宅に帰ると、妻が夕食の準備をしてくれており、日々助けられていることを実感します。
農業は孤独な仕事と思われがちですが、家族と一緒に経営しているので、寂しい気持ちはありません。それよりも、通勤時間がほとんどないので、家族との時間が長く取れるので充実した日々を過ごせてます。
暮らしと仕事が切り離されていないことこそ、農業の強み。
食後は翌日の作業段取りを確認します。天気予報をチェックし、明日の育苗の温度管理計画、田んぼ作業の優先順位、事務作業の締め切りを整理します。
スマホのメモアプリやGoogleカレンダーを活用し、翌朝のタスクを入力して、夜11時ごろには就寝。



4月の農家の夜は、思ったより早く終わります。
⑥ まとめ
育苗ハウスの温度を何度に設定するか、今日の天気でどの田んぼを優先するか。補助金の申請期限に間に合わせるためにどこの作業を後回しにするか。農業経営とは、こうした日々の積み重ねです。
私自身も、農業経営4年目にしてようやく「農家のスケジュール」が読めるようになってきたと感じています。最初の頃は目の前の作業に追われるだけでしたが、今は1週間先、1ヶ月先を見据えて動けるようになってきました。
それは祖父母の知恵と、自分なりの経験値があってこそです。
「農業に興味はあるけど、実際どんな生活なのか想像できない」という方に、この記事が少しでも役に立てば嬉しいです。4月の米農家は今まさに、1年で一番大事な準備の季節を全力で駆け抜けています。













コメント