【農業の青色申告決算書】65万控除を自分で取る!欄別の書き方・記入例

帳簿をつける農夫

※当記事はPRを含みます。

農業の青色申告決算書を目の前にして、どの欄に何を書けばよいのか迷っていませんか。

実は農業所得用の決算書は一般用の決算書とは収入を計上する考え方から異なります

shoei

私も就農して数年のあいだは、家事消費の欄をどう埋めるべきかで毎年悩んでいました。

この記事では、現役農家であり、日商簿記2級も持つ私が書き方を解説します。農業所得用の決算書を、欄ごとの記入例つきで最後まで自分で埋められる形にまとめました。

📌 この記事でわかること

・青色申告決算書とは何か
・農業所得用は一般用とどう違うのか
・収穫基準、家事消費、雑収入という農業だけの収入の書き方
・農具費と減価償却費の分かれ目とは
・家事按分と租税公課で間違えやすい点
・決算書を提出するまでの5ステップと65万円控除を受けるための要件

この記事を書いた人
たち しょうえい

太智昭栄

Shoei Tachi

  • 農業経営者(2022年〜千葉県東部でお米を生産)
  • 日商簿記2級・3級FP技能士取得
  • 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信

目次

青色申告決算書の書き方とは|4ページの構成をつかむ

農業の青色申告決算書は農業所得用と呼ばれる様式で、全部で4ページに分かれています。一般用の決算書と違い、種苗費や肥料費など農業特有の科目があらかじめ並んでいます。

内訳のページを先に埋めてから1ページ目へ転記すると、計算が合わない事故が減るのでおすすめです。まずは青色申告決算書という書類の役割と、4ページの中身を順番に確認していきましょう。

shoei

青色申告そのものの流れは、農家の確定申告のやり方の記事のほうで全体像をつかめます。

🔗【農家の確定申告のやり方】青色申告で最大65万円得する完全ガイド

そもそも青色申告決算書とは

青色申告決算書とは、1年間の収入と経費をまとめて所得を計算し、税務署に出す書類。青色申告の承認を受けた人だけが使える様式であり、確定申告書に添えて提出する書類です。白色申告で使う収支内訳書よりも項目が細かく、そのぶん青色申告特別控除を受けられます。

農業を営んでいる方は、一般用ではなく農業所得用の様式を選ぶ点に注意してください。

決算書4ページの中身は表で確認

4ページのうち中心になるのは、1ページ目に置かれている損益計算書という1枚の表です。損益計算書は収入金額と経費を上下に並べ、最終的な農業所得の金額を出す表になります。

2ページ目と3ページ目は内訳であり、1ページ目に転記する金額の根拠を書いていきましょう。4ページ目の貸借対照表は、55万円と65万円の控除を受けるときに必要になる表です。

ページ何の表か書く内容
1ページ目損益計算書収入金額と経費を並べて農業所得の金額を計算する
2ページ目収入と人件費の内訳収入金額の内訳、農産物以外の棚卸高、雇人費、専従者給与
3ページ目資産と支払いの内訳減価償却費の計算、果樹・牛馬等の育成費用、地代・賃借料、利子割引料
4ページ目貸借対照表年末時点の資産と負債(55万円・65万円の控除を受ける場合に必要)

※出典:国税庁「令和7年分 青色申告決算書(農業所得用)の書き方」

控除額は記帳の方法と申告の方法で決まる

青色申告特別控除の金額は、65万円と55万円と10万円の3段階に分かれています。65万円と55万円は複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付することが条件です。そのうえで65万円を受けるには、e-Taxで申告するか優良な電子帳簿を保存する必要があります。

なお提出が確定申告の期限に間に合わなかった場合、控除額は10万円まで下がります

控除額記帳の方法添付する書類申告の方法
65万円複式簿記損益計算書+貸借対照表期限内に申告し、e-Tax提出か優良な電子帳簿保存
55万円複式簿記損益計算書+貸借対照表期限内に書面で提出
10万円簡易な記帳損益計算書期限後の申告でも適用可(貸借対照表は不要)

※出典:国税庁「令和7年分 青色申告決算書(農業所得用)の書き方」

10万円と65万円を分ける最初の関門は、複式簿記の帳簿を1年間続けられるかどうかです。そこで通帳とカードの明細から仕訳を自動で作れば、複式簿記の帳簿は無理なく積み上がります

1ヶ月無料・クレジットカードの登録は不要です

通帳とカードの明細から仕訳を自動で作り、65万円控除の土台になる複式簿記の帳簿を積み上げます。

複式簿記の帳簿づくりを無料で試す ≫

※農業所得用の青色申告決算書そのものの出力には対応していません。決算書は国税庁の確定申告書等作成コーナーなどで作成します。

shoei

65万円控除の土台になるのは、決算書の用紙ではなく毎日の帳簿のほうだと考えてください。

収入金額の欄は「収穫基準」を知ると迷わなくなる

農業の収入金額の欄でつまずく理由は、収入を計上する時期のルールが特殊だからです。

国税庁は農産物について、販売した時ではなく収穫した時に収入とすると定めています。収穫した時点で収入とする考え方を収穫基準と呼び、米や麦などの農産物に適用されます。決算書の収入金額の欄を上から順に埋めていくと、収穫基準の計算が自動的に完成する仕組みです。

一方で農機具や副産物などの農産物以外は、販売して引き渡した時に収入を計上します。

農産物は収穫した時点で収入になる

収穫基準のもとでは、年末に売れ残って倉庫に残っている米も収入金額に含めて計算します。具体的には農産物の期末棚卸高の欄に、収穫した時の生産者販売価額で金額を記入。反対に前年から持ち越した分は、農産物の期首棚卸高として収入から差し引く形になります。

米や麦などの穀物類は、数量がわずかでも棚卸しを省略できない点に注意してください

未入金の売上も本年分の販売金額に入れる

年内に引き渡した農産物は、代金を受け取っていなくても本年分の販売金額に計上します。12月に出荷して1月に入金される分は、12月31日付で売掛金として記帳しておきましょう。反対に前受金を受け取っていても、年末までに引き渡していない分は収入から除きます。

通帳の入金だけを追いかけると、締め日と入金日のずれで収入金額がずれてしまいます。

家事消費は決められた計算式で金額を出す

家族で食べた米や知人へ贈答した米についても、収入金額として決算書に記入する決まりです。国税庁は出荷している場合の計算式として、販売金額から出荷経費を引く方法を示しています。

販売金額から出荷経費を引き、出荷数量で割って家事消費数量を掛けた金額が答えです。出荷していない場合は、市場の平均価額を参考にした単価に消費数量を掛けて計算します。

雑収入は「入るもの」と「入らないもの」で分ける

雑収入の欄は、販売金額にも家事消費にも当てはまらない収入をまとめて書く場所です。農業経営では受取共済金や補助金など、雑収入に入る収入が想像よりも多く発生します。ところが農業所得の収入にならないものも混ざっており、区別を誤ると所得の金額が変わります。

たとえば農協から受ける出資配当金は配当所得であり、農業所得の収入にはあたりません。判断を間違えても税務署が教えてくれるとは限らないため、最初に区別を覚えてください。

雑収入の欄に入る主な収入

雑収入には、わらやもみ牛鶏糞といった副産物を販売して得た収入が含まれます。また、農産物に対する受取共済金や、被害を受けたときに受け取る補償金も。近隣の農家から田植えや稲刈りを請け負った受託作業料も、雑収入として記入する項目です。

農協から受ける事業分量配当や、経営開始資金も雑収入に含まれる点を覚えてください。

農業所得の収入にならないもの

農協等から受ける出資配当金は配当所得に区分されるため、農業所得の収入になりません。小作契約に基づく小作料の収入や、電柱の敷地料は不動産所得として申告する収入です。建物更生共済の満期共済金は一時所得にあたるため、農業の雑収入には入れられません。

取得価額が10万円以上の事業用資産を売った代金は譲渡所得となり、雑収入に入りません。

収入の名前扱い
わら・もみ・牛鶏糞などの副産物の販売収入農業の雑収入に入る
農産物に係る共済金・補償金農業の雑収入に入る
農作業の受託作業料農業の雑収入に入る
事業分量配当・従事分量配当農業の雑収入に入る
農協等から受ける出資配当金配当所得になる
小作料の収入・電柱の敷地料不動産所得になる
建物更生共済の満期共済金一時所得になる
事業用資産を売った代金譲渡所得になる

経費の欄は農業専用の科目に振り分ける

農業所得用の決算書には、種苗費や素畜費といった農業だけの経費科目が並んでいます。番号でいえば⑧が租税公課であり、⑨から⑫までが種苗費から飼料費までの4科目です。⑳が減価償却費、㉒が雇人費であり、どちらも別のページの内訳から金額を転記します。

自給した種もみや堆肥については、収穫した時の価額で経費に計上する決まりです。

shoei

白色申告のままで迷っている方は、白色申告のデメリットの記事も判断の材料になります。

🔗農家の白色申告は損?デメリット4つと青色に切り替えるタイミング

農具費と減価償却費の分かれ目は10万円

くわやスコップなど、取得価額が10万円未満の小農具は農具費として経費になります

しかし、10万円以上の農機具は固定資産となり、減価償却費として複数年に分けて計上する決まりです。取得価額が10万円以上20万円未満なら、3年間で3分の1ずつ経費にする方法も選べます。

一括償却資産と呼ばれる方法であり、購入した年の事務と判断をかなり単純にできます。

家事と共用している費用は按分する

自宅と兼用している電気料金や水道料金は、家事分と事業分に分けたうえで計上します。按分の基準には使用面積や使用時間など、他人に説明できる根拠を選ぶ必要があります。租税公課の欄には固定資産税や自動車税を入れますが、住宅の分は差し引いてください。

所得税や住民税、国民健康保険料については、そもそも必要経費にできない支出になります。

減価償却費と棚卸高は決算書3ページ目で仕上げる

減価償却費の計算は、決算書の3ページ目にある表で、資産を1件ずつ積み上げる作業です。償却方法を税務署に届け出ていない場合は、原則として定額法で計算することになります。耐用年数は資産の種類ごとに決まっており、農業用設備であれば7年です。軽トラックのような総排気量0.66リットル以下の小型車は、4年で償却していきます。

shoei

償却が終わる年は1円だけ帳簿に残しておき、備忘価額として資産を管理し続けてください。

資産耐用年数
農業用設備7年
軽トラックなどの小型車(総排気量0.66リットル以下)4年
農林業用の構築物(主として木造のもの)5年
農林業用の構築物(主としてコンクリート造など・果樹棚等を除く)17年
3年

※出典:国税庁「令和7年分 青色申告決算書(農業所得用)の書き方」主な減価償却資産の耐用年数表

棚卸しが必要になる4つの資産

棚卸しが必要になる資産は、農産物と未収穫農産物と販売用動物、そして肥料や農薬です。農産物は収穫した時の生産者販売価格で評価し、12月31日の在庫の数量を数えます。肥料や農薬は最終仕入原価法を使い、年末に一番近い時期の仕入単価で計算してください。未収穫農産物については、その作物を育てるために使った種苗費や肥料費の合計で評価します。

省略してよい棚卸しもある

国税庁は棚卸しを省略してよいものの例として、家事のために作った作物を示しています。収穫してから販売や消費までの期間が短い農作物についても、省略して差し支えありません。穀物類以外の農産物で数量がわずかなものも、棚卸しを省略できる資産に含まれています。毎年同じくらいの規模で作付けをしている未収穫農産物も、省略して問題はありません。

決算書を提出するまでの5ステップ

決算書の欄が埋まらない原因の多くは、書き方ではなく帳簿が未整理なことにあります。そこで数字を確定させる順番を決めて、5つのステップで仕上げる進め方を紹介します。

  • STEP1 通帳・カード明細をそろえ、1年分の取引を帳簿に落とす
  • STEP2 12月31日の在庫を数え、農産物と肥料などの棚卸表を作る
  • STEP3 未収入金・未払経費・家事按分を反映して数字を締める
  • STEP4 決算書2〜3ページ目の内訳を埋め、1ページ目へ転記する
  • STEP5 貸借対照表を作り、e-Taxやクラウド会計で申告書と決算書を送信する

提出の期限は原則として翌年3月15日であり、土日にあたる年は翌平日にずれ込みます。期限に確実に間に合わせるには、2月のうちに数字を確定させておくと安心です。

shoei

ソフト選びで迷う場合は、青色申告とクラウド会計ソフトの選び方の記事が参考になります。

🔗【2026年最新】農家の青色申告とクラウド会計ソフトの選び方|65万円控除を最大活用

まとめ|農業の青色申告決算書の書き方は埋める順番で決まる

農業の青色申告決算書は、2ページ目と3ページ目から埋めるだけで負担が変わります。収穫基準と家事消費の扱いを先に理解しておけば、収入金額の欄で迷う時間が短くなります。経費は農業専用の科目に振り分けたうえで、家事分を按分してから金額を確定させてください。

決算書で出した農業所得の金額は、確定申告書第一表にある農業の欄へ書き写す流れです。次にやることは、12月31日時点の在庫を数える準備を今のうちに決めておくことです。

🌾 この記事のまとめ

・青色申告決算書は1年間の収入と経費をまとめ、確定申告書に添えて出す書類
・農業所得用は4ページ構成で、2ページ目と3ページ目の内訳から埋める
・農産物は収穫した時に収入となり、年末に売れ残った在庫も収入金額に含める
・家族で食べた米や贈答した米は、家事消費として収入金額の欄に記入する
・出資配当金・小作料・建物更生共済の満期共済金は、農業所得の収入にならない
・65万円控除は複式簿記と期限内申告に加え、e-Taxか優良な電子帳簿保存が必要

制度の内容や運用は変わることがあるため、最新の情報は国税庁のサイトでご確認ください。

1ヶ月無料・クレジットカードの登録は不要です

12月31日の在庫を数える準備と並行して、日々の記帳を自動化しておく方法です。
法人向けのひとり法人プランは、年額29,760円(税抜)から使えます。

マネーフォワード クラウド会計を無料で試す ≫

あわせて読みたい記事

参考・出典

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

農業|ライター|千葉県山武郡横芝光町でコシヒカリを始めとしたおいしいお米を生産|Word、ドキュメント、WordPressでの記事の執筆|日商簿記2級|FP3級|食品衛生責任者|英検2級

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次