「2割特例が終わったら、消費税の納税はどうなるの?」「簡易課税と本則課税、どっちを選べばいいの?」
インボイス登録をした農家にとって、これは避けて通れない悩みです。とくに個人事業者の2割特例は2026年分が最後。その後どうするかを早めに決めておかないと、納税額で損をしてしまうこともあります。
この記事では、本則課税と簡易課税の違い、農業のみなし仕入率、2割特例・3割特例の関係、そして米農家にとっての選び方の目安を解説。国税庁・税制改正の資料を一次情報まで確認して整理したので、読み終えれば「自分はどの方式が得か」の判断材料がそろいます。
| 📌 この記事でわかること ・本則課税と簡易課税の違い ・農業のみなし仕入率(食用80%/非食用70%) ・簡易課税を選ぶ条件と届出の注意点 ・2割特例の後にくる「3割特例」と選び方 ・米農家にとってどちらが得かの目安 |
👉 読み進める前に:消費税の計算・申告をラクにする「マネーフォワード クラウド確定申告」を見る

太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県北東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
本則課税と簡易課税|何が違う?
消費税の納税額の計算には、大きく「本則課税(一般課税)」と「簡易課税」の2つがあります。違いは、仕入・経費の消費税の扱い方です。
| 計算方式 | 納税額の計算方法 |
| 本則課税 | 売上の消費税 −(仕入・経費で実際に払った消費税) |
| 簡易課税 | 売上の消費税 −(売上の消費税 × みなし仕入率) |
本則課税は実額で差し引くので正確ですが、仕入の集計が大変。簡易課税は売上だけで計算できるため、事務負担が軽いのが特徴です。簡易課税か本則かを考える前に、「そもそも自分はインボイス登録が必要か」を押さえておくと判断がスムーズです。状況別の考え方は次の記事で解説しています。
農業のみなし仕入率は何%?(食用か非食用か)
簡易課税のカギがみなし仕入率。農業は、売るものが食用か非食用かで率が分かれます。
| 売るもの | 事業区分 | みなし仕入率 |
| 食用の農産物(米・野菜など) | 第2種 | 80% |
| 非食用(花き・飼料用米・種子など) | 第3種 | 70% |
つまり食用米が中心の農家なら、みなし仕入率は80%。納税額は売上の消費税の20%で済む計算になります(令和元年10月〜の軽減税率対応で第3種→第2種に引き上げ)。
簡易課税を選ぶ条件と届出の注意点

簡易課税を使うには、次の条件があります。
- 基準期間(2年前)の課税売上高が5,000万円以下であること
- 「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出していること(原則、適用したい課税期間の前年末まで)
| ⚠️ 注意 届出のタイミングがとても重要です。原則は前もって提出が必要で、一度選ぶと2年間は変更できません。なお、2割特例を使っていた人が簡易課税へ移る場合は、その課税期間中の提出でも認められる経過措置があります。迷ったら税理士に確認しましょう。 |
【本題】2割特例が終わったらどうする?
免税事業者からインボイス登録した人が使えた2割特例(納税額が売上の消費税の2割)は、個人事業者は2026年分(令和8年分)が最後です。その後は次のように移っていきます。
| 方式・特例 | 対象・時期 | 納税額の目安 |
| 2割特例 | 〜2026年分(個人)※登録で課税になった人 | 売上の消費税の2割 |
| 3割特例 | 2027・2028年分/個人・売上1,000万円以下(法人は対象外) | 売上の消費税の3割 |
| 簡易課税 | 売上5,000万円以下+届出 | 食用は2割(みなし80%) |
| 本則課税 | 制限なし | 実額(設備投資の年は還付も) |
令和8年度の税制改正で、個人向けに「3割特例」が新たに創設されます。ただし法人は対象外で、対象は2027・2028年分の個人事業者(基準期間の課税売上1,000万円以下)です。
2割特例の仕組みや、いつまで使えるかをもう一度確認しておきたい方は、次の記事もあわせてどうぞ。
米農家はどっちが得?選び方の目安
食用米が中心の農家なら、簡易課税(みなし80%=実質2割)が有利なケースが多いです。2割特例・3割特例が終わっても、簡易課税なら同じ2割の負担を続けられます。一方で、大型機械やハウスなど、大きな設備投資をする年は本則課税が得な場合もあります。払った消費税が売上の消費税を上回れば、差額が還付されるからです。
| 💡 ここがポイント ふだんは簡易課税、大きな投資の年だけ本則——という使い分けが理想ですが、簡易課税は2年継続・届出タイミングの縛りがあります。投資の予定がある年は、前もって税理士と方式を相談しておきましょう。 |
よくある4つの質問(Q&A)
消費税の計算・申告をラクにするなら

簡易課税か本則か、食用と非食用の区分、特例の判定——農家の消費税は、考えることが多くて複雑です。手計算ではミスや選択ミスが起きがちです。クラウド会計ソフトを使えば、売上・経費を入力するだけで消費税の計算や申告書の作成まで進められ、課税方式の比較もしやすくなります。私も日々の記帳と申告はクラウド会計に任せ、米づくりの時間を確保しています。はじめての方は、まず無料から試せる対応ソフトで整えておくと安心です。
まとめ:食用中心なら簡易課税が基本、投資年は本則も
2割特例の終了は、消費税の方式を見直す大きなタイミングです。最後に要点を整理します。
| 🌾 押さえるべき3つのポイント ① 食用農産物は第2種・みなし80%。簡易課税なら納税は売上税額の2割 ② 個人は2026年分まで2割特例→2027・2028は3割特例(法人は対象外) ③ 大きな投資の年は本則で還付も。届出タイミングと2年縛りに注意 |
自分の経営に合う方式は、売上規模や投資計画で変わります。判断に迷ったら、早めに税理士や税務署に相談しておきましょう。
出典(一次情報)
- 国税庁「No.6505 簡易課税制度」
- 国税庁「No.6509 簡易課税制度の事業区分」
- 国税庁「2割特例の概要」
- 令和8年度税制改正大綱(消費税:2割特例の見直し・3割特例の創設)


コメント