夫婦で米作りをしてきたのに、妻の老後の年金がとても少ない——これに気づくのは、たいてい受給が近づいてから。気づいたときには対策の時間が残っていない、というケースも少なくありません。
個人農家の家族として働く妻(青色事業専従者など)は、多くが国民年金(基礎年金)だけ。会社員の妻のような厚生年金(2階部分)がないため、夫婦そろって年金が薄くなりがちです。
しかし、妻名義で年金の上乗せをつくる方法はいくつもあります。早く始めるほど効果が大きく、夫婦で取り組めば老後の安心がぐっと増します。
この記事では、現役の米農家(農業法人代表)の視点で、なぜ専従者の妻の年金は少ないのか、そして夫婦でできる備え方をやさしく解説します。
| この記事でわかること ・専従者の妻の年金が少ない理由(第1号被保険者・基礎年金のみ) ・夫婦の年金額の目安と、いくら不足しがちか ・妻名義で上乗せをつくる5つの方法(付加年金・国民年金基金・iDeCo・農業者年金・小規模企業共済) ・専従者給与を老後の備えに活かすコツ |
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太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
なぜ専従者の妻の年金は少ないのか

個人事業の農家で働く家族(青色事業専従者)は、厚生年金に加入できません。厚生年金は会社などに雇われる人の制度で、個人事業主とその家族専従者は対象外だからです。
そのため妻は国民年金第1号被保険者となり、将来受け取れるのは老齢基礎年金が中心。専従者給与をもらっていても、それで厚生年金が増えるわけではありません。
| 💡 会社員の妻(第3号)との違い 会社員の配偶者は「第3号被保険者」として保険料負担なしで基礎年金を確保できますが、個人農家の妻は第3号にはなれず、自分で国民年金保険料を納める第1号です。立場が違うぶん、上乗せも“自分でつくる”必要があります。 |
夫婦の年金額の目安|どれくらい不足する?
令和8年度の老齢基礎年金は満額で月70,608円。夫婦ともに満額でも月約14.1万円です。一方、高齢夫婦の生活費は月約25万円が目安とされ、毎月11万円前後の不足が見込まれます。
| 項目 | 月額の目安 |
| 夫婦の老齢基礎年金(満額) | 約14.1万円 |
| 高齢夫婦の生活費 | 約25万円 |
| 毎月の不足額 | 約11万円 |
※満額は40年納付が前提。納付期間が短いと基礎年金はさらに減ります。まずは夫婦それぞれの「ねんきん定期便」で見込み額を確認しましょう。
農家の老後資金はいくら必要?国民年金だけで足りない理由と備え方
妻名義で上乗せをつくる5つの方法
妻も国民年金第1号なので、第1号向けの上乗せ制度を妻名義で活用できます。代表的な5つを紹介します。
① 付加年金(月400円で手軽に上乗せ)
国民年金保険料に月400円を上乗せすると、将来「200円×納付月数」が毎年もらえます。2年受け取れば元が取れる手軽な制度。まず最初に検討したい選択肢です(※国民年金基金とは併用不可)。
② 国民年金基金(終身で上乗せ)
第1号が任意で加入できる公的な上乗せ年金。掛金は全額社会保険料控除で、終身年金タイプも選べます。iDeCoと合算で月6.8万円(2026年12月改正で7.5万円)まで。
③ iDeCo(運用+節税)
妻名義でiDeCoに加入し、掛金を全額所得控除にできます。ただし妻に十分な課税所得がないと節税メリットは小さくなる点に注意。運用益非課税のメリットは活かせます。
④ 農業者年金(配偶者も加入できる)
農業者年金は、20〜60歳・国民年金第1号・年間60日以上農業に従事の3要件を満たせば、経営主の配偶者も加入できます。掛金は全額社会保険料控除、終身で受け取れ、一定要件で国庫補助もあります(iDeCo・国民年金基金とは併用不可)。
農業者年金とは?メリット・デメリットと加入の判断を現役農家が解説
⑤ 小規模企業共済(共同経営者なら)
妻が単なる専従者ではなく“共同経営者”の要件を満たせば、妻名義で小規模企業共済に加入できます(1事業主につき2人まで)。掛金は全額所得控除で、退職金づくりに使えます。
専従者給与を“老後の備え”に活かす

専従者給与は、妻の所得として使えるお金。これを妻名義の上乗せ制度の掛金や妻名義のNISAに回せば、家計全体で見たときに夫婦の資産形成と節税を同時に進められます。
- 専従者給与の一部を妻名義のiDeCo・国民年金基金・NISAへ
- 妻に課税所得があれば、妻側でも所得控除の節税が効く
- 金額・区分の最適化は、専従者給与の設定とセットで考える
よくある2つの質問(Q&A)
| 夫婦でいくら・どの制度で備える? まとめて相談付加年金・国民年金基金・iDeCo・農業者年金・小規模企業共済は、併用の可否や節税の効き方が一人ひとり違い、夫婦の組み合わせ方で結果が変わります。農家のお金に詳しいFPの無料相談なら、夫婦それぞれの年金見込みを踏まえて「誰の名義で・どの制度に・いくら」備えるかを一緒に整理できます。老後・年金・家計まで横断して無料で相談できるので、夫婦で現状を棚卸ししてみてください。 ▶ FP無料相談で夫婦の老後の備え方を相談する |
まとめ
個人農家の妻(専従者)は厚生年金に入れず国民年金(基礎年金)だけになりがちで、夫婦そろって年金が薄くなりやすいのが実情です。夫婦満額でも生活費に対し毎月11万円前後不足する見込みです。
対策は、付加年金・国民年金基金・iDeCo・農業者年金・小規模企業共済を妻名義で活用すること。
専従者給与を妻名義の積立に回せば、資産形成と節税を同時に進められます。制度の併用ルールや名義の最適化は複雑なので、夫婦の年金見込みを確認のうえ、迷ったら農家のお金に詳しいFPの無料相談を活用してみてください。
出典・参考
・日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」「第1号被保険者」
・国民年金基金連合会「加入条件・資格」、農業者年金基金「制度の概要(加入資格・国庫補助)」
・中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 加入資格(共同経営者)」
・総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)」(高齢夫婦無職世帯の生活費)ほか(2026年7月8日確認)
※本記事は一般的な情報提供であり、特定の金融商品・制度への加入を推奨するものではありません。掛金上限・税制・各制度の要件は改正される場合があります。最新の内容は各公式サイトでご確認のうえ、ご自身の状況に応じて専門家にご相談ください。


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