会社員には退職金がありますが、個人で農業を営む方には退職金がありません。米作りを引退したとき、まとまったお金が手元にないと老後の生活が一気に不安になります。
その不安に応えるのが小規模企業共済です。国の機関(中小機構)が運営する、個人事業主が自分でつくる“退職金制度”で、農業の個人事業主もしっかり加入できます。最大の魅力は、掛金が全額所得控除(年最大84万円)になること。積み立てながら毎年の所得税・住民税を減らせて、受け取るときも退職所得控除などが使えます。
さらにiDeCoと併用できるため、節税の“もう一枠”として活用できます。この記事では、現役の米農家(農業法人代表)の視点で、加入できる条件・節税メリット・受け取り方・注意点までをわかりやすく整理します。
| 📌 この記事でわかること ・農業の個人事業主が小規模企業共済に入れる条件(従業員20人以下) ・掛金は月1千〜7万円、年最大84万円が全額所得控除になる節税効果 ・受け取り方(共済金A・B/準共済金/解約手当金)と税制 ・iDeCoと併用できること・法人化との関係・元本割れの注意点 |
退職金づくりや老後の備えは、農家のお金に詳しいFPに無料で相談できます

太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
小規模企業共済とは|農家も入れる「自分でつくる退職金」

小規模企業共済は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する共済制度です。個人事業主や小規模企業の経営者が、毎月掛金を積み立てて、廃業・引退時にまとまったお金を受け取る——いわば自分専用の退職金を用意する仕組みです。
運用は中小機構が行うため、自分で商品を選ぶ必要はありません。iDeCoが「自分で運用する私的年金」なのに対し、小規模企業共済は「積み立て型の退職金制度」という位置づけです。
加入できる条件とは|農業の個人事業主・共同経営者
農業を含む一定の業種では、常時使用する従業員が20人以下の個人事業主が加入できます。家族経営や、従業員が祖父母・パートのみといった小規模な米農家は、多くが対象です。
- 農業の個人事業主(常時使用する従業員20人以下)
- 共同経営者(個人事業主1人につき2人まで/例:事業を一緒に営む配偶者など)
掛金が全額所得控除?小規模企業共済のメリットとは

掛金は月1,000円〜70,000円(500円単位)で自由に設定でき、その全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除されます。最大で年84万円を所得から差し引けます。
(目安)月7万円(年84万円)を拠出し、所得税率20%+住民税10%なら年間およそ25万円の節税。農業所得が大きい年ほど効果が高く、節税しながら将来の退職金を積み上げられます。
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受け取り方の種類|共済金A・B/準共済金/解約手当金
受け取る理由(事由)によって、受け取れるお金の種類と金額が変わります。
| 種類 | 主な受取事由 |
|---|---|
| 共済金A | 個人事業を廃業した場合・契約者が亡くなった場合 |
| 共済金B | 老齢給付(65歳以上で掛金を180か月以上払い込み) |
| 準共済金 | 個人事業を法人成りして加入資格がなくなり解約した場合 |
| 解約手当金 | 任意解約した場合 |
shoei受け取り方は「一括」「分割」「一括と分割の併用」から選べます。
小規模企業共済は、iDeCoと併用できる|“もう一枠”の節税に
小規模企業共済は、iDeCoと別枠で併用できます。iDeCoの掛金(年最大81.6万円・2026年12月改正後は90万円)に加えて、小規模企業共済で年最大84万円——合わせて大きな所得控除枠を作れるのが、個人事業主の強みです。
農業者年金や国民年金基金とも併用できるため(小規模企業共済は別枠)、「終身の公的上乗せ+自分でつくる退職金」という組み合わせも可能です。
| ⚠️ 受取の「10年ルール」に注意(2026年改正) 小規模企業共済の一時金とiDeCoの一時金を同じ年や近い年にまとめて受け取ると、退職所得控除の枠が重なって税負担が増えることがあります。iDeCo→他の退職金の受取で控除をフルに使うために必要な間隔は、2026年1月以降5年→10年に延長されました。受取時期の設計は早めにFP・税理士へ相談すると安心です。 |
農家のiDeCo活用術|個人事業主が節税しながら老後に備える方法
小規模企業共済の3つのデメリット・注意点
節税メリットが大きい一方、短期で解約すると損をする設計です。長く続ける前提で始めましょう。
- 掛金納付月数が6か月未満だと共済金A・Bは、12か月未満だと準共済金・解約手当金(任意解約を含む)は受け取れず、納付した掛金は掛け捨てになります。
- 240か月(20年)未満で任意解約すると、解約手当金は掛金合計額を下回ります(元本割れ)。
- 資金繰りに注意:収入がブレる農家は、当面の運転資金・生活防衛資金を確保したうえで無理のない掛金から始めるのが安全です(掛金は後から増減額できます)。
| 💡 法人化を考えている農家へ 農業を法人化して個人事業を廃業すると、個人事業主としての加入資格を失い「準共済金」扱いになります。一方、小規模な会社(従業員20人以下)の役員として改めて加入できる場合もあります。法人化のタイミングと共済の扱いはセットで考えるのがおすすめです。 |
【農家は法人化すべき?】メリット・デメリットと判断基準を現役農家が解説
よくある3つの質問(Q&A)
退職金づくり、いくらを・どの制度で積み立てる?


小規模企業共済・iDeCo・農業者年金は併用ルールや受取時の税金が複雑で、最適な組み合わせは所得や家族構成、法人化の予定で変わります。農家のお金に詳しいFPの無料相談なら、あなたの状況に合わせて「どの制度で・毎月いくら積み立てるか」を一緒に整理できます。



老後・年金・保険・家計まで相談できるので、現状を棚卸ししてみてください。
まとめ
退職金のない農家にとって、小規模企業共済は自分でつくる退職金として頼れる制度です。農業の個人事業主(従業員20人以下)なら加入でき、掛金は月1千〜7万円。年最大84万円が全額所得控除で、受け取るときも退職所得控除などが使えます。
iDeCoと別枠で併用できるため、節税の“もう一枠”として相性抜群。ただし6か月未満は共済金A・Bが、12か月未満は準共済金・解約手当金が掛け捨て、20年未満の任意解約は元本割れなど、短期解約に弱い点には注意が必要です。
法人化の予定や受取時期の設計(2026年からの10年ルール)まで含めて考えると、判断が難しい場面もあります。迷ったらFPの無料相談を活用し、無理のない額から始めましょう。
出典・参考
・中小機構「加入資格」(https://kyosai-web.smrj.go.jp/skyosai/entry/index_02.html)/「小規模企業共済の掛金」(https://kyosai-web.smrj.go.jp/customer/skyosai/installment/)/「共済金等請求・解約」(https://kyosai-web.smrj.go.jp/customer/skyosai/claim/)※いずれも2026年7月6日時点
・国税庁 タックスアンサーNo.1135「小規模企業共済等掛金控除」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm)※2026年7月6日時点
・厚生労働省「2025年の制度改正」(iDeCo・国民年金基金の拠出限度額および加入可能年齢の引き上げ/2026年12月1日施行予定)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html)※2026年7月6日時点
・国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」(退職所得控除の調整=いわゆる10年ルール)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2026/pdf/01.pdf)※2026年7月6日時点
※本記事は一般的な情報提供であり、特定の金融商品・制度への加入を推奨するものではありません。掛金上限・税制・各制度の要件は改正される場合があります。最新の内容は各公式サイトでご確認のうえ、ご自身の状況に応じて専門家にご相談ください。










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