「農業を引退するころ、手元にまとまったお金がない」——これは個人で農業を営む方に共通する不安です。会社員と違い、農家には退職金がありません。さらに公的年金も国民年金(基礎年金)だけになりがちです。
でも、退職金は“制度として”自分でつくれます。しかも、積み立てながら毎年の税金を減らせる方法があります。これを使わない手はありません。
この記事では、農家が自分でつくれる退職金の代表的な3つの方法——小規模企業共済・iDeCo・NISA——を、それぞれの長所と向き不向きで整理します。
現役の米農家(農業法人代表)の視点で、「収入がブレる農業でも続けやすいのはどれか」という観点も交えて解説します。
| この記事でわかること ・農家に退職金がない理由と、自分でつくる3つの方法 ・小規模企業共済・iDeCo・NISAの特徴と、節税・引き出しやすさの違い ・収入が不安定な農家でも続けやすい組み合わせ方 ・どこから始めればよいか(優先順位の考え方) |
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太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
なぜ農家には退職金がないのか

退職金は、会社が従業員のために用意するもの。個人で農業を営む方は“雇われていない”ため、退職金制度がそもそもありません。加えて、会社員が入る厚生年金(2階部分)もなく、受け取れるのは国民年金(基礎年金)が中心です。
令和8年度の老齢基礎年金は満額で月70,608円。夫婦2人でも満額で月約14.1万円ほどで、高齢夫婦の生活費(消費支出は月約25.7万円)には毎月11万円前後足りない計算になります。だからこそ、現役のうちに“自分の退職金”を積み立てておくことが大切です。
農家の老後資金はいくら必要?国民年金だけで足りない理由と備え方
自分でつくる退職金①|小規模企業共済(退職金そのもの)
国の機関(中小機構)が運営する、個人事業主のための退職金制度です。農業の個人事業主(従業員20人以下)が加入でき、引退・廃業時にまとまったお金を受け取れます。
- 掛金 月1千〜7万円、年最大84万円が全額所得控除
- 受取は一括(退職所得控除)/分割(公的年金等控除)/併用が選べる
- 注意:12か月未満は掛け捨て、20年未満の任意解約は元本割れ
農家の退職金は小規模企業共済で|加入条件と節税メリットを解説
自分でつくる退職金②|iDeCo(運用しながら節税)
自分で掛金を出して運用する私的年金。掛金が全額所得控除、運用益も非課税、受取時も控除と、三段階で税制優遇があります。
- 第1号(個人農家)の上限は月6.8万円(2026年12月改正で月7.5万円・加入は70歳未満まで拡大)
- 原則60歳まで引き出せない(老後資金専用)
- 注意:農業者年金とは併用不可(国民年金基金とは併用可)
農家のiDeCo活用術|個人事業主が節税しながら老後に備える方法
自分でつくる退職金③|NISA(いつでも引き出せる柔軟さ)
NISAは運用益が非課税になる制度。掛金の所得控除はありませんが、いつでも引き出せるのが最大の強みです。豊作・不作で収入がブレる農家にとって、急な出費に対応しやすい点が安心材料になります。
- 年間投資枠は360万円(つみたて投資枠120万+成長投資枠240万)、生涯1,800万円まで非課税
- 60歳前でも引き出し可能(教育費・設備投資など他の目的にも転用できる)
- 注意:所得控除はない/元本変動リスクがある
農家のNISA入門|不安定な収入でも続けられる資産運用の始め方
3つの方法を比べてみる

| 方法 | 節税(所得控除) | 引き出し | 向いている人 |
| 小規模企業共済 | ◎ 全額控除 | 原則引退・廃業時 | 堅く退職金を積みたい |
| iDeCo | ◎ 全額控除 | 原則60歳以降 | 運用+節税を最大化 |
| NISA | × なし | いつでも可 | 柔軟さ・流動性重視 |
まずは当面の運転資金・生活防衛資金(半年〜1年分)を現金で確保。そのうえで、節税効果の大きい小規模企業共済・iDeCoを軸にしつつ、流動性を残したいぶんをNISAで——という組み合わせが基本です。掛金はいつでも増減できるので、無理のない額から始めましょう。
よくある2つの質問(Q&A)
まとめ|退職金は自分でつくれます!

農家に退職金はありませんが、制度を使えば自分でつくれます。代表的なのが小規模企業共済・iDeCo・NISAの3つ。前の2つは掛金が全額所得控除で節税に強く、NISAはいつでも引き出せる柔軟さが魅力です。収入がブレる農業では、まず生活防衛資金を確保してから、無理のない額で始めるのが鉄則。
節税重視なら共済・iDeCo、流動性重視ならNISA、と目的で選びましょう。併用ルールや受取時の税金まで含めると判断が難しい場面もあります。
shoei迷ったら農家のお金に詳しいFPの無料相談を活用してみてください。
出典・参考
・日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
・総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2024年」
・中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 制度のしおり(令和8年4月改訂版)」
・厚生労働省「iDeCoの拠出限度額および加入可能年齢の引き上げ(2026年12月制度改正)」
・金融庁 NISA特設ウェブサイト(新しいNISA制度の解説)
※本記事は一般的な情報提供であり、特定の金融商品・制度への加入を推奨するものではありません。掛金上限・税制・各制度の要件は改正される場合があります。最新の内容は各公式サイトでご確認のうえ、ご自身の状況に応じて専門家にご相談ください。









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