「農業を引退したら、年金だけで生活していけるのだろうか——」
米の単価は下がり、燃料費や資材費は上がるいっぽう。日々の資金繰りに追われるなかで、ふと老後のことを考えて夜も眠れなくなる。じつは、会社員と違って厚生年金も退職金もない個人農家は、何も備えなければ老後資金が大きく不足するのが現実。とはいえ「不安はあるけれど、何から手をつければいいか分からない」という方がほとんどではないでしょうか。
ご安心ください。この記事を読めば、その不安は「具体的な行動」に変えられます。
この記事では、私は千葉で米農家を営む現役の農業法人代表として、農家の老後資金が実際いくら必要か、国民年金だけでは足りない理由、そして農家が使える5つの備え方までを、実際の数字とあわせて解説します。
読み終える頃には、「自分は毎月いくら備えればいいか」「まず何から始めるべきか」を判断できるようになります。
| 📌 この記事でわかること ・農家の老後資金は実際いくら必要か ・国民年金だけでは足りない理由(毎月いくら不足するか) ・「老後2000万円」では足りないかもしれない理由 ・農家が使える5つの備え方 ・自分に合う備え方の見つけ方 |
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太智昭栄
Shoei Tachi
- 農業経営者(2022年〜千葉県東部でお米を生産)
- 日商簿記2級・3級FP技能士取得
- 全国の農家の役に立つ補助金・融資情報を発信
まず老後資金、いくら必要?|現実を把握する
結論からいうと、国民年金だけでは、毎月およそ12万円が不足すると試算されています。高齢夫婦の生活費と、受け取れる年金を比べてみましょう。
| 区分 | 1か月あたりの目安 |
| 高齢夫婦の生活費 | 約26.4万円 |
| 国民年金のみ(夫婦・満額) | 約14.1万円 |
| 毎月の不足額 | 約12万円 |
| (参考)会社員夫婦(厚生年金) | 約23.7万円 |
高齢夫婦無職世帯の生活費は月約26.4万円。一方、国民年金を夫婦そろって満額もらえても月約14.1万円です(令和8年4月分から)。差し引き、毎月およそ12万円が足りない計算になります。
shoei会社員夫婦(厚生年金)と比べると、その差は約月10万円です。
「老後2000万円」では足りない?|農家が不安になる理由
一時期、「老後2000万円問題」が話題になりました。ただ、これは厚生年金がある会社員を前提にした試算です。厚生年金がなく国民年金のみの農家は、不足額がさらに大きくなります。
毎月12万円の不足が続くと、単純計算で20年(85歳まで)で約2,880万円、30年(95歳まで)で約4,320万円が必要になります。さらに、個人農家には退職金もありません。だからこそ、現役のうちから少しずつ備える意味が大きいのです。
| 💡 ここがポイント 金額の大きさに驚くかもしれませんが、30年かけて積み立てれば、月2〜3万円の備えでも大きな差になります。まずは現状を知り、できることから始めることが大切です。 |
農家が使える老後資金の5つの備え方
国民年金の不足を補う方法は、農家にもいくつもあります。代表的な5つを整理しました。
| 備え方 | 特徴 |
| ①農業者年金 | 農業者だけが入れる“上乗せ年金”。所得控除・国庫助成あり |
| ②iDeCo(個人型確定拠出年金) | 掛金が全額所得控除。自分で積み立て運用する |
| ③小規模企業共済 | 個人事業主の“退職金”制度。掛金が全額所得控除 |
| ④NISA | 運用益が非課税。余裕資金の運用に向く |
| ⑤法人化+厚生年金 | 法人の役員として厚生年金に加入し年金を上乗せ |



私は④⑤の2つのみで備えてます。数をこなせばいいものではないので、それぞれの状況に合った内容を専門家に相談することをおすすめします。
まず使いたい「農業者年金」|農家だけの上乗せ年金
農業者年金は、農業者だけが加入できる、国民年金に上乗せする公的な積立年金です。国民年金の第1号被保険者(保険料納付免除者を除く)で、年間60日以上農業に従事する60歳未満の方が加入できます(60歳以上65歳未満の国民年金任意加入者も加入可能)。
- ・掛金は月2万円〜6万7,000円(35歳未満で保険料の国庫補助対象とならない方は月1万円〜)で自由に選べる
- ・掛金は最大で年80万4,000円が所得控除になり、受け取る年金も公的年金控除の対象
- ・認定農業者など一定の要件を満たすと、保険料に国の助成(政策支援)がある
農業者年金とは?4つのメリットと3つの注意点を現役農家が解説
節税しながら備える|iDeCo・小規模企業共済


農業者年金とあわせて活用したいのが、iDeCoと小規模企業共済。どちらも掛金が全額所得控除になり、今の税負担を減らしながら将来に備えられます。
- ・iDeCo:個人事業主なら掛金は月最大6万8,000円(2026年12月からは国民年金基金等と合わせて月7万5,000円に引き上げ)。自分で運用しながら老後資金をつくる
- ・小規模企業共済:農業の個人事業主も加入でき、掛金は月最大7万円。“農家の退職金”として使える
| ⚠️ 注意 これらは併用できますが、制度ごとに上限や加入条件が異なり、組み合わせ方で有利・不利が変わります。「自分の場合いくらが最適か」は、加入前に専門家へ確認しておくと失敗がありません。 |
あわせて読みたい|引退・承継とセットで考える
老後を考えるなら、農地や経営を誰にどう引き継ぐか(事業承継)もセットで備えたいところです。早めに動くほど、選べる手は増えます。進め方は次の記事で解説しています。
あなたも将来の不安はプロに相談してみませんか


ここまで紹介したように、農家の老後の備えには農業者年金・iDeCo・小規模企業共済・NISA・保険・法人化と選択肢が多く、最適な組み合わせは一人ひとり違います。
「自分の年齢・所得だと何から始めるべき?」「いくら備えればいい?」と迷ったら、お金のプロ(FP)に無料で相談するのが近道です。家計や保険、資産形成までまとめて、自分のライフプランに合わせてアドバイスをもらえます。
農家のお金・老後の悩みをFP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみる
よくある4つの質問(Q&A)
まとめ:早く始めるほど、農家の老後はラクになる
農家の老後資金は、国民年金だけでは毎月約12万円足りないのが現実です。でも、農家ならではの制度を使えば、節税しながらしっかり備えられます。最後に要点を整理します。
| 🌾 押さえるべき3つのポイント ① 国民年金のみだと月約12万円不足。退職金もない農家は備えが必須 ② まずは農業者年金+iDeCo・小規模企業共済で節税しながら積み立てる ③ 早く始めるほど月々の負担は軽い。迷ったらFPに無料相談を |
老後の不安は、正しく知って動き出せば、必ず小さくできます。まずは今日、できる一歩から始めてみましょう。
出典(一次情報)
独立行政法人 農業者年金基金「農業者年金の特徴とメリット」「農業者年金の加入資格」(https://www.nounen.go.jp/kentou/youken.html ・2026年7月2日確認)/農林水産省「農業者年金」(https://www.maff.go.jp/j/kobetu_ninaite/n_sien/sien_nenkin.html ・2026年7月2日確認)
総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」(https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2025.pdf ・2026年7月2日確認)、日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202604/0401.html ・2026年7月2日確認)
中小機構「小規模企業共済」(https://kyosai-web.smrj.go.jp/ ・2026年7月2日確認)、iDeCo公式(個人型確定拠出年金)(https://www.ideco-koushiki.jp/ ・2026年7月2日確認)、厚生労働省「DC拠出限度額の見直し・2026年12月施行」(https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001597082.pdf ・2026年7月2日確認)
※本記事は2026年6月時点の一般的な情報提供であり、特定の金融商品の推奨や個別の助言ではありません。金額は一定の前提に基づく試算です。加入の判断は、ご自身の状況をふまえFP・金融機関・農業委員会・JA等にご確認ください。


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